田中圭、「笑ってもらえる」バランスをしっかりとっていきたい―舞台『陽気な幽霊』で“嫌な男”
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インタビュー
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田中圭 (撮影:藤田亜弓)
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すべて見る田中圭の舞台人生において、決して外すことが出来ない演出家のひとり、熊林弘高。そんな熊林との9年ぶり、4度目の顔合わせが実現した。作品はノエル・カワードの『陽気な幽霊』。ふたりの妻(しかもひとりは幽霊!)の間で右往左往する作家と、周囲の人々とのドタバタを描いた傑作コメディだ。そこで稽古開始を控えた田中に、本作への想いを語ってもらった。
“熊林さん”が演出することでまったく違うものになる
――演出の熊林さんとは9年ぶり、4度目の顔合わせですね。
熊林さんとは本当に久しぶりです。ただ最初に戯曲を読んだ時、熊林さんらしくないなと驚きました。
――これまでご一緒された作品も、ユージン・オニールの『夜への長い旅路』(15年)やチェーホフの『かもめ』(16年)ですからね。
はい。でも改めて読んでみると、登場人物たちのシンプルな感情、特に女性同士の嫉妬やいがみ合いが、意外と熊林さんの得意分野ではないかな?と思うようになりました(笑)。
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――これまでの熊林さんとの稽古で印象に残っていることは?
9年前の記憶で言うと、稽古場に行ったら、熊林さんはピアノを弾いていました。演出に関しては、感性の切り口が独特で、言葉だけ切り取ると、どういう意味なんだろう?と思うことが多いです。でも不思議と、感覚だけはきちんと伝わってきて、その感覚はこういうことかな?と考えながら試行錯誤していく。難解だからこそ、あっという間にお稽古の時間が過ぎていきます。
――今回田中さんが演じるのは作家のチャールズ。彼が執筆のために降霊会を催すと、なんと目の前に亡くなったはずの先妻が現れて……という内容です。改めて作品としての魅力、またチャールズに関してどんな人物だと捉えていますか?
80年以上前に書かれた戯曲ですが、今読んでも共感出来ることが多いなと思いました。先ほど言ったことに加えて、男性と女性のプライドであったり、夫婦のマウントの取り合いであったり、面白いと感じるところがたくさんありました。チャールズは……浅い男性のイメージです(笑)。現時点での印象ですが、妻に対する言葉選びや、都合が悪くなると話を逸らすところなど、女性が嫌だなと思うような男性ではないかと思います。
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仕事でもプライベートでも、自分がちゃんと笑っていられるように
――そんなチャールズにとって妻のルース、そして先妻のエルビラとは、それぞれどのような存在だと思いますか?
これからお稽古を進める中で見えてくることだとは思いますが……、現段階の印象では、なんとなくエルビラのほうが馬は合ったのだろうなと思います。だからといって今の妻に、元妻の魅力を話すのは、なかなか嫌な男性ですよね(笑)。ただ演じるに当たっては、やっぱりこういうクセのある役は面白いです。作るまでは大変ですが、そこから遊べるようになってくると、一気に楽しくなると思います。
――舞台では難解な作品を選ばれることが多い田中さんですが、こういった笑いのある作品をやる面白さ、また難しさとは?
やっぱり笑っていただけるというのは一番の面白さだと思います。逆に難しさは、笑っていただけるという感覚を忘れて笑わせようと思った瞬間、あまり面白くなくなること。そのバランスはしっかり取っていきたいです。
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――本作を始め、2025年も活躍の一年のなりそうです。最後に、今年の目標を教えてください。
仕事もプライベートも、自分がちゃんと笑っていられる状態で常に臨みたいなと思います。時には、「なんだかなぁ……」と沈んだ気持ちを抱くことがありますが、そういった時こそエンタメがなくなったら本当にまずいと思いますし、大切なものをしっかりと大切にしつつ、自分がやりたいことをやっていきたい。舞台は“やりたい”というより“やらなきゃ”といった存在ですが、もちろんチケット代に見合ったものは必ずお返ししたいと思っていて。それは出る側、作る側として常に考えていることなので、ぜひ僕らを信用して、楽しみに観に来ていただけたらと思います。
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取材・文:野上瑠美子 撮影:藤田亜弓
スタイリスト:荒木大輔 ヘアメイク:花村枝美〔MARVEE〕
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<公演情報>
『陽気な幽霊』
作:ノエル・カワード
翻訳:早船歌江子
演出:熊林弘高
出演:田中圭 / 若村麻由美 / 門脇麦 / 天野はな / あめくみちこ / 佐藤B作 / 高畑淳子
【東京公演】
2025年5月3日(土・祝)~2025年5月29日(木)
会場:シアタークリエ
【大阪公演】
2025年6月2日(月)~2025年6月8日(日)
会場:シアター・ドラマシティ
【福岡公演】
2025年6月11日(水)~2025年6月15日(日)
会場:福岡市民ホール 中ホール
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