驚きに満ちた至高のミュージカル『イリュージョニスト』がついに開幕
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ミュージカル『イリュージョニスト』メインビジュアル
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すべて見るスティーヴン・ミルハウザーによる短編小説『Eisenheim the Illusionist(幻影師、アイゼンハイム)』を原作に、2021年に世界初演の新作オリジナルミュージカルとして開幕を予定していた『イリュージョニスト』。新型コロナウイルスの影響によるコンサートバージョンでの上演となったが、4年の時を経て再始動し、2025年3月11日よりフルバージョンがついに開幕する。
脚本をピーター・ドゥシャン、音楽をマイケル・ブルース、演出をトム・サザーランドが務め、主演の幻影師・アイゼンハイムを海宝直人、皇太子レオポルドを成河、公爵令嬢・ソフィを愛希れいか、ウール警部を栗原英雄、興行主のジーガを濱田めぐみが演じる。
開幕を前にゲネプロが行われ、カンパニーからコメントも到着したのでここにご紹介しよう!
ゲネプロレポート
物語の舞台は19世紀ウィーン。イリュージョニストのアイゼンハイムは、興業主ジーガと共に世界中を巡業していた。独創性溢れるショーで人気を集めるアイゼンハイムは、ウィーンでの公演中、幼い頃に恋心を寄せ合った公爵令嬢・ソフィと再会する。今やオーストリア皇太子レオポルドの婚約者となったソフィだが、二人は密かに逢瀬を重ねる。二人の関係を疑う皇太子はウール警部に偵察させ――。
海宝演じるアイゼンハイムは、自分の技術に自信を持っており、神経質でプライドの高い青年。会話中に魔法のような手品をさらりと披露したり、イリュージョンで皇太子の鼻を明かしたり、鮮やかな手さばきも見事だ。物語が進むにつれ、幼い頃の約束を胸に技術を磨いて上り詰めてきたことがわかり、一途さと危うさが見えてくる。歌唱においても、狂気的なまでの思いを見事に歌い上げていた。

アイゼンハイムと対立する皇太子・レオポルド(成河)は、国の危機を前に過激な思想に傾倒していく。アイゼンハイムと対峙した時のヒリつくような空気、ソフィやウール警部に対する威圧的な態度など、芝居はもちろん、柔らかく深みがありながらどこか冷たい歌声でも皇太子の人となりを描き出していた。

愛希演じるソフィは、自分の立場を理解しながらも本心を無視できずに苦しむ姿が痛々しい。一方で、アイゼンハイムはもちろん皇太子に対しても臆せず意見をぶつける強さが爽快でもある。

アイゼンハイムとソフィの再会、危険な愛と三角関係、悲劇……と目まぐるしく進んでいく物語において、観客に近い立場にいるのがウール警部とジーガだ。栗原はウール警部が置かれた複雑な立場、心の揺れを丁寧に描き、濱田はジーガの野心とアイゼンハイムに対する親心の両方をチャーミングに見せている。勢いのままに突き進む若者たちに巻き込まれ、振り回される姿を応援したくなってしまう。


また、ポップで楽しいものからドラマティックなものまで、さまざまな楽曲が魅力的なキャラクターと物語を彩っているほか、さまざまなイリュージョンが仕込まれている本作。“ネタバレ禁止”と銘打たれていることからも分かるように、作中に散りばめられた謎も大きな見どころとなっている。実力あるキャスト陣の芝居と歌唱に加えてマジックでも楽しませてくれる。見終えた時に「冒頭からまた観たい」と思う方も多いのではないだろうか。

