町田啓太が考える“諦める”の意味「途中でやめたからといって、諦めたわけじゃない」
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町田啓太 (撮影/梁瀬玉実)
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「失踪したいと思ったことですか? ありますよ(笑)。え? ありませんか」
そう目元を綻ばせながら質問を投げ返す町田啓太は、いつものように謙虚で礼儀正しく、そしていつも以上にのびやかだ。4月11日スタートのドラマ9『失踪人捜索班 消えた真実』(テレ東系)に主演。『テッパチ!』以来、約3年ぶりの主演ドラマとなる。
「高校時代に寮生活を送っていたんですけど、そのときは失踪したいなと思っていましたね。実際に失踪というか脱走した人もいました(笑)。最終的には戻ってきましたけど」
仕事に対する姿勢は、常に真面目で真摯。だけど、四角四面というわけではなく、程よいユーモアと茶目っ気を持ち合わせている。その人柄もまた愛される所以だろう。
「今もたまに電波も届かないような遠い場所に行ってリフレッシュしたいな、と思うことはありますよ(笑)でも、今ここでいなくなったらご迷惑をかける人がたくさんいるだろうなって、走馬灯のようにいろんな人の顔が浮かんできてしまって。なかなか自分本位にはなれないですね(笑)」
双肩に背負った、主演という責任。最新作で演じるのは、失踪した妻の行方を追い、刑事を辞めて、民間の探偵社である失踪人捜索班を立ち上げた男・城崎達彦。今、町田啓太の新たなる挑戦が始まる。
失踪は他人事じゃないな、と考えを改めました

失踪――ある日突然、親しい人にも何も告げず、消息を断つこと。日本の年間行方不明者数は約8万人にのぼるという。
「すごい数字ですよね。日割りで計算したら1日200人以上。そんなに多いのか、と驚きました。ドラマでも描かれていますが、確証がなければ、届出を出しても警察が動いてくれないという現実もある。これだけの人がいなくなっているということは、身の回りにももしかしたらそういう人がいるのかもしれないし、失踪したいぐらいの状況に追いつめられている人もきっといる。他人事じゃないな、と考えを改めました」
残された者にとっても、失踪は死別とはまた違う深い動揺と悲しみをもたらす。
「大事な人であればあるほど、残された側も歯がゆいというか。できることと言えば、探すことだけなんだけど、どこにいるかもわからない。もしかしたら自分にも何か非があったんじゃないかと考えることもあるだろうし、気が気じゃなくなるだろうな、というのは城崎を演じていてよくわかりました」

城崎の妻は、大手通信社の契約記者。彼女の先輩記者が遺体で発見されたことから、城崎は妻も事件に巻き込まれたのではないかと疑念を持ち、真実を求めて奔走する。
「城崎は、何があっても諦めない男。しかも、彼は物事を追っていくにあたって、単にがむしゃらというより、ちゃんと知恵を絞って考えるんです。その上で、一つひとつ真実を掴んでいく。そこが魅力的だし、僕自身も力をもらえるところです」
諦めないとは、役と自身を結ぶ共通点。町田も与えられた役に血を通わせるために、全力で向き合い、出来る限りの準備をして臨む。
「現場に挑むときは、いつも考えられるだけ考えます。そのほうが自分も自信を持って楽しめるんですよね。でも、城崎は僕と違って、人の巻き込み方がすごく上手いんです。僕は学生の頃から、部長など、そういうまとめ役みたいな役職をもらっても、頑張ろうと張り切れば張り切るほど空回りするタイプだったので(笑)。城崎の上手に人に頼って、協力してもらえるところはちょっと羨ましいですね」
連ドラで求められるのは瞬発力

昨年は、大河ドラマ『光る君へ』に出演。年内には『グラスハート』『10DANCE』とNetflix作品が控えるなど役者業は好調だが、実は民放の連ドラレギュラーは『unknown』以来2年ぶり。その間、民放ドラマは単発の『THE MYSTERY DAY』と、『下剋上球児』のゲスト出演のみだった。
「『下剋上球児』は大河とスタジオが隣だったんですよ。ありがたいことに、(鈴木)亮平さんからも声をかけていただいて。『中学聖日記』でお世話になった新井(順子)さんと塚原(あゆ子)さんの作品だったのもあって、わりと気軽な感じでお邪魔しました(笑)」
ファンにとっては待望の連ドラ主演作。町田啓太自身も、久々の連ドラの空気をどこか楽しんいるようだった。
「『(撮影が)こんなスピーディーだったっけ?』という感じはありますね。ここ最近は、ゆっくりと時間をかけて撮るものが多かったので、僕もしっかり準備をして臨めたんですけど、連ドラの場合、時間との戦いになってくるので、求められるのは瞬発力。使う筋肉が違う分、大変さもありますが、だからこその面白さもあって、今はそこを楽しんでいます」

