ミュージカル『1789』が7年ぶりの上演! 岡宮来夢×星風まどか、手島章斗×奥田いろはゲネプロレポート
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ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』ゲネプロより(撮影:荒川潤)
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すべて見るヒットメーカーとして知られるプロデューサーのドーヴ・アチアとアルベール・コーエンにより2012年にフランスで初演、メガヒットを記録したミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』の日本版が7年ぶりに上演中だ。『エリザベート』『モーツァルト!』など海外ミュージカルを潤色・演出する手腕に定評のある小池修一郎によって、2016年に初演。たちまち大反響を呼び、2018年には再演も果たした本作が、新たなキャストを得てよみがえる。主人公のロナンには岡宮来夢と手島章斗がWキャストで、その恋人オランプには星風まどかと奥田いろは(乃木坂46)がこちらもWキャストで配された。物語のキーとなるマリー・アントワネットには、今年1月に宝塚歌劇団を退団したばかりで、これが退団後初出演となる凪七瑠海。東京・明治座で2日にわたって行われたゲネプロの様子をお届けする。

18世紀末のフランス。マリー・アントワネットら貴族たちの放埓な生活により、民衆は貧困にあえいでいた。農村に生まれた青年ロナン(岡宮/手島)は、父をペイロール(渡辺大輔)ら体制側に殺されたことをきっかけに、パリへとやってくる。偶然、デムーラン(内海啓貴)やロベスピエール(伊藤あさひ)、ダントン(伊勢大貴)ら革命派と知り合い、行動を共にし始めるロナン。一方、王太子付きの侍女・オランプ(星風/奥田)は、マリー・アントワネット(凪七)とフェルゼン伯(小南光司)の逢瀬を手引きしてパリ市中にやってくる。王弟アルトワ(高橋健介)の手下たちが王妃の不貞を暴こうとする中、居合わせたロナンはオランプと出会うが……。

ゲネプロの1日目は、岡宮ロナンと星風オランプの組み合わせだ。本作の魅力は、スピーディーなストーリー展開を支えるグルーヴ感あふれるロックナンバーの数々と、エネルギッシュな歌やダンス。同じ小池のフレンチミュージカル『ロミオ&ジュリエット』でも主演を務めた岡宮は、圧倒的な存在感と豊かな歌声、抜群の身体能力というアツい“主人公力”で物語を引っ張ってゆく。元宝塚歌劇団のトップ娘役という経歴を持つ星風も、歌に芝居にと存分に実力を発揮。可憐ながら芯の強さを感じる声音と佇まいで、ロナンと共に革命を駆け抜けるオランプを表現した。

そんな2人だけに、デュエット曲「この愛の先に」は圧巻。敵同士という立場ながらも、「傷つけ合うより愛し合いたい」と叫ぶように歌うロナンとオランプの心情が胸に迫った。

凪七演じるマリー・アントワネットは長身にほっそりとした首筋が美しく、複数回の衣裳替えで着る豪奢なドレスがどれもよく似合う。フェルゼンへの恋心と夫ルイ16世や息子への想い、オランプに対する温かさまで丁寧に見せる。退団後の初出演ということで、ゲネプロの冒頭では歌の高音に慎重さがうかがえたものの、すぐに安定感を取り戻して伸びやかな歌声で魅せた。

続いてゲネプロの2日目は、手島ロナンと奥田オランプのコンビ。これが初の主演となる手島はスラリとした長身に若者らしいややぶっきらぼうな表情と、まさに等身大の青年像。そんな彼が革命派の仲間やオランプと出会ったことで笑顔を見せ、次第に成長してゆくさまに引き込まれる。
オランプ役の奥田も、ミュージカルは昨年の『ロミオ&ジュリエット』に続き2本目。瑞々しい歌声と可憐な佇まいは「清らか」と称されるオランプにピッタリで、こちらも等身大。“純粋さ”で呼応するような手島ロナンと奥田オランプだからこそ、歴史のうねりに翻弄されるさまがリアルに映った。
もちろん、公演期間中は岡宮ロナンと奥田オランプ、手島ロナンと星風オランプの組合せもあり。こちらの化学反応にも期待したい。

