伊藤若冲、長沢芦雪らの作品から江戸絵画における「黒」の魅力に迫る『エド・イン・ブラック』展、板橋区立美術館で
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伊藤若冲《乗興舟》(部分)千葉市美術館
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すべて見る2025年3月8日(土)より、板橋区立美術館では、『エド・イン・ブラック 黒からみる江戸絵画』展を開催する。伊藤若冲、長沢芦雪、鈴木其一らの作品から江戸絵画における「黒」を探求し、その魅力に迫る展覧会だ。
何色にも染まらない特異な色である「黒」。日本絵画において古くから使われてきたこの色は、江戸時代になると、さらに表現を広げていった。
たとえば「夜」を描く時。江戸時代以前、絵画における「夜」は月や霞などで示されることが多く、一見すると昼との区別がつかない作品もあった。しかし江戸時代になると、墨の濃淡を駆使したり、月の光とのコントラストで夜の闇を表すなど、夜の描写も多様になっていく。絵師たちは、「夜」という特別な時間を描くために、「黒」を使ってどのような工夫を凝らしたのか? 「影」や「暗闇」の描き方に注目して考える。
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また同展では、「黒」という色から、江戸時代の文化や価値観を深掘りする。たとえば伊藤若冲の《乗興舟》は、明和4年(1767)春、若冲が淀川を大坂まで下った川下りの景色を描いたものだが、本図のように背景を濃墨で塗り込め、モチーフを白の輪郭線や薄墨で表す手法は、もともと中国で行われていた手法である。そのため、黒い背景に白い線描が浮き上がる作品は、人々に知的で最先端な中国文化のイメージを想起させるものだった。
当時の趣味人には、「墨彩色(すみさいしき)」や「紅嫌い(べにぎらい)」という、あえて色彩を用いず、黒を基調とした浮世絵を好む者もいた。浮世絵の美人画では、女性の艶やかな髪を表現するために、髪の部分には2度黒色を摺り、この世ならざる者を描く時に「黒」を使うなど、「黒」という色を通して、江戸時代の様々な価値観や美意識を知ることができるだろう。
さて、電灯のなかった江戸時代、暗がりの中で絵画はどのように見えたのか? 同展では、蝋燭のような灯の中で狩野了承の金屏風《秋草図屏風》を見る特別演出も設けられる。ぜひ江戸のリアルな視覚を体験したい。
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<開催概要>
『エド・イン・ブラック 黒からみる江戸絵画』
会期:2025年3月8日(土)~4月13日(日) ※会期中展示替えあり
会場:板橋区立美術館
時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜
料金:一般650円、大学450円
公式サイト:
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/artmuseum/4000016/4001836/4001855.html
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