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400m日本記録ホルダー・佐藤拳太郎が見据える、セイコーGGP、日本選手権、そして世界陸上への道筋

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佐藤拳太郎(富士通) 撮影:星野洋介

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『東京2025世界陸上』の開幕を前に、この名前を憶えておいてほしい。
佐藤拳太郎である。格闘技が好きだという父が、「拳」の一文字を選んで「けんたろう」と名付けた。
32年もの長きにわたって止まっていた歴史を、動かした男である。2023年8月に開催された『ブダペスト2023世界陸上』の男子400メートル予選で、佐藤は44秒77をマークした。1991年に打ち出された44秒78を上回り、日本のトラック種目最古の記録を更新したのである。
2024年の『パリ五輪』では、400mと4×400mリレーに出場した。4×400mリレーではアンカーを務め、アジア新記録で6位入賞を果たした。
世界のトップ・オブ・トップを見据える30歳は、いま何を思うのか──。

取材・構成:戸塚啓
撮影:星野洋介
取材日:4月18日

──『東京2025世界陸上』へのプランニングをお聞かせください。大会を消化しながらピークを持っていくのか、目前のレースで結果を求めていくのか。

「僕はまだ『世界陸上』の参加標準記録(44秒85)を突破していないので、内定もいただけていません。まずは標準記録を切ることを意識して試合に挑みますが、ガムシャラに1本1本走るのではなく、明確な意味を持たせていきます。この試合ではこういう動きをする、それがクリアできたら次の試合ではこれをクリアする、というように順序立てて走っていく。それをすべてクリアできれば、自ずと記録は出せるという状態を作っていますので、やるべき動作をどれだけ再現できるのかが勝負になってくると思います」

──佐藤選手が考える再現する意味を、もう少し具体的に説明していただけますか。

「タイムはもちろん大事にしていますが、それよりは動作です。この動作ができればこのタイムが出せる、というものが自分のなかにあります」

──練習と試合では環境が異なります。観客のいない小さな競技場で練習し、満員のスタジアムで成果をあげなければなりません。その変化にどう対応しますか?

「自分の再現性をタイムに求めていると、周りの選手に影響されてペースが速くなったり、遅くなったり、気持ちが高揚してうまくいかなかったり、といったことが起こり得ます。そうではなくて動作を再現することに集中すれば、大会の規模などには影響されません。隣のレーンの選手が想定より速くても、自分の走りは左右されません。自分の動作だけを、求めていますので」

──その境地に達したのはいつからで、何かきっかけがあったのでしょうか?

「2021年度までの私は、200mの通過にとにかくこだわっていました。タイムにこだわっているので、調子が良ければ最後までそのスピードが維持できて記録が出る。けれど、その速度が出せないとその速度のままか、落ちていくだけなので、記録が出ない。速いけど強くない選手、速いけど弱い選手、再現性の低い選手でした。とにかくいかなきゃと、精神論で走っていました。2022年は故障で走れない時期があり、そんな時に大学院へ進学して、400mに限らず陸上競技に関する様々な学術論文に触れて、400mをこう走れば必ず記録が出せるというもの作り上げました。あとはそれを体現できるか、という状態にあります」

──それによって、2023年に日本新記録を出すことができた?

「そうですね。もし出せなかったらメカニック的なところにミスがあることになるので、それをブラッシュアップしていけば確実に出せる状態ではありました。ただ、日本記録を出したレースが100%かと言われると、そうでもないと思っていまして。タイム的にはそう言いたいところですが、競技場のサーフェスもありますし、『ブダペスト2023世界陸上』という舞台だからこそ出た記録、という理解なんです。あれは自分の記録とは思えていない、というか。ひとつ前の『アジア選手権』の45秒00のほうが、自分の中では動作が良かった。ベストレースと言えば、そちらになります」

