「クミコ&タブレット純 昭和ジュークBOX~昭和歌謡とシャンソンの夕べ デラックス~」 松崎しげるをゲストにシャンソンと昭和歌謡で魅せる!
音楽
インタビュー


左から)クミコ、タブレット純
日本におけるシャンソンの第一人者・クミコと、お笑い芸人であり、ムード歌謡漫談、さらには昭和歌謡と多彩な活躍を見せるタブレット純のタッグによる1日限りのコンサート「クミコ&タブレット純 昭和ジュークBOX~昭和歌謡とシャンソンの夕べ デラックス~」が4月23日(水) に昼と夜の2回公演で行なわれる。クイズ番組(「クイズ!脳ベルSHOW」)での出会いをきっかけにジャンルを超えて意気投合したという2人。今回、スペシャルゲストに松崎しげるを迎えて開催されるこちらの公演について、意気込みを語ってくれた。
――昨年4月の「昭和歌謡とシャンソンの夕べ クミコ~featuring~タブレット純」、12月の「クミコ×タブレット純 昭和ジュークBOX ~昭和歌謡とシャンソンの夕べ デラックス~」の第1弾と2度にわたり、コンサートで共演されていますが、そもそものおふたりの出会いと最初の印象についてお聞かせください。
クミコ 初対面がクイズ番組で、そこで「ほう!」と驚いて、興味深い方だなと思い、共演させていただけたら、さぞや面白いだろうということで共演をお願いいたしました。この佇まいから出る歌声とお話しする声のギャップがあって、でもそのギャップが多くの方、特に女性の方が望んでいるギャップだったんですよね。気弱なのか、気弱じゃないのか、わからない、不思議なところに惹かれるところがありました。
タブレット純 もちろんクミコさんの存在は知っていましたが、クイズ番組で僕のギャグにひとりだけウケて反応してくださったんです。
クミコ なんで他の人はウケなかったんだろうね?
タブレット純 受け入れてくださる方なんだなと嬉しかったんですけど、僕も二十歳前後の頃にシャンソンをかじっていたことがあって、クミコさんのように心で歌うというか、そろそろ自分も大人の歌を歌える人間になりたいというのもあって、僕からもクミコさんに「ご一緒できませんか?」とお伝えしたんです。その後、(コンサートでの共演を前に)一度、サシで飲んでお話をさせていただいたんですけど、クミコさんも日の目を見るまでに(下積みの時代に)いろいろあったということをおっしゃっていて、僕自身、いろんな紆余曲折があったんですけど、そういう時代があったからこそ心を打つ歌が歌えるんだなと。
――シャンソンと昭和歌謡というジャンルの異なる歌のコラボレーションとなりますが、クミコさんにとっての昭和歌謡というのはどういうものなんでしょうか?
クミコ 私はシャンソン歌手ではあるんですけど、もともと流行歌の歌手になりたかったんです。歌謡曲、街で流れる歌で育っているので、昭和歌謡はすごく好きですし、タブレットさんのようにそこに特化して独自の目線をもって活動されている方とこういうチャンスがあると思っていなくて、私自身にとってもこのコラボはすごく勉強になるなと思いましたしすごく嬉しいです。シャンソン(歌手)なんですけど、身体の半分は昭和歌謡に寄っちゃっている自分がいるので(笑)、違和感なくやれています。
――タブレット純さんはシャンソンとの関わりというのはどのように?
タブレット純 戸川昌子先生の「青い部屋」というお店(シャンソンサロン)があって、10代の頃からひとりで通っていた時期がありました。女性の切ない恋を歌ったりというところはすごく昭和歌謡的でもあるし、ムード歌謡曲好きの自分も違和感なく「いいな」と思いながら通っていました。違いがあるとすれば、表現がより演技的というか、芝居の要素があるのかなと。歌謡曲よりも「心で歌う」というイメージがありました。その意味では歌唱力というより、歳を重ねるごとに伝えられるジャンルなのかなという気がしていて、これからシャンソンを歌える歌手になりたいという思いがあります。シャンソンというのはフランスではいわゆる歌謡曲ということですか?
クミコ そうだね、日本における“シャンソン”というのは、フランスでは既に絶滅しかかっているというか、フレンチポップスではないので。本国でなくなりかけているものが、なぜか日本で残っているのが不思議な気もしますね。
スペシャルゲストに松崎しげるが登場!
――過去2回の公演では「昭和枯れすすき」や「再会」といった曲をデュエットで披露されたそうですが、今回はどのような構成に?
