なぜお菓子を映画に? 『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』企画者が語る。映画化のきっかけは……
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すべて見る長年にわたって愛され続けるギンビスの大人気お菓子「たべっ子どうぶつ」が映画化され、5月1日(木)から公開になる。「たべっ子どうぶつ」は日本で暮らしていれば知らない者はいない人気キャラクターだが、映像化されるのは意外にも初めて。だからこそギンビス社も、映画の作り手たちも先入観をすべて取り払って、“お菓子に夢を!”を胸に映画化に挑んだようだ。本作で企画とプロデュースを手がけた須藤孝太郎氏はこう語る。
「映画を観て最後は笑顔になってもらいたい」
「たべっ子どうぶつ」はギンビスが発売している人気お菓子。愛らしい動物のシルエットのビスケットに英単語が記されている。おいしくて、楽しく英語を学べるロングセラー商品だ。ラインナップも豊富で、グッズも大人気。しかし、1978年の発売以来、映像化されたことはなかった。
「映画化のきっかけは5年ぐらい前。コンビニの前に偶然にギンビスさんの営業車が止まっているのを見た時でした」
と須藤氏は振り返る。
「営業車に“たべっ子どうぶつ”のキャラクターたちがプリントされているのを目にして、懐かしいなぁと思いながら、ふと、お菓子のキャラクターをアニメ化すると面白いかもしれない、と思ったんですよ。普通は人気の漫画をアニメーションにするか、オリジナル作品ですよね。でも、お菓子のパッケージのキャラクターをアニメ化するのは面白いかもしれない。そんな思いつきで、ギンビスさんに御提案したんです」

ポイントは思いついたのが、“たべっ子どうぶつ”の映画化ではなく“お菓子のキャラクター”の映画化だった、ということだ。
「そうですね。もちろん“たべっ子どうぶつ”だけのアニメ化も可能だったと思うんですけど、それだと単なるたべっ子どうぶつのプロモーション映像になっちゃいますよね。もちろん、“たべっ子どうぶつ”が主役ですし、活躍もしますし、タイトルにもなっているんですけど、この映画を観た人がお菓子を食べて笑顔になってくれるような映画をつくりたい、そう思っていました。だから、本作は広い意味で“お菓子の映画”であると思ってもらって問題ありません」
お菓子を食べて笑顔にならない人はいない。そんな想いを映画にする。大胆だが素晴らしいプロジェクトだ。しかし、冷静に考えると、ギンビス社がこの企画にOKを出すかはわからない。業界なんてどうでもいいから、自社商品の販売促進映像をつくってほしいと思う企業が存在しても不思議ではないからだ。しかし、ギンビス社は違った。会社の経営理念が
“お菓子に夢を! お菓子を通して世界平和に貢献する”
である。それも画に描いた餅ではない。本気でそう思ってお菓子をつくり続けている会社なのだ。

「ギンビスさんは積極的にお菓子業界全体を盛り上げていきたいとおっしゃっていて、うちだけが良ければいい、みたいな想いがまったくないんですよ。この映画の中には他のお菓子のキャラクターも出てくるんですけど、普通の会社だったら嫌がると思うんです。でも、ギンビスさんは企業理念が本当にしっかりとしていますから、お菓子を通して世界平和に貢献したい、その想いが強いんです。
だから本作の脚本は3年ぐらい時間をかけたんですけど、ギンビスの宮本(周治)社長からは、細かなセリフの言い回しや設定についての指摘はなくて、“私たちはこのような企業理念と想いでやっています”というお話がほとんどでした。
ですから、ここを修正してください、変えてください、ではなくて“観た人が笑顔になれる映画をつくってください”とか“お菓子を食べることで夢を与えられる映画をお願いします”というリクエストなんです。
すごいありがたかったんですけど、実は“ここを修正してください”と言われる方が実は楽ですよね(笑)。でも、ハードルの高いリクエストをいただいて、どうやったら実現できるか考えて、結果的にすべてうまく取り入れることができたと思っています」
「ギンビスさんが語ってきた夢が映画を通じて伝わってほしい」

