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新国立劇場が2025/26シーズンのオペラ・ラインアップ発表

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大野和士芸術監督

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2月下旬、新国立劇場オペラ公演の2025/26シーズン・ラインアップ発表会見が行なわれ、オペラ芸術監督の指揮者・大野和士が演目について語った。

新国立劇場オペラの2025/26シーズンは今年10月から来年7月まで。全10演目(46公演)が上演される。大野はまず新制作の演目を紹介した。 来季の新制作は11月のアルバン・ベルク《ヴォツェック》と来年6~7月のリヒャルト・シュトラウス 《エレクトラ》。指揮はどちらも芸術監督の大野自身。

ベルク《ヴォツェック》 全3幕
(ドイツ語上演/日本語&英語字幕付き)
11月15日(土)、18日(火)、20日(木)、22日(土)、24日(月・休)全5回公演
[指揮]大野和士[演出]リチャード・ジョーンズ
[美術・衣裳]アントニー・マクドナルド[照明]ルーシー・カーター
[出演]
ヴォツェック:トーマス・ヨハネス・マイヤー(バリトン)
鼓手長:ジョン・ダザック(テノール)
アンドレス:伊藤達人(テノール)
大尉:アーノルド・ベズイエン(テノール)
医者:妻屋秀和(バス)
第一の徒弟職人:大塚博章(バス)
第二の徒弟職人:萩原潤(バリトン)
白痴:青地英幸(テノール)
マリー:ジェニファー・デイヴィス(ソプラノ)
マルグレート:郷家暁子(メゾ・ソプラノ)
[合唱]新国立劇場合唱団[児童合唱]TOKYO FM 少年合唱団
[管弦楽]東京都交響楽団

新国立劇場の《ヴォツェック》は、2009年に制作されたアンドレアス・クリーゲンブルク演出の舞台に代わる、ふたつ目のプロダクション。

1925年に初演された、無調手法で書かれたオペラのうちで最も重要と言われる作品だ。しかし大野は、「無調という言葉に怯えないで」と力説した。

「まず、全3幕がそれぞれ30分程度。ということは1時間30分ほどで終わってしまいますから、楽に考えていただくと、《ヴォツェック》の垣根は越えやすくなると思います。

そして無調の中にも、ワルツやアリア、フーガ、ポルカなどが出てきて、耳に喜びをもたらす部分になっています。(聴きやすい)メロディがそこかしこに聴こえてまいりますので、それをもって《ヴォツェック》に向き合っていただくといいんじゃないかと思います」(大野和士・オペラ芸術監督)

じっさい、無調ではあっても無機的ではない。無調や十二音技法の中に叙情的で調的な響きが絶妙に組み込まれているのはベルクの音楽の特色だ。しかも《ヴォツェック》は、音楽的構成と劇的構成が緊密に結びついたオペラの成功例として音楽史に刻まれている名作。ぜひ大野監督の言葉を信じて、食わず嫌いせずに耳を傾けてみてほしい。

題名役ヴォツェックにはトーマス・ヨハネス・マイヤー(バリトン)。2月の《フィレンツェの悲劇》(ツェムリンスキー)でも圧巻の存在感を見せつけた、新国立劇場ではもはやおなじみの名バリトンだ。大野によると、2021年の《ニュルンベルクのマイスタージンガー》のカーテンコールの舞台上で、指揮者・大野とハンス・ザックス役を歌ったマイヤーが、「次は何をやりたい?」(大野)「ヴォツェック!」(マイヤー)と会話していたそうで、今回の上演はそこで決まったのだとか。拍手を受けながら、そんなことも話しているとは、面白い!

ヴォツェック役:トーマス・ヨハネス・マイヤー Photo by Simon Pauly

リヒャルト・シュトラウス《エレクトラ》 全1幕
(ドイツ語上演/日本語&英語字幕付き)
2026年6月29日(月)、7月2日(木)、5日(日)、8日(水)、12日(日)全5回公演
[指揮]大野和士[演出]ヨハネス・エラート
[出演]
クリテムネストラ:藤村実穂子(メゾ・ソプラノ)
エレクトラ:アイレ・アッソーニ(ソプラノ)
クリソテミス:ヘドヴィグ・ハウゲルド(ソプラノ)
エギスト:工藤和真(テノール)
オレスト:エギルス・シリンス(バス・バリトン)
監視の女:森谷真理(ソプラノ)
ほか
[合唱]新国立劇場合唱団
[管弦楽]東京フィルハーモニー交響楽団

《エレクトラ》も新国立劇場で新制作されるのは2度目(先代は2004年11月に上演されたハンス・ペーター・レーマン演出のプロダクション)。

「演出のヨハネス・エラートさんとは、フランクフルトのオペラで現代オペラを一緒にやって、現代作品の、ひと筋縄ではいかないような複雑な箇所をうまく舞台化してくれた。流れの雅やかな、素敵な舞台を作っていたのを覚えています」(大野)

1915年初演。こちらも20世紀の作品だ。オペラ中に繰り返し出現する3音のモティーフを何度も“熱唱”して作品の魅力を伝える大野。《エレクトラ》は“緋色”のオペラだという。

「《ヴォツェック》との対比ですが、たいへん暗い筋書きの《ヴォツェック》が黒だとしたら、エレクトラは緋色。激しく燃えたぎるような色です。最初から最後まで手に汗を握るオペラです」(大野)

