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カネコアヤノ率いるバンド・kanekoayano、鉄壁のバンドアンサンブルを日比谷の夜空に解き放つ『野音ワンマンショー 2025』【オフィシャルレポート】

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kanekoayano『野音ワンマンショー 2025』 4月12日 東京・日比谷野外音楽堂公演  Photo:野田祐一郎

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シンガーソングライターのカネコアヤノ率いるバンド・kanekoayanoのワンマンライブ『野音ワンマンショー 2025』が東京と大阪にて開催された。本稿は4月12日、日比谷野外大音楽堂のライブレポートである。

カネコがソロ名義の「カネコアヤノ」とバンド名義の「kanekoayano」で音楽活動を行うことを発表したのは昨年8月3日、奇しくも前回の『野音ワンマンショー 2024』東京公演のときだった。すべての演奏を終え、去り際に「私からお知らせがあるんですけど、バンドになりました」と告げられたときのことは、今も鮮明に覚えている。それ以前からバンドセットの彼女のライブを観るたび、「これはもう『カネコアヤノ』と言う名のバンドだよな」と思っていたから、なんら驚きもしなかったし、むしろ自然ななりゆきだと感じていた。

あれからおよそ8カ月。これで4回目の『野音ワンマンショー』だ。この日はバンドメンバーであるカネコ(vo/g)、林宏敏(g)、takuyaiizuka(b)の3人に、SEI NAGAHATA(ds)と宮坂遼太郎(per)を加えた5人編成でのライブ。NAGAHATAは一時期体調を崩し、直近のライブには不参加だったが(残りのメンバーで急遽行われたLANDOKMAIとの対バンイベントも、それはそれで貴重なパフォーマンスだった)、この日は無事に復帰。新機軸ともいえる新曲を織り交ぜながら、鉄壁のバンドアンサンブルを日比谷の夜空に解き放っていた。

「野音日和」と言いたくなるような青空が広がる日比谷公園。とはいえ少し陽が傾くと、まだまだ肌寒さを感じる季節だ。フリースのジャケットを着込み、会場の隅から隅までびっしりと埋め尽くすオーディエンスとともに今か今かとその登場を待ち侘びていると、まるでふらりとリハスタにでも入ってきたかのように、林、iizuka、NAGAHATA、そして宮坂がステージの袖から姿を現す。おもむろにセッティングするなかカネコが登場し、まずは「やさしいギター」でこの日のライブをスタートした。タンバリンやコンガを交えたグルーヴィーな16ビートに、林のワウギターとカネコの軽やかなカッティングが有機的に絡み合う。続く「春」は、2ビートを基調とした軽快なオルタナフォークロック。抑揚を抑えた声で<もうすぐ冬は終わるんだ>と歌う、この季節にぴったりの楽曲だ。

ヒネリの効いたコードを、カネコがつんのめるようにかき鳴らすのは「爛漫」。シンプルな8ビートから徐々にカオティックな展開を見せるNAGAHATAのドラム、アームを駆使した獣の咆哮のような林のギターなど聴きどころ満載のこの曲は、後半で押し寄せるノイズギターの壁に圧倒される。カネコのギター弾き語りから始まった「セゾン」は、どこか中期ビートルズを彷彿とさせるヘヴィなミドルチューン。林は裏打ちのリズムを鋭利に刻んだかと思えば、トレモロをたっぷりと効かせた怪しげなフレーズをメロディに絡ませる。さらに宮坂のコンガがこの曲に新たな躍動感を加えていたのが印象的だった。

間髪入れず繰り出した「わたしたちへ」は、高密度な轟音ギターが野音に降り注ぐイントロがオーディエンスの意識を呑み込んでいく。その後、静と動を行き来するダイナミックなバンドアンサンブルをバックに、ファルセットを交えながら<変わりたい変われない/変わりたい代わりがいない>と歌うカネコのボーカル、そしてそれを包み込む美しいコーラスワークが胸を打つ。終盤、メタリックに歪んだギターのうねりが野音を包み込み、林とカネコが髪を振り乱しながら呼応する様は、まるで雷鳴の中で交差する稲妻のようだった。

