山崎銀之丞、『NEO大衆アンダーグラウンド〜壹〜』で「生涯最後の『熱海殺人事件』を」

4月8日(火) から13日(日) にかけて、赤坂レッドシアターにて『NEO大衆アンダーグラウンド〜壹〜』が開催される。昨年の『NEO大衆アンダーグラウンド〜零〜』に引き続き俳優の山崎銀之丞が総合演出を務め、柳家喬太郎やTEAM SHACHI 、角田信朗、松村邦洋といった面々が日替わりで登場。今年は「落語の日」「演劇の日」「音楽の日」「芸能の日」「大衆演劇の日」と日ごとにテーマが設けられ、毎日異なるパフォーマンスが披露される。

なかでも今回、山崎が全身全霊で稽古に打ち込んでいるのが4月9、10日の「演劇の日」で披露される『山銀版 熱海殺人事件 ダイジェストヴァージョン』。恩師でもあるつかこうへいの代表作を、山崎自ら「ダイジェストヴァージョン」にぎゅっと凝縮して上演するというものだ。

山崎　僕はつかこうへいの運転手から始めて、8年間つかさんに育てていただきました。子役からはじめて昨年芸歴が50周年になりますが、一時期は地元福岡でラジオパーソナリティをやっていたんです。劇団もやっていたけれど、パーソナリティのほうが調子がよかった。そんなとき、つかさんが福岡を訪れたんです。ずっと憧れていましたから、オーディションに飛び込み、ラジオを降板して上京しました。
彼がいなければ、僕はきっと今俳優をやっていない。そんなつかさんは62歳で亡くなりましたが、僕がちょうど今年62歳なんです。だから追悼の意味も込めて『熱海』をやりたいと。

かつて、若き山崎がつかの厳しい指導を乗り越えて役を手に入れた『熱海殺人事件』。並々ならぬ思い入れがある。

山崎　つかさんの作品はいろんなところで上演されていますし、『熱海』もいろんなアレンジがほどこされていますけれども、僕はなるべくあの頃のつかさんのスピリッツとテーマをそのまま伝えられるように稽古を重ねています。
僕と、今回熊田留吉役を演じる武田義晴は、なんといってもつかさんから直接指導を受けていますから。片桐ハナ子を演じる幸田尚子とは『アンチヒーロー』で出会いました。作品に前のめりに参加してくれて、なかなかいいですよ。大山金太郎を演じる柳下大も2011年の『熱海』で共演した仲。この4人が集った今作は他では観られないつか作品になると、それは自信を持って言えます。
僕は12年ぶりの木村伝兵衛役です。つか芝居にはエネルギーが必要で、体力勝負。だから、僕がこの役を演じるのは、生涯最後のつもりでやっています。

『NEO大衆アンダーグラウンド』の発想の源は、コントや音楽など、様々な要素が入り混じったスネークマン・ショーという山崎。今回も演劇だけでなく、落語や音楽などバラエティに富んだ演目が並ぶ。

山崎　日本舞踊の春日壽さんとそのお弟子さんの春日壽湖さんには全日程出演いただきます。壽さんとは『3年B組金八先生』で出会いましたが、春日流は日本舞踊の概念を覆すような踊りなんです。この出会いも、『NEO大衆アンダーグラウンド』を始めるひとつのきっかけ。今回は毎公演、その日の演目に合わせた踊りを踊っていただきます。

昭和の頃、春日流の先代が不良たちにソーラン節を踊らせ、更生への道を作ったことでも知られる春日流。今回の公演ではTEAM SHACHIがアイドル風のソーラン節を踊ることも予定されている。普通ならば交わることのないジャンル、人が組み合わさり、観たことのないものが観られる場になっているのだ。

山崎　観てくださったお客さまが「なんじゃこりゃ」と混乱するようなもの、観て数日経ってから腑に落ちるようなものを提供したいんです。

山崎の語る今回の公演のもうひとつの見どころは、愛犬・パトラの存在。

山崎　昨年も受付でお客さまをお迎えしたり、出演もしたパトラさんが、今年も登場します。僕なんかより舞台度胸がありますよ。

2年目となる『NEO大衆アンダーグラウンド』だが、山崎はさらなる先も見据えているという。

山崎　僕の体力と気力がどこまでもつかの勝負ですが、とりあえずこの公演を10年間は続けたいと思っています。お客さまには画面越しでは観られないものを生で観ていただいて、そのエネルギーを感じていただきたい。つかさんの作品もたくさんありますから、毎年『つかこうへいスペシャル』の上演も入れたいなと思っています。

取材・文／釣木文恵
撮影／荒川 潤

＜公演情報＞
YAMAZAKI GINNOJO PRESENT
『NEO大衆アンダーグラウンド』

日程：
2025年4月8日(火) 落語DAY
2025年4月9日(水)・10日(木) つかこうへい追悼スペシャル『山崎版 熱海殺人事件』
2025年4月11日(金) 音楽DAY
2025年4月12日(土) 芸能人DAY
2025年4月13日(日) 大衆演劇DAY

会場：赤坂レッドシアター

チケット情報：
https://w.pia.jp/t/neotu/