新国立劇場でアレックス・オリエ演出『カルメン』が開幕
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撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場
続きを読む新国立劇場でアレックス・オリエ演出『カルメン』が開幕し、演出を務めたアレックス・オリエ、新国立劇場オペラ芸術監督を務める大野和士のコメントが発表された。
本公演は2021年7月にプレミエ(初演)を迎えたもの。当時はコロナ禍で、出演者間の距離の確保などの厳しい感染防止対策を講じて上演された。今回は新たに演出を練り直した完全上演。公演は3月8日(土)まで開催される。

【『カルメン』演出アレックス・オリエ コメント】
1875年の初演からちょうど150年、『カルメン』はなぜ今日まで人々の心を捉えるのか。私は、カルメンの「自由を求める」人物像が一番の魅力ではないかと考えました。
カルメンは強く、明るく、人生を楽しむ女性、勇気をもって問題に立ち向かう知的な女性、そして自由の象徴です。そんな女性でも、間違った相手を選び、恋してしまうこともあります。ドン・ホセのような、独占欲が強く嫉妬深く、拒絶を受け入れられないマチスタ(男性優位主義の思想の持主)。『カルメン』の物語はマチスモなのです。
私は『カルメン』の裏にあるメッセージを考えました。この物語は、今どこで起こってもおかしくありません。世界では一日に170人の女性がドメスティック・バイオレンスで亡くなっているというニュースもあるのです。
舞台は東京。カルメンはバンドのボーカリストで、警備にあたるホセと出会う。そんな物語にしました。
私が目指しているのは、できるだけ沢山の若者にオペラを観てもらうことです。ワーグナーが言ったように、オペラというのは総合芸術で、音楽もあり合唱もあり助演として演じる俳優もいる、ライブの演奏があってドラマがある。「うわあ面白かった」と感じさせる圧倒的な力があります。私はさらに、面白かったと思って帰るだけでなく、色々な物語、色々なメッセージを感じ取ったなと思わせるくらいにやりたい。若い人たちに、物事には多様な見方、多様な考え方があるということを感じて欲しいと思っています。

【新国立劇場オペラ芸術監督 大野和士コメント】
アレックス・オリエは非常に挑戦的、大胆な解釈をします。オペラという、過去に生まれ現在まで命をつなぐ芸術に、まさにふさわしいアプローチだと思います。
『カルメン』の演出のためオリエ氏を新国立劇場に招いた2021年は、コロナによって人と人との空間がおびやかされる時代でした。オペラの上演では、向かい合えない、正面を向いてしか歌えない、距離を取らなければならないという時代で、ドラマの礎たる人間と人間が交わる空間を作れない状況でした。カルメンとホセはキスもできない。「ラ・フーラ・デルス・バウスのアレックス・オリエここにあり」という大群衆のシーンを作ることは不可能でした。オリエ氏にとっては腕の振るいどころも、極端に言えば居場所もないような環境での創作だったのです。
しかしオリエ氏はやはり大胆で挑発的で、今までにないドラマを作りました。彼は才気煥発で情熱的、爆発的な人物で、いつも我々からエネルギーを引き出してくれます。彼がここで『カルメン』という作品から解きほぐしたのは、「束縛からの自由」ということです。『カルメン』は人間を自由へ解放することを描いたドラマだという解釈を見せたのです。
古典的な名作『カルメン』がオリエ氏からもう一度新しい命をもらって、別の面を見せます。違った角度から情熱といぶきがあふれ躍動するのです。
この『カルメン』の演出では、美術家のアルフォンス・フローレスが、舞台全体を覆う、あたかも鉄骨の巨大な牢獄のような、一度入ったら誰も出られない迷宮のような大建築を構築しました。まず舞台の大建造物から感じる、逃れられない、囚われた感じ。それに対し、人間という存在の証明としてビゼーが書いた「自由」のいぶき。オリエ氏がこの『カルメン』で見せたのは、それだと思います。完全上演となった『カルメン』をぜひ皆さんの目で見届けてください。
・2021年公演より
ジョルジュ・ビゼー
カルメン
■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2455918
(終了分は割愛)
3月4日(火)14:00
3月6日(木)14:00
3月8日(土)14:00
新国立劇場 オペラパレス