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映画『ミッキー17』ポン・ジュノ×阪本順治の特別対談映像公開 ネタバレありで作品に込めたメッセージに迫る

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映画『ミッキー17』で来日したポン・ジュノ監督と、映画監督・脚本家の阪本順治による特別対談映像が公開された。

ふたりの出会いは2000年。第48回サン・セバスチャン国際映画祭コンペ部門に『顔』で参加した阪本は、ポンの初長編作品『吠える犬は噛まない』を観て「これがデビュー作かよ、まいったな。オレはイチから出直しだ!」とコメントを寄せた。それから約25年、映画を作り続けるふたりは兄弟のような関係で結ばれているという。

『ミッキー17』を「絵本のような映画」だと語る阪本は、ポンについて「普段は非常に賑やかでユーモラスな人なのですが、実は自分がやりたいことを徹底してやるために自分を追い込んでいくというか、その葛藤の抱え方というか。時には自分を傷つけるくらいに背負ってしまうという一面も知っているので。観終わって楽しかった一方で、どれだけの苦労をしたのかと思うと、親心じゃないけれど……ちょっと泣けてきちゃった」と家族のような気持ちでエンドロールを見つめていたと明かした。

「こうしてまた再会できて本当に嬉しいです。私は作品が日本で公開されるたびに、お兄さんが私の新作をどんなふうに観てくれるのかと想像しながら緊張もしているんです。キンチョー(緊張)です」とポンが笑顔を見せると、阪本は「同じことを返します」と応じ、「僕の映画を観て、時には長文で感想を送ってくれたりして。物語を深く読んでもらえるところ、そして日本の監督と違い別の視点から観てもらえることは嬉しいなと思っています」と日々のやりとりに感謝を述べた。

対談はリラックスした雰囲気で始まり、『ミッキー17』のネタバレも含め、作品へ込めたメッセージについて語られた。阪本は「ポン監督の視点はいつも社会的地位のない名もなき人を主人公にして、けれどもめげずに生きていく、そういう骨子は何も変わらないと思いました。退廃した世界で何度も死んでは生き返るという運命を背負った主人公を軽妙にかわいらしいタッチで描いた、絵本のような映画だったなと思います」と、ポンの一貫したテーマを受け止めた。

続けて、ミッキーが乗り込む宇宙船の美術や造形、劇中に登場するクリーパーの姿を意識しながら、「日本人は『ミッキー17』を一番楽しめる国民性を持っていると思っていて、韓国でヒットしているのは聞いていますが、やはり日本人に非常にふさわしい娯楽映画だと思います。なぜかというと僕らは小さいころから漫画などたくさんのフィクションに馴染んできています。手塚治虫、大友克洋、つげ義春、藤子不二雄。アンダーグラウンドからメジャーのおとぎ話に馴染んできた僕らだからこそ、この映画は非常に日本人に向いているのではないかと思っています」と指摘すると、幼い頃から日本のアニメや漫画で育ったというポンが大きくうなづいた。

『ミッキー17』に大きな刺激を受けたという阪本は、「近未来においてクローンを作ることは倫理的に許されない。でもミッキーは、宇宙の危ない仕事に従事するたったひとりだったらいいんじゃないか……という判断のもとに生まれたキャラクターですよね? そう考えるとゾッとするのは、たったひとりならいいんじゃないかと皆が思ってしまったということ。だから“死ぬってどんな気分?”と聞いてくる。誰かが犠牲になるしかないのだから仕方がないというようなものの考え方は、昨今と地続きだと思っています。面白おかしくだけど、そういうことも描いていたのだなと思いました」と、ポンが描いたテーマの核心に迫る。

阪本の鋭い指摘に「私もそれは重要に考えていた部分です」と頬をさすったポンは、「共同体のすべての人たちが危険で汚くて死ななければならない仕事をひとりに押し付ける。“君は死んでも仕方がない、契約書にサインをしたのだから”“それが君の仕事なのだから”と、自分たちの責任や自責の念から逃れようとします」と、契約書を楯に理不尽な任務をミッキーに押しつける権力者たちの姿を描いたという。

続けて、「反対にクリーパー(作品に登場するクリーチャー)たちは、彼らの子ども1匹が死に面したとき、その1匹を助けるために共同体全体が動き雪原に飛び出してきます」と手振りを交えて熱く語り、「ふたつの世界を対比させたかった。繰り返しひとりの人間を犠牲に死なせて自分たちは安全な場所にいる人間の世界と、1匹を助けようとするクリーパーたちの姿を対比させながら、どちらが他者に対するリスペクトを持つ高貴な存在なのかというのを見せたかったんです」と、愚かな指導者と崇高な精神と知性を持ったクリーパーとの対比に特別な演出意図を込めたことを明かしている。

阪本は「ポン監督の映画の特徴は善悪を単純化しないことや、名もなき人を主人公に置くこと」とその魅力を熱弁。さらに、「今回も非常に楽しんで観たけれど、終わってから受け取るものは本当の意味でのハッピーエンドではなかったと思いますし、考えさせられる読後感は変わらないと感じました」と、ポンが描き続けてきたテーマにブレはないと指摘する。

その言葉を受けたポンは、「ミッキーはずっと死を繰り返し、死ぬことが職業でした。悲劇といえば主人公が死ぬことだと思いますが、死なせて終わることにあまり意味がないように思えました。それに彼は善良な青年なので、そんな彼が破壊されるところも見たくなかった。本作の結末ではそういう意味を持たせたかったのです」と、『ミッキー17』が訴えかける「生きることの意味」について言及し対談を結んだ。

映画『ミッキー17』ポン・ジュノ×阪本順治 対談特別映像

<作品情報>
『ミッキー17』

公開中

公式サイト:
https://wwws.warnerbros.co.jp/mickey17/

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