
TBSの“本気”がつまったドキュメンタリーの祭典
「TBSドキュメンタリー映画祭2025」特集
3月14日(金)より6都市にて順次開催
近年、劇場公開作だけでなく、YouTubeやNetflixなどでもたくさんのドキュメンタリー作品が制作・配信され、その人気も高まっているドキュメンタリー作品。そんなドキュメンタリーに、開局以来、力を注いできたTBSが“テレビで伝えきれない事実や想い”を発信すべく立ち上げた「TBSドキュメンタリー映画祭」が今年もいよいよ開幕!
今回上映されるのは、社会派からエンタメ色が濃いものまでバラエティ豊かな全17作品。本特集では「ぴあ水先案内人」の皆さんの期待&おススメや、同映画祭のアンバサダーを務めた経験もあり、ぴあでもお馴染みのLiLiCoさんのインタビューをお届けします!
ぴあ「水先案内人」が
期待&おススメする作品は?
LiLiCoさんが語る
TBSドキュメンタリー映画祭の魅力
テレビなどでは伝えきれない“その後”の物語に迫る!
TBSの“本気”が詰まった17作品が集結
1955年の開局以来、制作・放送を通してドキュメンタリーに注力し、これまでも多くの作品を世に放ってきたTBSだが、彼らの主戦場であるテレビだけでは伝えきれない真実や声なき心の声をさらに強く発信していこうと2021年にスタートしたのが「TBSドキュメンタリー映画祭」だ。
そんなTBSの“本気”が詰まった本映画祭も今年で第5回を迎え、3月14日(金)より東京・名古屋・大阪・京都・福岡・札幌の全国6都市で順次開催される。今回は、現代を取り巻く重要な社会問題を考える「ソーシャル・セレクション」、多様な生き方や新たな価値観を見つめる「ライフ・セレクション」、表現者や歴史的発見を通して新たな感性に出会える「カルチャー・セレクション」の3つのテーマに沿って、14作品を選出。あわせて、戦後80年企画と題して、戦時下や戦後を生きた人々を映した3作品も特別上映される。
※全17作品のラインナップはこちら
本映画祭では、放送されなかった“その後”の物語や、短い映像では描ききれなかった貴重な映像や語り、取材する者、される者双方の熱い想いが映画作品として上映される。
過去にテレビ放送された題材もあるが、映画祭のためさらなる取材や編集を行なった“劇場版”で、テレビでは表現できない部分、映画館のスクリーンに映えるシーンなどがふんだんに盛り込まれている。
毎日のように届けられるニュースには、その続きがある。各作品が描くテーマや人物、そして情熱を持った作り手の想いに作品を通して触れることで、今まで見えなかった世界が広がるに違いない。“本気”の人々の人生を、“本気”の制作者たちが映像に刻みこんだ全17作品、ぜひ劇場のスクリーンで堪能してほしい。
ぴあ水先案内人に聞きました!
「これは観たい!orこれはおススメ!」な作品は?
イソガイマサト (映画ライター)
『彼女が選んだ安楽死~たった独りで生きた誇りとともに~』
『劇場版 クマと民主主義』
『あの日、群馬の森で -追悼碑はなぜ取り壊されたのか-』
多彩なジャンルの充実のラインナップで、注目度が年々アップしているTBSドキュメンタリー映画祭。今年も見逃せない作品ばかりだが、個人的に前のめりになったのはこの3本だ。
『彼女が選んだ安楽死~たった独りで生きた誇りとともに~』は、人生を自らの手で終わらせるためにスイスに渡った64歳の女性に迫るもの。日本にもジャン=リュック・ゴダールと同じ選択をし、行動に移した人がいたなんて! 彼女の決意と生き様を目の当たりにしたときにどんな感情が湧き上がるのか興味深い。
『劇場版 クマと民主主義』は、最近各地で問題になっているクマ被害とその対策に追われる小さな村が直面した政治の闇を炙り出す7年間の記録。報道が伝えない、いまの日本を知ることができるのもドキュメンタリーならではだろう。
『あの日、群馬の森で -追悼碑はなぜ取り壊されたのか-』にも同じことが言える。戦時中に過酷な労働を強いられた、朝鮮人労働者を悼む碑の撤去が投げかけてくるさまざまな問題。それについて考えたり、誰かと意見交換できるのもドキュメンタリーのいいところだ。

