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スーパー木管アンサンブル、レ・ヴァン・フランセのツアーが間近

クラシック

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©Warner Classics

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はつらつとした瑞々しさを、深く豊かに磨ききるスーパー・アンサンブル〈レ・ヴァン・フランセ〉。木管五重奏とピアノのそれぞれ超一流ソリスト陣が、六重奏を中心に多彩なレパートリーの理想像を更新し続けながら世界のトップをひた走る。

惚れ惚れするほど上手いのはもちろん、いつ見ても6人全員が〈愉しくてたまらない!〉という喜びを溢れさせているステージの雰囲気も、広く大人気の理由だろう。――世界トップクラスの音楽家たちが、ステージ上でも和気あいあいと(しかし音楽づくりはとことん誠実・真摯に!)演奏を繰り広げる。聴きなれたはずの傑作たちにも新しい顔を魅せてくれるし、初めて出逢う音楽にも心地良い驚きを感じさせてくれる。何度通っても、愉しいのだ。

軽やかに、自由に!――アンサンブルの絶妙を極める

2025年早春の全国ツアーに先立って、メンバーのひとりであるオーボエの世界的名匠、フランソワ・ルルーさんにお話を伺った。

「私たちは〈フランスの風(=レ・ヴァン・フランセ)〉と名乗っているくらいですから、今回もフランスの傑作を中心に演奏します。たとえば、プーランクの六重奏曲は、もう私たちのサインのような作品ですね(笑)」

これは看板演目として世界中で披露し続けている作品なのだが、何度聴いても印象が変わる、というのが不思議な面白さ。一期一会のスリリングな掛け合いが続くなか、プレイヤー同士で手を取り合って飛翔してゆくような、軽やかさや自由さを味わわせてくれる。ほんとうに素敵な曲なのだ。

「これはプーランクの個性なんですが、演奏する側にとっては〈カオス(混沌)をオーガナイズ(組織化)する〉という意識が大切。自由を損なわずに、それを秩序立てる。‥‥余白を残しながら、湧き出してくるものも抑圧しない、ということが大切なんです」

ぜひこれは、ステージを実際にご覧いただきたい。(良い意味で)はちゃめちゃなカオスにもなりそうなほど自由自在な音楽が、6人の名手たちがみせる丁々発止で、アンサンブルの絶妙を極める。それは、客席で何度体験しても、思わず笑みがこぼれると共に、厚い震えがくるような感動を覚える体験だ。

豊かな音色表現が、見事にブレンドされてゆく‥‥

©Nicolas Tavernier

「プーランクとは対照的な作品で、同じくフランスの作曲家カプレの五重奏曲は、とても強靱で、暗い深みをひらきながら、鮮烈なエネルギーも放っている作品です。長い曲なのに、体感はあっという間ですからね!」とルルーさん。「そうそう、フランス作品ではもうひとつ、ルーセルの〈ディヴェルティメント〉は、パユさんの長いフルート・ソロを聴けるのが愉しみですね(笑)。

そのエマニュエル・パユさん(ベルリン・フィル首席フルート奏者)に以前お会いした折、ルルーさんのことを「オーボエを演奏すれば色彩の巨匠というべき存在」と絶賛されていたことを思い出すけれど、これは〈レ・ヴァン・フランセ〉のメンバー全員に言えること。――とにかく、それぞれの音色表現がほんとうに豊かで、ソロでもぐっと惹きつけられるのはもちろん、6人が融け合ったアンサンブルの音色がまた、見事な呼吸とブレンド感をもって、美しい立体感を広げ、ホールを充たしてゆくのだ。

ふつう木管五重奏はフルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットという編成になるのだが、〈レ・ヴァン・フランセ〉では、名匠ジルベール・オダンさんが〈バソン〉というフランス式ファゴット(現在のオーケストラで使われることは少ないが、フランス音楽には欠かせない音色を持つ)を吹いているのも特徴。とりわけ、フランス音楽でその持ち味を感じていただけるのも、彼らのコンサートを聴く愉しみのひとつだろう。

「とはいえですね」とルルーさんは言う。

「作曲家はそれぞれがしっかりした個性を持っているものですから、〈フランスもの〉〈ドイツもの〉と国で分けて考えなくていいと思いますよ。今回のツアーで演奏するテュイレはドイツの作曲家ですが、彼は私がいま教えているミュンヘン音楽大学の教授でしたので、そんなご縁も感じつつ選んでいます」とおっしゃるように、〈レ・ヴァン・フランセ〉はドイツ音楽の傑作たちも見事なレパートリーとしているし、優れた録音も多数。作曲家の国や時代など飛び越えて、どんな作品でも自分たちの音楽としてしまうのだ。

彼らのために書かれた、新しい音宇宙も――愉しくも深い発見へ!

©wildundleise. de Georg Thum 2014

その〈国も時代も超えてゆく〉凄味は、彼らが取り組む新作にもあらわれている。〈レ・ヴァン・フランセ〉のレ・ヴァン・フランセの日本ツアーでは、優れた現代作曲家たちが彼らのために書き下ろした新作を聴かせてくれるのが、恒例の楽しみとなっているのだ。

「今回のツアーでは、ジル・シルヴェストリーニ[現代フランスの作曲家・オーボエ奏者]が、我々のために書いてくれる新作の六重奏曲を、この日本ツアーで世界初演します。――シルヴェストリーニは、30年以上の長い親友でもあり、私のために曲をたくさん書いてくれてきました。美しい詩のようなデリカシーをもった音楽を創る人です。数々のオーボエ作品でも新たな超絶技巧と音色を創造し‥‥理屈ではなく心に語りかけてくる音楽、を生む素晴らしい作曲家だと思います」と太鼓判をおされたところで、初演もぜひお楽しみにしていただきたいところ。

ルルーさんは、バイエルン放送交響楽団の首席奏者をはじめ、世界の頂点に輝くオーケストラでの経験も重ねてきた。ソロや室内楽、協奏曲から指揮まで、ひっぱりだこで多忙を極めるが、この〈レ・ヴァン・フランセ〉の仲間たちとの時間は、とても大切にされている。

余談だが――以前、〈レ・ヴァン・フランセ〉の6人全員そろったところでインタビューさせていただいたことがある。フルートのパユさんが「取材を始める前に‥‥」と神妙に話しだしたので、何を言うのかと思えば「我々の中には、取材中にどうしてもおふざけせねば気が済まぬ奴もおりますことを、はじめにお断りしておきたいと存じます!」

最初は神妙にしていた6人だったが、途中からわちゃわちゃ愉しそうにふざけ出し、最後は修学旅行の夜のようにソファーでもみ合っているメンバーもいて(名は秘す)こちらも爆笑してしまったのだが、とにかく(世界最高峰の音楽家たちでありながら)愉快な仲良したちだ。

仲良しおひとりずつのお話もゆっくりお伺いしたいところだが‥‥「管楽器との共演にも長けているばかりか、なんでも出来る天才ピアニスト!」とルルーさんも絶賛するエリック・ル・サージュさんは、ふだん静かな佇まいをみせつつ、「僕らがピアノのない作品を演るときは、『鍵盤ハーモニカで共演しちゃダメかな?』って言うんだけど(笑)」、それも見事に演りかねない。ほんとうに愉しくて、素晴らしい音楽家たちだ。

ぜひ、ステージで彼らの人柄に、そしてなにより、世界最高峰のアンサンブルが生む極上の音楽に、出逢っていただきたい。

文:山野雄大

レ・ヴァン・フランセ

■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2454840

3月17日(月) 19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール

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