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「自分が変われば世界も変わる」ミュージカル『キンキーブーツ』有澤樟太郎&松下優也ペアゲネプロレポート&初日公演後シンディ・ローパーのメッセージ

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ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』ゲネプロより、ローラ役=松下優也、チャーリー役=有澤樟太郎 (撮影:岡千里 キセキミチコ)

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「自分が変われば世界も変わる」と、高らかに歌い上げて観る者の胸を熱くするミュージカル「キンキーブーツ」。実話を基にした2005年公開の映画から、シンディー・ローパーのキャッチーな楽曲を得てさらにパワーアップしミュージカル化。2013年トニー賞で作品賞はじめ6部門を制し、その魅力は多くの人に認められている。日本でも2016年の初演以来、小池徹平演じるチャーリー、三浦春馬が、そして彼からバトンを受け継ぎ城田優が演じたローラに、もちろん作品そのものにも、魅せられた人は数知れず。そして4回目の上演となる今回も、フレッシュなキャストで観客を魅了することだろう。4月27日に行われた、チャーリー=有澤樟太郎、ローラ=松下優也のゲネプロの模様をお伝えしよう。

愛あふれるエンパワメントで多幸感に満ちたステージ

老舗の紳士靴工場だけに、古びた赤レンガの壁が印象的な「プライス&サン」。流れてくる「Price and Son Theme/~“プライス&サン”の社歌~」はゴスペルを思わせるコーラスが印象的で、観客を一気に作品世界へと誘う。続く「The Most Beautiful Things in the World/~この世で一番素敵なもの~」はこのシーンだけでチャーリー(有澤樟太郎)の状況や彼の思いを十二分に伝え、歌で表現するミュージカルだからこそできるストーリーテリングに感嘆する他ない。

有澤のチャーリーはまず、表情の豊かさが目を惹きつける。よく動く表情筋、長身でスタイルの良さが際立つ立ち姿で、あえて例えるならば大型犬のような愛嬌。“愛され系チャーリー”とでも言うべき人が、そこにいた。ダブルキャストでチャーリーを演じる東啓介もまた長身の美丈夫だが、このそこはかとない親しみやすさや愛嬌は有澤特有の持ち味だろう。

そして父を失い工場も危機に陥ったチャーリーが、ロンドンで出会うローラ(松下優也)。男たちにからまれていた女性を助けたと思ったら実は……というローラの登場シーンは、エンジェルスに取り巻かれた彼女にスポットライトがあたった瞬間、「ローラ、降臨!」という高揚感で一気に客席が湧き上がる。ドラァグクイーンである彼女たちの、そして演じる松下や穴沢裕介、佐久間雄生、シュート・チェン、大音智海、工藤広夢、轟晃遙の、パフォーマンス力が存分に発揮されている。

松下のローラはコミカルかつセクシーな“艶やかローラ”。表情や仕草、声色と、男性性と女性性がその時々で自在に見え隠れする。これまでのアーティスト、また俳優としての活動の中で確かな歌唱力・ダンス力を見せてきた人だけに、ここでも存分に魅せてくれる。これだけのボリュームでこなすハイヒールでのダンスも、公演を重ねるごとによりこなれてくるに違いない。ダブルキャストの甲斐翔真も歌唱力・演技力とも申し分ないし、いい意味で個性の違いが際立っていくだろう。

工場の再起を“キンキーブーツ”――危険でセクシーなドラァグクイーンのためのブーツに懸けることにしたふたりを待ち構える展開は、従業員との意見の相違、チャーリーのフィアンセ・ニコラ(熊谷彩春)との間に生じた亀裂と従業員・ローレン(清水くるみ)に芽生える恋心、商品開発の困難と、手ごわい出来事の連続。それらをテンポよく、パワフルに見せていくのも、やはりミュージカルならでは。特にチャーリーへの恋を自覚したローレンのソロ「The History of Wrong Guys/~間違いだらけの恋の歴史~」では、清水のかわいらしさとコミカルさが炸裂。これまでローレンを演じてきたソニン、そして今回ダブルキャストの田村芽実もコメディエンヌっぷりは折り紙つきで、チャーリーの葛藤によりそう姿も含めてとても魅力的だ。