水上賢治 (映画ライター)
『彼女が選んだ安楽死~たった独りで生きた誇りとともに~』
『労組と弾圧』
『小屋番 KOYABAN ~八ヶ岳に生きる~』
まずは回を重ねて第5回を迎えたことが喜ばしい。ここで一区切りではなく、あくまで通過点。「オールド・メディア」と揶揄されようと、それを打ち消す報道機関としての矜持を感じさせるドキュメンタリー作品を今後も届けてくれること切に願う。
今年もさまざまなテーマの作品がラインナップに並んだが、一番気になるのは『彼女が選んだ安楽死…』。ここ数年、ネットでの誹謗中傷をはじめ、人の尊厳を踏みにじる、人の命を軽んじる行為が急速に増加しているような気がしてならない。そのことを危惧してかは分からないが、現在公開中のペドロ・アルモドバル監督の『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』をはじめ安楽死を主題に、命について考える作品が度々生まれている。本作もまた「生と死」、「命」と今一度向き合い、見つめ直す機会になる気がする。
次に注目は『労組と弾圧』。本作は戦後最大規模の労働事件の真相に迫っているが、ただ浮かび上がるのは弱い者が声をあげづらい、もしくは排除され抹殺される日本社会といってもいいかもしれない。フジテレビ問題でにわかに脚光を浴びつつある労働組合だが、働く側にいる人たちは必見の1本といっていい。
もう1本ピックアップするのは、『小屋番 KOYABAN ~八ヶ岳に生きる~』。八ヶ岳の四季折々の風景を収めた映像も大きな見どころだが、本作の特筆すべき点は、小屋番と呼ばれる山小屋を営む人々に焦点を当てていることだ。山小屋の存在は知っていても、そこで働く人々がどれだけの大きな役割を担い、登山の安全に寄与しているのかはおそらくあまり知られていない。弾丸登山や環境破壊といって問題も生まれているいま、彼らの言葉に耳を傾けてほしい。

よしひろまさみち(映画ライター)
『小澤征爾~魂のタクト、奇跡の第九~〈テレビ版 特別上映〉』
『jABBKLAB~誰も置いてかないダンススポット~』
『誰のための公共事業~ギロチンが宝の海を壊した~』
恒例化してとてもうれしい映画祭のひとつがこのTBSドキュメンタリー映画祭。報道機関としてテレビ局が取り組むべき仕事を、映画サイズに拡大・再編集して届けるという試みは、他のどの局もできていないこと。『報道特集』、『情熱大陸』、『解放区』といったドキュメンタリー番組枠で取材した素材を、映画化にあたって再検討・再編集した作品群が観られるこの映画祭。他局でもドキュメンタリー番組によい反響があると映画版ができたりすることはあるが、ここまでしっかりとドキュメンタリー映画に向き合い、キー局のみならず全国のネット局にいる若手のディレクターにチャンスを与えている局はTBSとNHKくらいのものだろう。
今年の作品群で群を抜いて印象に残っているのは、『小澤征爾~魂のタクト、奇跡の第九~〈テレビ版 特別上映〉』『jABBKLAB~誰も置いてかないダンススポット~』『誰のための公共事業~ギロチンが宝の海を壊した~』の3作品。
『小澤征爾~』だけTV放映版の特別上映となるが、こんなアーカイブ映像が残っていたとは!という驚きの連続。彼が欧米で成功を収め、それまで袋叩きにしていたメディアがころっと態度を変えたあの頃。才能を正当に評価できず、「逆輸入」ステイタスに弱い日本のダメなところを浮き彫りにする。
『jABBKLAB~』と『誰のための公共事業~』は共に九州RKB製作による作品。全く違う事象、人物を取り上げているものの、根幹に流れるのは、どんな小さな声も聞き逃さない、という社会派ドキュメンタリーの基本のキ。大手メディアによる対外的印象だけではとらえきれない本質を、ファクトと生のリアクションから裏取りしている。

映画のプロが伝授! TBSドキュメンタリー映画祭2025の楽しみ方
TBSドキュメンタリー映画祭2025のラインナップ全17作品
TBSドキュメンタリー映画祭2025 概要
2025年3月14日(金)~4月3日(木)
東京:ヒューマントラストシネマ渋谷
2025年3月28日(金)~4月10日(木)
大阪:テアトル梅田
2025年3月28日(金)~4月10日(木)
名古屋:センチュリーシネマ
2025年3月28日(金)~4月10日(木)
京都:アップリンク京都
2025年3月28日(金)~4月10日(木)
福岡:キノシネマ天神
2025年4月5日(土)~4月11日(金)
札幌:シアターキノ
公式サイト:
https://tbs-docs.com/2025/