「SPAC秋のシーズン」アーティスティック・ディレクターに劇作家の石神夏希が就任、ラインアップを発表
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静岡芸術劇場 (photo by Eiji Nakao)
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すべて見る2025年度に財団設立30周年を迎えるSPAC-静岡県舞台芸術センターが、年間ラインナップとともに「SPAC 秋のシーズン 2025-2026」ラインアップを発表した。また2025年「SPAC 秋のシーズン」のアーティスティック・ディレクターに劇作家の石神夏希が就任、秋シーズン3作品をプロデュースすることを明らかにした。
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30周年を機にSPACは、演劇を通してこれまで磨き上げてきた「人」と「技術」を、環境・交通・観光といった地域活性化にも活⽤すべく活動を展開、誰もが演劇を楽しみ、演劇の力が日常生活に染み出していくことで豊かな市民社会の実現を目指すという。その活動の柱として、毎年ゴールデンウィークに開催していた国際演劇祭「ふじのくに⇄せかい演劇祭」から「SHIZUOKA せかい演劇祭」へとリニューアル。春の大型連休を「PLAY!ウィーク」と名づけ、「PLAY!」(遊ぶ/楽しむ/学ぶ/演じる)を合言葉に、新緑のSHIZUOKAを盛り上げる。宮城聰×SPACの新作野外劇『ラーマーヤナ物語』をはじめ、さまざまな形で演劇/役者の魅力が街にあふれ出る。また、古今東西の名作を上演する「SPAC 秋→春のシーズン」も「SPAC秋のシーズン」と名称を変更。アーティスティック・ディレクターをつとめる石神は、SPACで『弱法師』(作:三島由紀夫 2022年)、『お艶の恋』(原作:谷崎潤一郎『お艶殺し』 2023年)、「ふじのくに⇄せかい演劇祭2024」にて間食付きツアーパフォーマンス『かちかち山の台所』の作・演出を手掛けた劇作家だ。
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今回の「SPAC秋のシーズン」のスタートを飾るのは、石神自身の演出による『弱法師』。2022年に SCOTサマー・シーズン(富山)の舞台芸術公園「BOX シアター」にて初演、四方を客席が囲む舞台とその斬新な演出で高評を得て、今回は静岡芸術劇場での再演となる。『ハムレット』を新たに演出するのは、国内外での精力的な活動により、いま注目を集める演出家・上田久美子。大衆性と芸術性の架け橋となり、「初めて観る⼈が楽しめる」ことにこだわる上田が、シェイクスピアの名作戯曲でSPACと初タッグを組む。また、東京デスロック主宰の多田淳之介が演出を手がけるのは、ブレヒト作の『ガリレオの生涯』(仮題)。2023年、“観光演劇”と称しポップで臨場感のある新感覚の舞台『伊豆の踊子』で多くの若者を魅了した多田の新作として期待が寄せられる。
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30年周年という節目の年に新たなステージへと進むSPAC。芸術総監督の宮城聰は、「これを機に、『舞台と客席』の範疇にとどまらずに、広く社会の課題解決や新たな価値の創造にわれわれの蓄積を活用してゆこうと、『SPACが社会に染み出す』フェーズ、いわば『SPAC2.0』のフェーズに進もうと考えております」とコメントを寄せた。石神も、「今回ディレクションをさせていただくにあたって、観客席の闇の中で感じた⼦どもたちのあの息遣いをなんども思い返しました。そしてコンセプト、というよりむしろメッセージとして〈きょうを生きるあなたとわたしのための演劇〉ということを、シーズンを通じて伝えたいと思いました」と意欲を示す。
「秋のシーズン」では、週末の⼀般公演に加え、平日には若い世代がはじめて演劇にふれる機会として「中高生鑑賞事業公演」を実施、毎年1万⼈をこえる県内各地の中高生に本格的な舞台鑑賞の機会を提供。また、通年で実施する「SPAC 演劇アカデミー」「ストリートシアターってなんだ?ゼミ」といった子供たちを対象とした事業をはじめ、多彩な人材育成、アウトリーチ活動を県内各地で展開する。
また、石神は2026年度初演予定のSPAC新作、『うなぎの回遊 Eel Migration』(仮題)の作・演出も手がける。主要キャストとして、県内に多く暮らすブラジルにルーツを持つ地域住⺠を迎え、彼らとの対話や共同作業を通じて「移動と生殖」をテーマとしたフィクションの戯曲を創作、日本語・ポルトガル語を交えて上演する。
【SPAC-静岡県舞台芸術センター芸術総監督 宮城聰コメント全文】
SPAC-静岡県舞台芸術センターは今年、財団設立30周年を迎えます。
これを機に、「舞台と客席」の範疇にとどまらずに、広く社会の課題解決や新たな価値の創造にわれわれの蓄積を活用してゆこうと、「SPACが社会に染み出す」フェーズ、いわば「SPAC2.0」のフェーズに進もうと考えております。
僕はSPACの芸術総監督としてこの「SPAC2.0」の諸事業を開発・展開するとともに、組織のガバナンスにもいっそう注力していくつもりです。
