新人時代の向井理が味わった悔しさと反骨精神「目の前でプロフィールを捨てられたこともある」
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向井理 (撮影:映美)
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すべて見る「その衣装、暑くないですか」と尋ねると、「暑いです」と苦笑い。でも、大変そうなのに、向井理はなんだかとっても幸せそうだった。
「これだけのアーティストが一つの作品に集まることはまずないですし。プロモーションも含めて、足かけ3年間。その間に他の仕事もやっていましたが、どこかで『パリピ孔明』という作品に戻る意識は常に持っていた気がします。大変だったけど、その分、思い入れがある。こんなお祭りみたいな作品に呼んでもらえて、本当に幸せでした」
向井理の代表作の一つになったと言っていいだろう。『パリピ孔明』が映画になる。4月25日(金) 公開の『パリピ孔明 THE MOVIE』は、熱いドラマと珠玉の音楽が一体化した最高のエンターテイメントムービーだ。総勢50名以上のミュージシャン&ダンサーが集結し、映画完全オリジナルストーリーを繰り広げる。
巨大なスクリーンで、果たしてどんな孔明の秘策が飛び出すだろうか。
孔明の秘訣は、自分から笑いをとりにいかない

ドラマ『パリピ孔明』が放送されたのは、2023年の秋。あの向井理が、渋谷に転生した天才軍師・諸葛孔明を演じる。その驚きは、瞬く間に日本列島を駆け抜けた。
「こういうビジュアルなので、やっぱりインパクトはありますよね。何かしら反響はあるだろうと思っていましたけど、放送が始まってからもお褒めいただくことが多くて。応援していただけることがありがたかったですし、いくつか意識していたことがちゃんとうまくいったのかなと安心するものがありました」
見た目だけでも抜群のインパクトを誇る孔明。だからこそ、意識したことがあった。
「監督やプロデューサーとも、『自分から笑いをとりにいかないように』ということは話していました。シュールと言っていいのかわからないですけど、孔明の存在に対して周りが違和感を覚えている状態が、この作品の面白さ。その空気感が伝われば、自然と笑いになる。コントではなく、コメディなので。自分から笑わせるのではなく、周りのリアクションで笑いが生まれるようにというのは心がけていましたね」

本作に限らず、ここ数年、コメディとの相性の良さが光っている。『婚活探偵』や『先生のおとりよせ』といった主演作から、『ウェディング・ハイ』の飛び道具的な役どころまで、向井理からにじみ出る何とも言えないおかしみに、思わずくすりと笑いが漏れる。
「一口にコメディと言っても作品によって演じ方は様々。たとえば『先生〜』はわりと自分からブンブン振り回す役だったので、こちらも攻撃力がいるけれど、逆に『婚活探偵』は自分から笑いをとりにいくと絶対にスベる。結局いちばん大事なのは、台本に書かれたキャラクターをどうやって表現するか。僕の考えとしては、基本的に台本に忠実に。その上で、ちょっとしたところで自分らしさを出していけたらという感じです」
作品を重ねるごとに、新たな魅力を花開かせる向井理。キャリアで大事にしていることは、「振り幅の広さ」だ。
「コメディもやればシリアスもやる。いろんな幅を持っているほうが、観てくださる方の間でギャップが生まれると思うんです。たとえば、こんなふうに孔明をやったあとに『ライオンの隠れ家』のような役をやると、また全然違う空気になる。“的を絞らせない”というのは、これからも自分の中で大事にしていきたいことの一つです」
英子に重ねる、鳴かず飛ばずだった新人時代