革命派のデムーラン役・内海とロベスピエール役・伊藤あさひは、プチブルジョワ育ちの“お坊ちゃん”で名門校出身らしい繊細さと、ロナンら民衆と共に戦う誠実さを共に醸し出して好演。憎めないキャラクターのダントン役・伊勢を中心とした群舞「パレロワイヤル」は、パリ本来の華やかさや楽しさを伝えるシーン。この場面があるからこそ、後半の革命の場面との対比が鮮烈だ。
キャストの意気込みを感じるコメントも到着!
フレッシュなメインキャストと、抑制の効いた脇のキャストたちのバランスも絶妙だ。耽美的な衣裳がトリックスターの趣きのアルトワ役・高橋や、ロナンに立ちはだかるペイロール役・渡辺といった色濃い敵役の存在が物語に厚みを加える。王妃たちの贅沢を諫める国務大臣ネッケルの増澤ノゾム、自身の凡庸さに諦観を抱きつつ王の道を模索するルイ16世の山田定世は、さすがの巧さ。アルトワの手下であるラマールの俵和也とロワゼルの宮下雄也、トゥルヌマンの須田遼太郎もよくある“お笑い3人組”に留まらず、随所の小ネタにサジ加減を効かせて本筋をアシストする。




ゲネプロと前後して、メインキャスト5名からコメントも到着! 岡宮は「フランス革命という今の僕たちにも大きな影響を及ぼした出来事と、その中で巻き起こる恋の物語を、演劇として皆様に届ける上でどんなメッセージが届くのか、楽しみでなりません。先輩方から受け継いだこの作品を、後世にも絶対に繋いでいきたいです」と意気込む。手島も「『自由・平等・博愛』というテーマは、僕自身もとても大切にしていることです。ご来場くださる皆様にとって、今という時代がより特別なものになり、そばにいる大切な方の存在をより一層愛おしく感じていただけるよう、毎公演、命を燃やして舞台に立ちます」と想いを語った。

「壮大な歴史の中で生きた彼女の情熱を音楽に乗せ、観客の皆様に強い感動とエネルギーをお届けできるよう、一生懸命務めます!」という星風、「キャッチ―な音楽、華やかな衣裳やセットなど、目でも耳でも楽しめる作品なので、ぜひ全身でこの1789 の世界を感じていただけたら嬉しいです!」と語る奥田など、演者自身も本作の魅力にどっぷりと浸っている様子。「素晴らしい数々の楽曲に胸が熱くなり、素敵なキャストの皆様からたくさんの刺激、パワーをいただきき、毎日心震わせながらお稽古してまいりました」という凪七の言葉からも、抜群のチームワークがうかがえる。

今回は舞台と客席が近い明治座での上演ということで、迫力の群舞やダイナミックな舞台装置がより間近に感じられるのもうれしい。“自由とは、平等とは”という普遍的なテーマを改めて問いかけてくる本作。世界中が大きなうねりを迎えている今、上演されるその意味を、ぜひ劇場で感じてほしい。
取材・文:藤野さくら
<公演情報>
ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』
潤色・演出:小池修一郎(宝塚歌劇団)
出演:
岡宮来夢/手島章斗(Wキャスト)
星風まどか/奥田いろは(Wキャスト)
凪七瑠海
内海啓貴 伊藤あさひ 伊勢大貴 藤森蓮華 俵和也 高橋健介 小南光司 渡辺大輔 他
【東京公演】
日程:2025年4月8日(火)~4月29日(火・祝)
会場:明治座
【大阪公演】
日程:2025年5月8日(木)~5月16日(金)
会場:新歌舞伎座
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/musical1789/
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