『橋口五葉の世界』府中市美術館で 夏目漱石など五葉が手掛けた書籍の装幀を中心に紹介
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『吾輩ハ猫デアル』上・中・下編(夏目漱石著) 1905~07年 個人蔵 撮影:上野則宏
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すべて見る美人画で知られる明治〜大正期の画家、橋口五葉(はしぐち ごよう)は、日本の近代文学を美しい装幀で彩った、現代でいえばブックデザイナーの先駆けとも評される。その仕事を紹介する『橋口五葉のデザイン世界』が、5月25日(日)〜7月13日(日)、府中市美術館で開催される。
橋口五葉は1881(明治14)年鹿児島市生まれ。1899(明治32)年に上京し、日本画家・橋本雅邦に入門するも、黒田清輝のすすめで洋画の道へ。白馬会洋画研究所を経て、翌年、東京美術学校に入学。夏目漱石と知り合い、『吾輩ハ猫デアル』の装幀を手がけた。その洒脱な意匠を漱石が気に入り、その後も漱石の著作の装幀を複数担っている。この展覧会では、そうした漱石との交流に焦点を当て、表紙に漆塗りを施した『草合』やスエードを用いた『行人』などを紹介する。
さらに、その美しさが評判を呼び、泉鏡花の著作など多数の近代文学の装幀を担っている。なかでもツルゲーネフ著、長谷川二葉亭訳『浮草』は、表紙や見返しだけでなく本文にまで装飾が施されている。

また、油彩で描いた衝立形式の《孔雀と印度女》や装飾的な花鳥イメージに満ちた《黄薔薇》などの絵画作品から、日本画と洋画の特色を吸収したうえでつくりあげた新たな表現を紹介。石版を35度刷り重ねたというポスター《此美人》など、日本のグラフィックデザインの原点の一つともいえる作風も見どころだ。
浮世絵の研究を重ね、女性をモチーフとした「新版画」にも取り組んだ。ちなみに、かのスティーブ・ジョブスも愛好したと言われている。

今見ても新鮮な色彩や繊細な線。親しみがあるとともに、品の良い作風。装飾性を取り込んだ五葉の世界を楽しみたい。
<開催概要>
『橋口五葉の世界』
会期:2025年5月25日(日)〜7月13日(日) ※会期中展示替えあり
会場:府中市美術館
時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜
料金:一般800円、大高400円、中小200円
公式サイト:
https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/tenrankai/kikakutenkaisai/2025_Hashiguchi_goyo.html
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