この日最初のピークを迎えたあとは、ひと息ついてドラムのカウントから「気分」。カネコがかき鳴らす涼やかなギター、そこに絡みつく林のスライドギターが織りなすアンサンブルにうっとりとしているのも束の間、4拍子から3拍子へと何度もリズムが切り替わり、テンポも速くなったり遅くなったりを繰り返す。凄まじいシャウトから儚げなファルセットまで、感情の振り幅を余すところなく表現しながら<気分はいつも上がったり下がったり>と歌うカネコの「気分」がそのまま投影されたようなアンサンブルに、気付けば自分の呼吸まで同調しているような感覚を覚えた。

ここから「タオルケットは穏やかな」へと繋げる展開は、前回の野音とオーバーラップする。iizukaの硬質なベースサウンドが心をざわざわと掻き立て、<いいんだよ分からないまま/曖昧な愛>と振り絞るように歌うカネコの声が、心のひだにしみわたる。それにしても、シンプルなようで練り上げられた、それでいてインプロビゼーションの余白をも残すバンドアンサンブルは、聴けば聴くほど味わいを増す。単純なセクションの繰り返しは一切なく、例えば最初のAメロとサビ明けのAメロでは楽器の重なり方、音の響かせ方が少し変わっていたりするから油断できない。

あたりはすっかり暗くなり、ここから我々は一気にディープなkanekoayanoワールドへ。<悲しみを消すための 傷が絶えない>と歌う「こんな日に限って」は、中盤のブレイクを思い切り引き延ばし、スペイシーなダブ処理を施したギターやドラムが縦横無尽に飛び交うカオスが待ち受ける。ヒプノティックに繰り返されるベースがまるでマントラのように響き渡り、野音が異空間へとワープしたかと思いきや、まるで夢から覚めたように再び歌へと戻ると、会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。

さらに「ラッキー」では照明をぐっと落とし、ほぼ暗闇の中でドープなサイケブルースが展開される。視界が制限されることによって、5人の放つ音一つひとつがよりくっきりと浮かび上がってくるようだ。個人的に、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのサードアルバムが持つ「静謐さ」を彷彿とさせる「もしも」も、音量を抑えることによって、まるでバンドそのものの「息づかい」さえ聞こえてくるかのよう。さらに、月明かりに照らされた水面のようなギターのアルペジオが心地よい「月明かり」を経て、淡い夢のような色彩を帯びた新曲「石と蝶」、そしてオーセンティックなロッカバラードの「さびしくない」と「グレープフルーツ」を繋げ、会場の熱をじんわりと上げていく。

さらに「カーステレオから」へとなだれ込むと、カネコがサビを歌い終わるたびに客席のあちこちから歓声が上がる。そして最後は新曲「難しい」。真っ赤な照明の下、まるでピクシーズやソニック・ユースのようなソリッドなバンドサウンドを放ち、この日のライブに幕を下ろした。

新曲「石と蝶」「難しい」を聴く限り、kanekoayanoは「バンド」としての必然性をさらに深く感じながら音を鳴らしているように思う。さらに4月24日(木)21時からは『YouTube Live Performance 2025』を配信することも発表されている。そこでは一体どのような演奏を聞かせてくれるのか、何か新たな発表があるのか。今後も彼らの動向から目が離せない。

Text:黒田隆憲 Photo:野田祐一郎

<公演情報>
kanekoayano『野音ワンマンショー 2025』
4月12日(土) 東京・日比谷野外音楽堂公演

<配信情報>
『kanekoayano 野音ワンマンショー 2025』
見逃し配信:2025年4月19日(土)12:00~2025年4月25日(金)23:59
https://t.unext.jp/r/kanekoayano

『kanekoayano YouTube Live Performance 2025』
4月24日(木)21:00〜
https://www.youtube.com/channel/UC3X9hMrPPQcJB8VG8AMGo_A

カネコアヤノ オフィシャルサイト
http://kanekoayano.net/

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