4年の時を経て磨かれた物語を、ぜひ劇場で見届けてほしい。本作は3月11日(火) 〜29日(土) まで東京・日生劇場で上演され、4月8日(火) 〜20日(日) までは大阪・梅田芸術劇場メインホールでも公演が行われる。
取材・文/吉田沙奈
撮影/岡千里
開幕コメント
■脚本/ピーター・ドゥシャン
皆さまにトム・サザーランドが演出を手掛ける、私たちのミュージカルを観ていただけることを、非常に楽しみにしています。舞台上にはワクワクするような演出が満載です。クリエイティブチームの仕事は驚くほど素晴らしく、俳優たちはそれぞれの役をダイナミックに表現しています。刺激的な時間を、劇場でどうぞお楽しみください。
■作詞・作曲/マイケル・ブルース
『イリュージョニスト』フルバージョンが、ついに日生劇場(そして梅田芸術劇場)で上演されることを、とても嬉しく思います。このプロダクションは挑戦的かつ壮大で、圧倒的な舞台装置と、現代社会に響く力強いテーマ性を兼ね備えた作品です。2021年のコンサートバージョン以来、一流のプリンシパルキャストの皆さんはさらにその演技を深め、卓越した技術とショーマンシップを存分に発揮しています。この目が離せないミステリー・ロマンス・スリラーでは、オーケストラの響きがこれまで以上に壮麗で、アンサンブルの圧倒的な歌声が劇場の屋根を吹き飛ばすほどの迫力を生み出しています。 素晴らしい才能を持つ俳優たち、クリエイティブチーム、そして技術スタッフたちと共に仕事ができたことを心から光栄に思います。
■演出/トム・サザーランド
日本で初めてミュージカルを演出してから、早くも10年が経ちました。その間に、ここで共に創作する仲間たちを、世界最高峰の技術を持つアーティストとしてだけでなく、大切な友人だと感じるようになりました。今回、ピーター・ドゥシャンとマイケル・ブルースによるこのスリリングなミュージカルを皆さんと共有できることを、大変嬉しく思います。素晴らしいキャストの皆さんによって、キャラクターに命が吹き込まれ、この作品はさらに鮮やかで豊かなものになりました。コンサートバージョンも愛していましたが、いよいよ開幕が近づく今、より刺激的で没入感のあるミュージカルに生まれ変わったことを確信しています。どうぞお楽しみください。いいえ、"大いに"お楽しみください!
■イリュージョニスト・アイゼンハイム/海宝直人
前回公演は感染症による制約の中、カンパニー一丸となり、創造力を駆使して作品を作り上げました。そして今回は待望のフルバージョン。ドラマチックで美しい音楽はそのままに、より刺激的で想像力豊かな舞台に生まれ変わりました。ある時は色鮮やかに、ある時は魅惑的に、またある時は幻想的に。多彩な表情を見せながら、この作品が問いかけるのはまさに現代そのもの。ぜひ皆さま劇場でご体感ください。
■皇太子・レオポルド/成河
ついにフルバージョンを皆様にお披露目できることを嬉しく思います。トム・サザーランドによる唯一無二の空間演出は全て、アナログを駆使した人海戦術です。今のデジタル優位の世界で、イリュージョンも含めた、このアナログの持つ「脳みそを使った最高峰の遊び」をご堪能下さい。そして、この作品が最後に突きつけてくる問いは非常に今日的なものです。劇場でこの問いが美しい音楽と共に皆様に届く瞬間を楽しみにしています。
■公爵令嬢・ソフィ/愛希れいか
初日の幕が開くギリギリまで、みんなで試行錯誤を繰り返し、妥協することなくチャレンジし続けています。私自身も初日にどうなっているのか正直分かりませんが、きっと緻密で美しく、かつ大胆な舞台になるのではないかなと思っています。千秋楽までソフィとして精一杯生きたいと思いますので、どうぞ宜しくお願いいたします。スリル満点の『イリュージョニスト』の世界を最後までお楽しみください!!
■警部・ウール/栗原英雄
いよいよ開幕の時を迎えます。この作品が皆様の元へお届け出来る事に喜びを感じております。2016年プロジェクトの立ち上がりから本日まで多くの人が関わって来ました。様々なことが有りました。これまで全てのスタッフキャスト関係者の仲間と創られた作品です。この作品が皆様の目にどう映り、どう心に響き、どう思考されるのか、貴方の真実とは、ミュージカル『イリュージョニスト』の幕が上がります。
■興行主・ジーガ/濱田めぐみ
今回のフルバージョンになって圧倒的な世界観に包み込まれます。セットやライト、衣裳、メイクが揃って漸く完成した舞台『イリュージョニスト』になるのだと。幻想的で独創的な魅力溢れる世界。前回よりも立体的により深くこの物語が迫って来ます。是非劇場にてこの物語に包まれて下さい。
<公演情報>
ミュージカル『イリュージョニスト』
【東京公演】
日程:3月11日(火) 〜29日(土)
会場:日生劇場
【大阪公演】
日程:4月8日(火) 〜20日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール
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