劇場版の見どころは、史上最大の音楽バトルフェス<MUSIC BATTLE AWARDS 2025>。日本音楽界を代表する三大レーベルが覇を争う姿は、まさに『三国志』だ。
「いろんなジャンルの音楽とアーティストが集まって、歌やダンスといったパフォーマンスを見せる。まさにエンターテインメントの極地だと思います。これが実現できたのも、監督やプロデューサーが心から音楽を愛している人たちだから。みなさんの音楽愛が原動力になっているし、それが作品にもちゃんと出ている。音にもすごくこだわっているので、音響設備の整った環境で観ていただけたら、きっと本当にフェスに来たような、体感型の映画の面白さを感じていただけるんじゃないかと思います」
&TEAM、岩田剛典ら実在のアーティストも実名で参加。中でも向井が選ぶイチオシのアーティストは……。
「みなさん素晴らしいので選べないですけど、やっぱり連ドラから一緒にやってきている分、(月見)英子に肩入れしちゃうところはありますね。英子の良さはちょっとずつ成長するところ。人ってそんなにすぐに成長するものではないじゃないですか。最初はなんでも孔明に頼っていた英子が、自分の足で一歩ずつ進んでいるのを見ると勇気づけられるというか。今回の映画でも英子が一歩踏み出す姿が描かれているのですが、そこは孔明としても、僕としても胸が熱くなりました」
向井は言う、「『パリピ孔明』は英子の物語でもある」と。歌手になるため上京するも、チャンスを掴めず挫折。そこからライブハウス「BBラウンジ」のオーナー・小林に拾われ、孔明に才能を見出され、夢への階段を一段一段のぼる英子の姿が、連ドラから丁寧に描かれてきた。何者でもないところから這い上がる奮闘ぶりに、向井自身も自らの新人時代を思い起こすものはあったという。
「僕にも鳴かず飛ばずと言いますか、何をやってもうまくいかない時期はありました。その間はずっとバイトをしながらこの仕事をやっていて。英子もバイトをしながら歌手として活動していますけど、そういう境遇はリンクするし、共感するところはありますね」
暗い20代を支えたのは、見返したいという思い

2006年に芸能界入り。当初は、オーディションに落ちることも数え切れないほどあった。
「最初の頃はほとんど仕事がなくて。芸能界に入っても、みんながみんなすぐに売れるわけではないんだなということを身をもって実感させられました。やっと仕事が入っても、現場では監督に怒鳴られることばっかりで、たくさん悔しい思いをしてきた。20代の頃は全然暗かったですね」
光の見えない道の上で、向井理を前へ前へと突き動かしたものはなんだったのだろうか。
「見返したいという思いですね。プロフィールを持ってテレビ局に挨拶回りに行くんですけど、目の前でプロデューサーの方からプロフィールをゴミ箱に捨てられたことがあって。そのときに思ったんですよ、『いつかこのプロデューサーと仕事したいな』って。そうした反骨精神が支えになりました」

明治大学農学部生命科学科卒。俳優になる前はバーデンターだったという経歴は、よく知られている通り。芝居のことなんて何もわからなかった20代の青年は、手がかりを探るように研究と実験を繰り返した。
「20代後半の頃は本を読んだりして、ずっと芝居の勉強をしていた気がします。よくやったのが人間観察。たとえば、向こうから歩いてくる人を見て、その人のことなんて何も知らないのに、きっとエリートサラリーマンだなと思うときがあるんです。それはなぜなのか。仕草なのか、歩き方なのか、携帯のかけ方なのか、何かしらエリートっぽいと思わせるところがその人にあるからで。いつか自分にエリートサラリーマンの役が来たときに、そこをちゃんと真似できるよう、1日暇な日があれば街に出て、ひたすらいろんな人を見たり。あとは、谷川俊太郎さんの詩をおばあちゃんの気持ちで読んでみるとか、いろんな遊びを交えながら勉強していました」