タブレット純 ムード歌謡はデュエットが多いので、今回もやりたいですね。
クミコ ソロでは「アカシアの雨がやむとき」は一番好きでレパートリーにしています。九ちゃん(坂本九)とかが好きだったので、タブレットさんがやっている昭和歌謡というよりも、ポップス寄りになっているかもしれませんね。
――歌はもちろんですが、お2人のトークのほうも楽しみです。
タブレット純 何を話そうかという打ち合わせは一切していないので、行き当たりばったりなんですけど(笑)。2回目(前回共演)の時は、これまでの人生の話みたいなことをして、お互いの心根がわかってきたところがあったのかなと思います。
クミコ 全然、ためにならない話という感じでしたね(笑)。少しは何か勉強したいと思って来られたお客さまには申し訳なかったですけど(苦笑)。タブレットさんは演芸もあるので、それは私も楽しみにしてます。“ジュークボックス”と言いつつ、演芸まであって、必ず私の好きなネタもやってくださるので。
――シャンソンのパートの構成についても、どんなものになりそうなのか教えてください。
クミコ 全く考えてなかったですね(苦笑)。私の場合は、越路吹雪さんが好きでシャンソンの世界に足を踏み入れたので、「愛の讃歌」はもちろん、「サン・トワ・マミー」など越路さんの歌は歌いたいですね。
あとは、ここ最近でやっているのが美輪明宏さんの「ヨイトマケの唄」ですね。あの曲をシャンソンとは言わないかもしれませんが、タブレットさんとご一緒する時は、足を運んでくださるお客様にとって“遠い”シャンソンではなく、昭和歌謡のように身近にあるリアルに思える曲を選びたいなと思っていて「ヨイトマケの唄」を入れたのもそういう意味です。
――スペシャルゲストに松崎しげるさんをお迎えすることになった経緯と楽しみにしていることを教えてください。
クミコ (タブレット純に)親しいんでしょ?
タブレット純 親しいというか、何度かお会いしたことはあります。全く裏表のない良い方で、私たち二人とは違う個性、“超熱唱型”といいますか(笑)、僕はちょっと前にNHKアーカイブスで昔の映像を見ながら過去をふり返るというのをやっていまして、松崎さんはもともとGS(グループ・サウンズ)なんですよね。
クミコ そうなんだ!?
タブレット純 ミルクというGSにいらして、ほとんどガロに行くくらいの感じで(※当時のメンバーに、のちにガロを結成する堀内護、日高富明がいた)、マネジャーが宇崎竜童さんだったんですよ。すごく面白い過去をお持ちなんです。松崎さんも下積みの時代が長くて、顔も出ないようなCMソングをやられていた時期もあったんです。ところで、クミコさんは松崎さんとは……?
クミコ 初めて(笑)! でもあのお歌を生で聴けるのは嬉しいです。できれば3人で歌いたいですね。ハモっちゃったりして(笑)。
タブレット純 個人的には「噂の刑事トミーとマツ」(※松崎と国広富之がバディを組んだテレビドラマ)が好きだったので「おとこおんなのトミコ!」(※劇中で松崎が国広に向かって言うセリフ)という、いまはもうTVでは絶対に言えないセリフを「おとこおんなのタブ子!」と言い換えて言ってほしいですね(笑)。
クミコ 洋楽がお好きであれば、私たちと一緒に歌える曲が絶対にあると思うので、プレスリーとかやりたいですね。
――松崎さんと言えば昨年、亡くなられた西田敏行さんと大親友でしたので、「もしもピアノが弾けたなら」をぜひお聴きしたいですね。
クミコ それはやっていただけるんじゃないかな。
タブレット純 松崎さんに歌っていただくのが一番いいと思いますね。
クミコ 松崎さんにやっていただけるなら最高です。
令和に届ける昭和歌謡の魅力
――令和の時代における昭和歌謡についてどのように感じていますか? 歌謡の世界で昭和歌謡が今後、どのようになっていくと思いますか?
タブレット純 「昭和歌謡を残していこう」ということをしなくても、いまはいろんな方が昭和歌謡にアプローチして、ブームが長く続いているような状況だなと思います。特に今年は“昭和100年”ということもあって、今回のような昭和歌謡と銘打ったコンサートもあちこちで開かれるでしょうし、今後も延々と残っていくものなんじゃないかなと思っています。
いまの時代、大衆歌が生まれないので「みんなが歌っていた歌」というのがもう生まれないんじゃないかと思っていて、その中で“あの時代の歌”というのは歌い継がれ、語り継がれていくような気がしています。
クミコ 私もそう思いますね。シャンソンはなくなるかもしれないけど(苦笑)、昭和歌謡はなくならないと思います。
タブレット純 昭和自体を「面白い時代だった」という捉えられ方をしている部分も多いですし、加えてそこに歌もついてまわる部分もあって、携帯やメールがあると歌謡曲的な歌が生まれないですよね。海外に行ってもメールできる時代に“置き手紙”とかもうないですし(笑)。そういう意味で歌謡曲が生まれず、憧れとして昭和歌謡が残っていくのかなと思っています。
――他にいまの時点で「これを歌いたい」と考えている曲があれば教えてください。
タブレット純 最近、フォークのコンサート(「あの素晴らしい歌をもう一度コンサート2025」)でもクミコさんとご一緒したんですけど、僕は「帰って来たヨッパライ」を歌いまして……。
クミコ それはやりましょう! 北山修さんとタブレットさんがステージで歌っていて、私はそれを見て「これは絶対にやろう」と思ってたんです。北山さんがやられていた神様の声を私がやって、ヨッパライをタブレットさんがやるという形でね。
タブレット純 「声を裏返して寄せてやってくれ」ということでやってみたら、思いのほか、あれだけは褒められるので(笑)。北山先生からも「ようやくこの曲の完成形に50数年を経てキミで辿り着いた」って言っていただいたので。
クミコ あの声でやれる人がいなかったんですね(笑)。あれがいいです。やりましょう!
取材・文・撮影/黒豆直樹
<公演情報>
「クミコ×タブレット純 昭和ジュークBOX~昭和歌謡とシャンソンの夕べ デラックス~」
日程:2025年4月23日(水)
会場:よみうりホール
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/showajukebox/