さらに、物語はチャーリーとローラに共通する“父への葛藤”を描く。彼らの葛藤は多くの人に共通するもので、世間の目や家族の希望の息苦しさ、自分の理想や目標に応えられないふがいなさ……人によって迷いはさまざまだけれど、彼らは間違いなく観客自身の映し鏡。だからこそ、「Not My Father’s Son/~息子じゃないの~」は胸をしめつける。そこからブーツの試作を成功させた「Everybodey Say Yeah/~みんなでYEAH!~」で最高の盛り上がりを見せて第1幕を締めくくるという、王道の強さを感じさせる展開だ。

音楽・作詞のシンディ・ローパーも激励「すべての人をハッピーにしてくれる作品」

初日候えのカーテンコールに登壇したシンディ・ローパー(撮影:岡千里 キセキミチコ)

第2幕、ミラノの見本市への出品をめぐって焦るチャーリーは皆と衝突。ローラにも酷い言葉を投げつけてしまう。彼の独白から「Soul of a Man/~真の男~」、ローラの「Hold Me in Your Herat/~心で抱きしめて~」と素晴らしいソロナンバーが連続し、「Raise You Up/~上げたげる~、Just Be/ただなりなさい」でクライマックスの昂揚へ。「ありのままの他人を受け入れる」「自分が変われば世界も変わる」というメッセージを、愛を込めて伝えてくるフィナーレには胸打たれずにはいられない。

ちなみに海外スタッフ陣の存在も大きいのだろうが、このゲネプロの時点で既に、指笛なども含めて客席がとてつもなく盛り上がっていた。それは、この「キンキーブーツ」が皆に求められている証だろう。歴代のキャストへのリスペクトと共に、新しいキャストが新鮮な風を吹き込みながら、長く愛され続けてほしい作品だ。

また、この日の夜に開催された初日公演のカーテンコールには、演出のジェリー・ミッチェル、アソシエイト・コレオグラファーのラスティ・モワリ―と共に、本作の音楽・作詞を担当し先ごろフェアウェルJAPANツアーを終えたばかりのシンディ・ローパーがサプライズで登壇。

ジェリー・ミッチェルから紹介されマイクを持ったシンディはまず、「ありがとうございます。元気ー?」と日本語で呼びかけ会場を盛り上げ、「とにかくここにいる全員素晴らしいです。どんなことであっても、ひとりで成し遂げることができるということはないと思う。これは我々全員が一緒になって成し遂げたこと。今夜舞台上に立っているパフォーマーの皆さんは、それぞれの心臓(ハート)をさらけ出して自分自身の一部を舞台に表してくれたのではないかと思っています。この作品はすべての人をハッピーにしてくれる作品。自分もその作品の一部になれてうれしい。特に今大切だと思うのは、この作品のようにコミュニティという家族を感じることだと思う。そして、その一部になれたことを感謝しています」とメッセージを残した。

取材・文:金井まゆみ 撮影:岡千里 キセキミチコ


<公演情報>
ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』

脚本:ハーヴェイ・ファイアスタイン
音楽・作詞:シンディ・ローパー
演出・振付:ジェリー・ミッチェル
日本版演出協力/上演台本:岸谷五朗
訳詞:森雪之丞

出演:
東啓介/有澤樟太郎 甲斐翔真/松下優也
田村芽実/清水くるみ 熊谷彩春 大山真志 ひのあらた
飯野めぐみ 多岐川装子 中谷優心
穴沢裕介 佐久間雄生 シュート・チェン 大音智海 工藤広夢 轟晃遙
本田大河 長澤仙明
藤浦功一 石川剛 聖司朗 舩山智香子
伊藤かの子 熊澤沙穂 竹廣隼人 趙京來
奥田奏太/星駿成/村山董絃 古澤利音/見﨑歩誠/髙橋維束
上條駿 加藤文華

【東京公演】
日程:2025年4月27日(日)~5月18日(日)
会場:東急シアターオーブ

【大阪公演】
日程:2025年5月26日(月)~6月8日(日)
会場:オリックス劇場

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/kinkyboots2025/

公式サイト:
http://www.kinkyboots.jp/

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