映画の舞台は、おかしと人間が仲良く暮らすスイーツランド。そこでは世界的アイドルグループ「たべっ子どうぶつ」が人気を博している。しかし、グループの次世代エース、ぺがさすちゃんが、この世のすべてのおかしを排除して世界征服を企む最凶の“わたあめ軍団”によって捕らわれてしまった。たべっ子どうぶつたちは、ぺがさすちゃんの救出を目指すが、モフモフカワイイだけのメンバーたちは武器も、戦闘能力も、救出策も、意気地もない。どう考えても成功しない“ぺがさすちゃん救出ミッション”に乗り出したたべっ子どうぶつたちが見つけた“大逆転の秘策”とは?
通常の映画であれば、作り手はどんなキャラクターを描くか、どんなストーリーを語るか、つまり“画面の中”のことに頭を悩ませる。しかし、本作は“画面の外”の出来事が重要だ。映画を観て、お菓子をもっと好きになってもらいたい、お菓子を食べてみんなが仲良くなってほしい。そんな場面を生み出す映画を目指したのが本作だ。
「映画を観終わった後に、みんなとあのシーンが良かったね、みたいな感じで語り合えるような映画になったら最高だよね、というのは監督ともずっと話し合ったことです」

とは言え、本作は小さな子どもだけが楽しむ映画ではない。須藤氏はあの『ポプテピピック』を手がけたプロデューサー。本作も表現の自由度は高く、展開もテンポも早い。
「確かにプロデュースや音楽とか“ポプテ”のメンバーではありますね。それに竹清仁監督も、脚本の池田(テツヒロ)さんも僕が深夜にやっていたアニメーションのような作品が好きでずっとやりたかった、と言ってくれたので、本作は好きな人だけが観る深夜のアニメとは正反対の作品ではあるんですけど、スタッフそれぞれが持ち寄った面白いことを否定せずにどんどんアイデアとして入れていこうと思ってつくりました。それに子どもって大人が思っているよりも理解力が高いですし、きっとわかってくれる、という信頼はあります」
本作は、その成り立ちも少し風変わりなら、映画の創作過程も少し変わっている。お菓子のキャラクターをモチーフに、みんながお菓子を食べながら語り合えるような映画をつくる。最終的な目標は“お菓子を通して世界平和に貢献する”こと。彼らはそんな想いを最後まで貫いた。
「どんな作品でも必ず制作する過程でトラブルが起こったり、ハレーションが起こったりするんですけど、この映画ではそういうことがあまり起こらなかったんですよ。誰も大きなトラブルを起こすことなく、映画に関わった全員が“とにかく良い映画にしましょう”という想いだけで最後まで突っ走ることができた。“たべっ子どうぶつ”という平和なコンテンツだからこうなったのか、そういう人たちが集まったからなのかはわからないですけど、改めてすごいことだと思っています。
通常の出版社だと、自社作品の映像化の経験があるので、いろんな意味でルールもあるし、経験値もあるんですけど、ギンビスさんの場合は初めての映像化だったので、予備知識や経験がない分、映像化についてすごくフラットに考えてくださった。本当に健全な原作元でした。
ある場面でお菓子の衝撃的なシーンが出てくるんですけど、通常の会社だったら絶対に許されないと思うんですよ。自社のロングセラー商品が映画の中で扱われるわけですから。でもギンビスさんは“そのシーンにちゃんとメッセージ性があるのであれば良いと思います”と言ってくれる。すごくフラットに判断してくれるんです。
だから、説教っぽい感じは嫌なんですけど、映画を観てもらって最後は笑顔になってもらいたい、お菓子をたべて世界を平和にしましょう、ギンビスさんが語ってきた夢が映画を通じて伝わってほしいです」

『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』
5月1日(木) 公開
(C)ギンビス (C)劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
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