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主要キャストを一新したミュージカル『キンキーブーツ』、圧巻のショーとドラマが開幕! 東啓介&甲斐翔真ペアゲネプロレポート

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(撮影/荒川 潤)

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トニー賞で作品賞をはじめ6冠を達成したブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』が主要キャストを一新し、3年ぶりに日本で上演される。開幕前日の4月26日、ゲネプロの模様が公開され、報道陣向けの会見にチャーリー役のWキャストの東啓介と有澤樟太郎、ローラ役のWキャストを務める甲斐翔真と松下優也、演出・振付のジェリー・ミッチェルが出席した。

急逝した父の跡を継いで靴工場の社長に就任したチャーリーだったが、会社は倒産の危機に瀕していた。ロンドンで偶然出会ったドラァグクイーンのローラの存在がきっかけとなり、ドラァグクイーンのショーのためのブーツの開発に挑むが……。日本では2016年に小池徹平と三浦春馬のコンビで初演され、2019年に再演。2022年には小池と城田優のコンビで再々演が行われたが、今回、キャストを一新しての3年ぶりの日本公演となる。

左から東啓介、有澤樟太郎、甲斐翔真、松下優也、ジェリー・ミッチェル

演出のミッチェルは開幕を前にして「最高の気分で、とても自信があります。どういう状態かというなら、“フルアウト(=全力でやり切った)”です」と語り、キャスト陣も「ようやく明日、初日を迎え、新しいメンバーでみなさんにお見せできるのが楽しみです」(東)、「ジェリーに魔法をかけてもらった気分です」(有澤)、「明日、やっと初日ということで、この作品は最後のピースとしてお客さまが入った瞬間に出来上がるものだと思うので、楽しみで仕方ないです!」(甲斐)と充実した表情を見せる。松下は「みなさま、ごきげんよう! 松下優也役のローラです」と笑いを誘い「いつも、“松下優也さん”は初日の前はどっちかと言うと緊張が多いらしいですけど、私ローラはライブ直前かのような高揚感がすごい状態です!」とノリノリで語る。

役衣装での出席となったが、甲斐は真っ赤なドレスに身を包み、高いヒールを履いた自身の姿に「120点です」と笑顔を見せ、衣装・メイクスタッフへの感謝を口にし、松下は変わらぬハイテンションで「いま、渋谷が明るいのは私がいるからです!」と語り、会場を爆笑に包んだ。

新たなキャストを迎えての上演となるが、ミッチェルは「『キンキーブーツ』は若い男性が、本当の自分、自分に誠実であるとはどういうことかを発見していく物語だと思います。ここにいる若い4人は、それぞれ渡されているマテリアルは同じですけど、日本チームのみなさんの導きによって、それぞれの方向で役を形作り、輪郭をハッキリとつくり上げ、自信を持って演じていると思います」とキャスト陣へのゆるぎない信頼を口にしていた。

この日のゲネプロは、東(チャーリー)&甲斐(ローラ)チームの上演となった。幕が開くと、そこはチャーリーの父親が社長を務めるノーサンプトンにある靴工場「プライス&サン」の工房。父親は跡継ぎと定めた幼い息子のチャーリーに「靴こそ世界で最も素晴らしいもの」だと教え込む。だが時は流れ、青年へと成長したチャーリーは、父の反対を押し切って田舎を飛び出し、婚約者と共にロンドンへ。新生活に胸を膨らませるが、そこへ突然、父の訃報が届く。慌ててノーサンプトンに戻り、言われるがまま社長に就任するが、そこで会社の窮状を知る。金策に奔走するチャーリーはひょんなことからドラァグクイーンのローラと出会う。

やはりというか、物語の“軸”となるのは、美しいローラの周囲を圧倒する存在感。開演から約15分が経って、ローラが登場すると劇場の空気が一瞬で変わり、客席が興奮と高揚感に包まれていくのがわかる。ローラがエンジェルス(同僚の個性豊かなドラァグクイーンたち)を従えて、パワフルなダンスと共に「Land of Lola/~ローラの世界~」を高らかに歌い上げると、ステージ上のみならず会場全体がロンドンのクラブのような一体感に包まれ、客席のあちこちから歓声が上がる。

甲斐は、エネルギッシュでカリスマ性にあふれるローラを力強く好演。途中、ローラがメイクを落とし、カツラもドレスもなしの“男性”の姿に戻るシーンがあるが、そこで見せる繊細さとのギャップも含め魅力的で、物語を引っ張っていく。

圧巻は、第一幕の最後を飾る「Everybody Say Yeah/~みんなでYEAH!~」。デザイナーとして迎え入れたローラのアイディアを取り入れた、真っ赤なハイヒールのブーツの第1号がついに完成し、工場が歓喜にわく。工場で働く労働者の面々も、それぞれに個性あふれる魅力的な人々だが、そんな工場の面々とチャーリー、ローラ、さらにはド派手に着飾り、煌びやかなブーツを履いたエンジェルスたちまで加わり、全員が一体となって、工場内のベルトコンベアに乗って歌い、踊り、「YEAH!」と叫ぶ姿に心が躍る。

東が演じるチャーリーも魅力的な存在。身長190センチの堂々たる体躯もあって(ちなみに今回の主要キャスト4名はいずれも180センチ超!)、ローラに負けず劣らずの存在感を放っており、頼りないお坊ちゃんの若社長というよりは、何とか自分の力で会社を、従業員たちを救おうと奮闘するも、なかなか思うように事が進まず、思い悩む若者を力強く演じている。チャーリーとローラのふたりのシーンでの会話や佇まいから、彼らは決して別世界に住み、違う人生を歩んできたまったくタイプの異なるふたりではなく、同じような悩みや葛藤を抱えた似た者同士であることがよく伝わってくる。そんなふたりがグッと距離を縮めるのが第一場の後半の「Not My Father‘s Son/~息子じゃないの~」。圧倒的なカリスマを誇るローラの繊細で弱い一面、虚勢を張りながらみんなを率いようとするチャーリーの苦悩が明かされ、2人の間に確かな友情が芽生える。このシーンを含め、チャーリーとローラがハグを交わすシーンは観る者の胸を打つ。

そして第2場以降、様々な苦難やピンチに直面しつつ、工場の存亡を懸けて物語はブーツの見本市が行われるミラノへ!

「あるがままの自分を、そして他人を受け入れること」――そんな強いメッセージを描きつつも、説教くささを微塵も感じさせないのは、ローラのショーに代表されるように、登場人物たちがみな、心の底からの笑顔で歌い、踊り、感情を爆発させている姿に頭よりも心が反応してしまうから。思わず立ち上がって一緒に歌いたくなるような最高のエンタテインメントショーに仕上がっている。

取材・文/黒豆直樹
撮影/荒川 潤

<公演情報>
ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』

【東京公演】
日程:2025年4月27日(日)〜5月18日(日)
会場:東急シアターオーブ

【大阪公演】
日程:2025年5月26日(月)〜6月8日(日)
会場:オリックス劇場

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/kinkyboots2025/

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