手探りで始めた役者業も、気づけばもうすぐ20年になる。正解のわからない芝居というものに、今も向井理は向き合い続けている。
「中でも、コロナ禍は芝居について考え直すきっかけになりました。そのときに読んだのが、ステラ・アドラーの『魂の演技レッスン22 輝く俳優になりなさい!』。ずっと前に買ったものを改めて引っ張り出したんですけど、買った当時には気づかなかったことが、読んでいて自然とわかるなと思えたりして。そこからお芝居に対する意識がまた変わりました」
今、向井理が感じているのが「インプットの重要性」だという。
「一時期、ずっと仕事が続いて、アウトプットしかしていない期間があって。でもやっぱり僕たちの仕事は自分の内にあるものを表現することだから、そこが枯渇しちゃいけない。どんなに忙しくてもちゃんとインプットをしなきゃいけないなって考えるようになりました。今でもちょっと時間が空いたら、映画や舞台を必ず観に行くようにしています。あとは、ドキュメンタリーを見ることが多いですね。さっきの振り幅の話じゃないですけど、いろんな引き出しがあったほうがいい。ニュースやドキュメンタリーを見ることが今はいちばんのお芝居の勉強になっています」
年齢とともに向井理の輝きが増しているのは、そうした内面の充実が灯火となっているのかもしれない。ちなみに、かつてプロフィールを捨てたプロデューサーと仕事ができたのか聞いてみると……。
「しました(笑)。しかも、あちらからのオファーだったんですよ。たぶんその方はプロフィールを捨てたこと自体覚えていないと思いますけど。見返せたな、と思いました(笑)」
人が見ていなくても、自分の努力は自分が見ている

英子の人生は、孔明との出会いによって一変した。向井理を今この場所へ導いてくれた人は誰だろうか。
「僕は人生って何か一つの出来事や出会いでカクッと道が曲がるようなことはないんじゃないかと考えていて。人は、いろんな出会いの中で少しずつ変化していく。僕自身、監督だったりプロデューサーだったり、もちろん近くにいるマネージャーだったり、いろんな人との出会いがあって今がある。だから、特定のこの人というのはいないかもしれない」
周囲は安易にターニングポイントを求めて他人のストーリーを消費してしまうけど、人生はそんなにわかりやすいものではない。簡単に要約できないから、生きるのは面白いのだ。
「何事も積み重ねだと思うんです。僕の場合も、よく朝ドラ(連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』)がターニングポイントだったと言っていただくことがあって。もちろん影響は大きかったですけど、同時期に民放のドラマもやっていましたし、朝ドラだけではあんなふうになっていなかったと思うんですね。いろんな作品に出ていたから、いろんな視聴者層の方に知っていただけた。何か一つこれがあったからというよりも、そこに辿り着くまでに積み重ねてきたものが次の道へとつなげてくれるんじゃないかと思います」

向井理も、英子も、夢を追いかけ続けてきた。悔しさと反骨精神を頼りに、暗く辛い道の先にある光を目指して走ってきた。試行錯誤の20年を振り返って思うことは、ある確かな真実だった。
「正直、夢を持ってもみんながみんな叶うわけじゃない。それに、夢を持っていない人もいるだろうし。僕だって、この先どこに向かおうとしているのかは自分でもよくわからないです。ただ、努力は何かしらの形で実を結ぶんだというのは感じます。目指した道のどこかで報われる瞬間が来るのかもしれないし、全然違う別の場所で結果につながることもある。どういう形かはわからないけど、努力することで見つかるものはたくさんあるんだなって、ここまでやってきてわかりました」
街ゆく人をただ一心に観察し続けた20代。今の自分の血肉になった、たくさんの本や映画、舞台。芝居のことを何も知らない向井理を役者にしたのは、たゆまぬ努力の日々だ。
「それに、努力ってたとえ人が見ていなくても、自分が見ているじゃないですか。自分がいちばん自分の努力を見ている。それは嘘じゃないなって思います」
自分はこれだけやってきた。その事実が、自分を信じる強さになる。積み重ねてきた努力を信じて、向井理は今日もカメラの前に立ち続ける。

取材・文:横川良明 撮影:映美
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<作品情報>
『パリピ孔明 THE MOVIE』
4月25日(金) より全国公開

配給:松竹
公式サイト:
https://movies.shochiku.co.jp/paripikoumei-movie/
(C)四葉夕ト・小川亮/講談社 (C)2025 「パリピ孔明 THE MOVIE」製作委員会
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