2度目のGP帯連ドラ主演ということにも、気負いはない。「やることはそんなには変わらないので、一生懸命やるだけです」と話す町田啓太は、肩の力が抜けていて、マイペースだ。
「とはいえ、主演が責任ある立場だという自覚ももちろんあります。なので、強いて大事にしていることを挙げるとすれば、コミュニケーション。城崎を見習って、なるべく人に相談してみたり。僕はみんなで面白いものをつくれたら最高だなと思うタイプなので、キャストやスタッフのみなさんに楽しんでいただける環境をつくれるように、というのは心がけています」
そう真面目にまとめてから、まぜ返すように微笑んで、こう付け加える。
「今回は特に台詞が多いんですよ。台本を開いたら、『漢字、多っ!』みたいな(笑)。そこはもうみんなでヒーヒー言いながら頑張っています」
今年で35歳。でもまだまだ小僧だなという気持ちです

今年の7月で35歳。早くも30代の折り返し地点に差しかかろうとしている。
「もうそうなんだ、というのが率直な感想ですね。ちょうどさっき、『チェリまほ(30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい)』でお世話になったプロデューサーの本間(かなみ)さんとお会いしたんですよ。『チェリまほ』をやったのが、僕が30歳のときでした。もうあれから5年になるのか、って時間の流れを感じますね」
年々、マチュアな魅力をたたえる町田啓太にとって、男の30代とはどういうものだろうか。
「若くもないし、ベテランでもないし、めちゃくちゃ中間なイメージですよね。でも、大先輩方からすれば僕なんてまだまだ。(大臣秘書・羽鳥文夫 役で出演する)光石(研)さんが芸歴45年だとおっしゃっていて。光石さんが役者を始めた頃、まだ僕は生まれてもいないわけですから。そう考えると、まだまだ小僧だなという気持ちです」

『チェリまほ』で脚光を浴び、人気は国内のみならず海外まで拡大。町田啓太の30代前半戦は、まさに怒濤のごとく時が過ぎていった。いくつものチャンスを経験に変え、より凛々しく、より柔らかくなった町田啓太が、ここにいる。
「20代の頃より少し視野を広げて物事を考えられるようになった気はします。考えられるスペースが広くなったといいますか、俯瞰して見ることが多少なりともできるようになったし、自分の考えに膨らみを持たせられるようになったのは、ひとつの成長かなと。あとは、スタッフのみなさんと話せる内容も変わってきた実感はあります。僕たちのやっていることは、明確な答えがあるものではない。だからこそ、ディスカッションが重要で。そのときにちゃんと言葉をチョイスして説明しなきゃいけないんですけど、そこは以前よりできるようになったんじゃないかと思います」
“諦めた”のではなく、この仕事を手にするために必要な糧だった

本作で町田が演じるのは、諦めない男。だが、人間は誰しもそんなに強いわけではない。人生は、いくつもの諦めによってできている。
「多くの人にとっては諦めることのほうが多いんじゃないかなと思いますよね。それこそ大谷翔平くん以外は(笑)」
町田啓太のキャリアを振り返っても、目指した道を諦める場面は何度となくあった。パイロットに憧れ、航空系の学校に進学するも視力の問題で断念。ダンサーの夢も怪我により挫折した。
「諦めるってどこかネガティブなイメージがありますよね。でも、諦めるということにも度合いがあると思っていて。この期間まで諦めずにやり切った、このレベルに到達するまで諦めずに頑張ったと、ちゃんと納得するところまでできたなら、たとえ途中でやめたとしても、それはいわゆる“諦めた”と違う解釈になるんじゃないかなと」

穏やかな口調から覗く、揺るぎない芯。町田啓太がそう言い切れるのは、きっと彼もまた紆余曲折の道のりをちゃんと自らのターニングポイントにできているからだろう。
「僕の分岐点も“諦めた”というふうに思われがちなんですけど、そこで味わった悔しい思いをバネにすることで、役者という仕事に全振りすることができた。これまでのことはすべて、この仕事を手にするために必要な糧だったんだと僕は思っています」
「諦める」の語源は「明るむ=明らかにする」ということ。やれるだけのことをやって、自分のできること/できないことを明らかにする。町田啓太もまた壁にぶち当たりながらも歩みをやめなかったから、進むべき道が明らかになった。
きっとこの先もいくつもの分岐点を曲がりながら、彼は前進し続けるだろう。町田啓太は、諦めない男だ。


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ドラマ9『失踪人捜索班 消えた真実』(テレ東系)4月11日(金)スタート
https://www.tv-tokyo.co.jp/shissounin_sousakuhan/
撮影/梁瀬玉実、取材・文/横川良明
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