そこで、25年度のSPAC「秋のシーズン」では、アーティスティック・ディレクターとして石神夏希氏を迎え、3作品のプロデュースに関する仕事をお任せすることにいたしました。
〈社会に染み出してゆく〉SPACにぜひご注目いただき、また石神氏プロデュースの秋シーズン3作品にご期待をお寄せいただきたく、ここにお知らせいたします。
2025年度もSPAC-静岡県舞台芸術センターをどうぞよろしくお願い申し上げます。
【石神夏希コメント全文】
生まれ育った首都圏を離れ、2020年から静岡で暮らし始めました。以来ときには子どもの通う保育園で、ときには商店街の人との会話から、地域に根ざした公立の劇団・劇場であるSPACが、この土地で生活する人たちにとってどのような存在なのかを肌で感じてきました。またSPAC秋のシーズン(旧・秋→春のシーズン)には平日の昼に足を運び、中高生に交じって観劇する機会が増えました。劇場に来たことがないという若い⼈たちが「生まれて初めて演劇と出会う」瞬間に立ち会うことは、いつも特別な体験でした。
今回ディレクションをさせていただくにあたって、観客席の闇の中で感じた子どもたちのあの息遣いをなんども思い返しました。そしてコンセプト、というよりむしろメッセージとして〈きょうを生きるあなたとわたしのための演劇〉ということを、シーズンを通じて伝えたいと思いました。
ラインアップを組む際には「生活者としてのアーティスト」がどのような物語を届けたいと思うのか、というシンプルな問いを立てました。観る人の身体の裡に永遠に残る一瞬を結実させようとすることと、きょうもあしたも続く生を生きること。相反するふたつの方向に引き裂かれながら、目の前にいる観客とともに「この世界の手触り」みたいなものをなんとか掴もうとする。演劇の上演とはそのような愚直な行為だと思います。私はそんな矛盾した、だからこそ切実な営みに心を動かされます。SPACと観客の皆さんとの間で三⼗年という月日をかけて積み重ねられてきた対話に思いを馳せながら、劇場にまたひとつ新たな窓を開くように、今シーズンが「新しい風」を吹かせることを願っています。
SPAC2025年度年間ラインアップ
SHIZUOKA せかい演劇祭 2025 PLAY!ウィーク
4月26日(土)〜5月6日(火・休) 静岡芸術劇場、舞台芸術公園、駿府城公園 ほか
『ラーマーヤナ物語』
構成・演出:宮城聰
4月29日(火・祝)〜5月6日(火・休) 駿府城公園
SHIZUOKA せかい演劇祭 2025公式サイト
https://festival-shizuoka.jp/
SPAC秋のシーズン2025-2026 上演プログラム
#1三島由紀夫生誕100年記念『弱法師』
作:三島由紀夫 演出:石神夏希
2025年10月静岡芸術劇場
2026年1〜2月浜松市浜北文化センター/沼津市民文化センター
#2『ハムレット』(新作)
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作:ウィリアム・シェイクスピア 演出:上田久美子
2025年11月〜12月静岡芸術劇場
#3『ガリレオの生涯(仮題)』(新作)
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作:ベルトルト・ブレヒト 演出:多田淳之介
2026年1月〜3月静岡芸術劇場
2026年度初演予定 SPAC新作『うなぎの回遊 Eel Migration』(仮題)
台本・演出:石神夏希
【創作スケジュール(予定)】
2024年6月 リサーチ開始
2025年2月 クリエーション開始
2025年4月〜5月 限定公開リハーサル(静岡県舞台芸術公園 BOX シアターにて)
2026年2月 浜松にて ワーク・イン・プログレス発表
SPAC の⼈材育成・アウトリーチ事業
世界にはばたけ、Shizuoka youth!
SPAC 演劇アカデミー
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通年 2025年4月〜2026年3月
ストリートシアター グローバル⼈材育成プロジェクト“STRANGE Lab.”
ストリートシアターってなんだ?ゼミ
通年 2025年3月〜2026年3月
静岡県子どもが文化と出会う機会創出事業 SPAC 学校訪問プロジェクト
ひらけ!パフォーミングアーツのとびら
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通年 2025年6月〜2026年3月
すぱっくおやこ小学校
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2025年6月〜8月
SPAC シアタースクール
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構成・演出:中野真希(SPAC)
2025年8月
SPAC-ENFANTS-PLUS(スパカンファン - プラス)
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振付・演出:メルラン・ニヤカム
振付アシスタント:太田垣悠
2025年8月
SPAC-静岡県舞台芸術センター公式サイト:
https://spac.or.jp
フォトギャラリー(12件)
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