ギリシャ悲劇を題材にした物語。夫であるアガメムノン王を殺した妻クリテムネストラに、日本が誇るメゾ・ソプラノの藤村実穂子、その娘の題名役エレクトラにエストニアのドラマティック・ソプラノのアイレ・アッソーニ。休憩なし約1時間45分の1幕もの。

この2演目以外のレパートリー公演の演目は下記の一覧のとおり。

新国立劇場初登場の海外勢に注目。開幕の《ラ・ボエーム》のミミ役のソプラノ、マリーナ・コスタ=ジャクソン、勅使川原三郎演出の《オルフェオとエウリディーチェ》のジュリア・セメンツァート(エウリディーチェ/ソプラノ)、サラ・ミンガルド(オルフェオ/アルト)、《愛の妙薬》でアディーナを歌う新星ソプラノ、フランチェスカ・ピア・ヴィターレ、《ウェルテル》の題名役に起用される世界的スター・テノール、チャールズ・カストロノーヴォらが、世界レベルの旬の歌声を聴かせる。

日本勢ではとくに女声陣に期待したい。今シーズン、《夢遊病の女》のリーザと《カルメン》のミカエラを歌った伊藤晴が、《ラ・ボエーム》では艶やかなムゼッタを歌う。《リゴレット》のジルダは現在の日本を代表するソプラノの中村恵理。《ウェルテル》では、昨年センセーショナルな日本デビューを飾った砂田愛梨が、今年2月の《ジャンニ・スキッキ》に続いてソフィー役で新国立劇場の舞台に登場し、ひと足先に世界で活躍する脇園彩(メゾ・ソプラノ)とともに、女声ベルカントの逸材の揃い踏みとなるのもうれしい。

取材・文:宮本明

【新国立劇場2025/2026シーズン・オペラ・ラインアップ】

10月1日(水)初日(全5回公演)
プッチーニ《ラ・ボエーム》
[指揮]パオロ・オルミ[演出]粟國淳
[出演]ミミ:マリーナ・コスタ=ジャクソン(ソプラノ)、ロドルフォ:ルチアーノ・ガンチ(テノール)、マルチェッロ:マッシモ・カヴァレッティ(バリトン)、ムゼッタ:伊藤晴(ソプラノ) ほか

11月15日(土)初日(全5回公演)
ベルク《ヴォツェック》 ☆新制作
上記参照

12月4日(木)初日(全3回公演)
グルック《オルフェオとエウリディーチェ》
[指揮]園田隆一郎[演出]勅使川原三郎
[出演]エウリディーチェ:ジュリア・セメンツァート(ソプラノ)、オルフェオ:サラ・ミンガルド(アルト) ほか

2026年1月22日(木)初日(全5回公演)
ヨハン・シュトラウスII世《こうもり》
[指揮]ダニエル・コーエン[演出]ハインツ・ツェドニク
[出演]アイゼンシュタイン:トーマス・ブロンデル(テノール)、ロザリンデ:サビーナ・ツヴィラク(ソプラノ)、ファルケ:ラファエル・フィンガーロス(バリトン)、オルロフスキー:藤木大地(カウンターテナー) ほか

2026年2月18日(水)初日(全5回公演)
ヴェルディ《リゴレット》
[指揮]ダニエレ・カッレガーリ[演出]エミリオ・サージ
[出演]リゴレット:ウラディーミル・ストヤノフ(バリトン)、ジルダ:中村恵理(ソプラノ)、マントヴァ公爵:ローレンス・ブラウンリー(テノール)、スパラフチーレ:斉木健詞(バス)、マッダレーナ:清水華澄(メゾ・ソプラノ) ほか

2026年3月5日(木)初日(全5回公演)
モーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》
[指揮]飯森範親[演出]グリシャ・アサガロフ
[出演]ドン・ジョヴァンニ:ヴィート・プリアンテ(バリトン)、レポレッロ:ダニエル・ジュリアニーニ(バス)、ドンナ・アンナ:イリーナ・ルング(ソプラノ)、ドン・オッターヴィオ:デイヴ・モナコ(テノール) ほか

2026年4月2日(木)初日(全5回公演)
ヴェルディ《椿姫》
[指揮]レオ・フセイン[演出]ヴァンサン・ブサール
[出演]ヴィオレッタ:カロリーナ・ロペス・モレノ(ソプラノ)、アルフレード:アントニオ・コリアーノ(テノール)、ジェルモン:ロベルト・フロンターリ(バリトン) ほか

2026年5月16日(土)初日(全4回公演)
ドニゼッティ《愛の妙薬》
[指揮]マルコ・ギダリーニ[演出]チェーザレ・リエヴィ
[出演]アディーナ:フランチェスカ・ピア・ヴィターレ(ソプラノ)、ネモリーノ:マッテオ・デソーレ(テノール)、ドゥルカマーラ:マルコ・フィリッポ・ロマーノ(バリトン) ほか

2026年5月24日(日)初日(全4回公演)
マスネ《ウェルテル》
[指揮]アンドリー・ユルケヴィチ[演出]ニコラ・ジョエル
[出演]ウェルテル:チャールズ・カストロノーヴォ(テノール)、シャルロット:脇園彩(メゾ・ソプラノ)、アルベール:須藤慎吾(バリトン)、ソフィー:砂田愛梨(ソプラノ) ほか

2026年6月29日(月)初日(全5回公演)
リヒャルト・シュトラウス《エレクトラ》 ☆新制作
上記参照

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