──再現性を高めることで、記録が安定していくのでしょうね。

「そもそもアベレージが高い状態でなければ、記録は伸びないと思うんです。自分が高い再現性を持っているなかで、あるレースで記録が伸びる。そうしたら、今度はその記録をベースにする。そうするとまた伸びる、という連続でパフォーマンスは上がっていくと思うので。記録が伸びたところで下げない、というのが大事です。私の場合は400mで44秒77という記録があり、自分で出した記録ではないという認識ですが、そこをひとつのアベレージにしています。それより遅い記録なら、この要素がダメだったからだな、というのを一つひとつ潰していきます。で、44秒77よりも早い記録が出たら、今度はそれを当たり前にしていく。当たり前を上げていく、ベースを上げていく、というのは大事にしています」

佐藤拳太郎(富士通) 撮影:星野洋介

──練習ではチェックポイントを確認しながら走っているそうですが、本番のレースでは無心ですか?

「いえ、本番でも走りながら考えていますね。それができたのが『アジア選手権』の45秒00のレースでした。このラインを通過したからこの動きをしよう、というのを一つひとつ考えながら、フィニッシュラインを迎える瞬間まで意識し続けることができました。人体の組成上、40秒を越えると無酸素運動を維持できなくなってしまうので、それ以降はもがき苦しむしかないのですが、そのツラい区間もしっかり考えることがあると思っているので、しっかりとやりたい動きにどれだけ近づけるのかを、フィニッシュラインを迎えるまで考え続けられたのが、『アジア選手権』でした。その記録は自分で出した記録、と思うことができています」

──佐藤選手は30歳です。肉体的なピークについてはどう考えていますか?

「肉体的について言えば、もしかしたらピークは過ぎているかもしれません。けれど、私は陸上競技を肉体でやっていません。自分が構築したものを体現できれば、自ずと力が出せる状態を作っているので、肉体のピークに左右されないというか、年々記録が出せる自信もあります。最終的にアジア記録も目指していかなくてはいけないと思っています」

──アジアの頂点だけでなく、世界のトップも見えていますか?

「昨年の『パリ五輪』で優勝した選手のレース分析もしていて、どうすればそうなれるのかというトレーニングを冬の間に構築しました。その人の走り方がこうなので、自分もそれに近づけるためにはこういうものが必要だというもの分かっています。それが全て体現できれば、同じ記録を出せると思っています。つまりは、世界のトップは見えると思います。近年の『世界陸上』ですと、決勝で43秒台を出せば確実にメダルが取れます。決勝でその記録が出せる準備を進めています」

──具体的にはどんな準備を?

「色々ありますが、たとえば、何かをするにあたって迷ったときに43秒台の選手だったらどうするだろう、どちらを選ぶだろう、というのはつねに考えるようにしています」

──400mとともに、マイルリレーもターゲットになると思います。こちらは、昨年の『パリ五輪』でアジア新記録を更新して6位入賞を果たしました。

「ここ数年はマイルリレーのチームリーダーをさせていただいているので、もちろん頭のなかにはあります。日本はいまアジアで頭ひとつ抜けていると思っていて、これを一過性のものにしない。私も私と年齢が近い選手も、いずれ必ず引退します。そのときに、世界大会で決勝へ進めなくなる、日本の400mリレーが他の国に負けてしまうことがないように、ロングスプリントのチームを盤石にするためにも、まだまだチームとしてやらなきゃいけないことがあります。トレーニングや戦術、考えかたも含めて伝えられるものは多くあります」

佐藤拳太郎(富士通) 撮影:星野洋介

──『パリ五輪』のレース後に、「東京2025世界陸上でメダルが取れるチームを構成する」と話していました。

「メダルを取らなくてはいけないところに、いまの日本チームは来ていると思っています。今回は地元開催で地の利を生かせます。他国の選手は自分自身のパフォーマンスの調整だけでなく、時差調整や食事の変化に対応しなければならない。我々はアドバンテージを持っている状態で望めるので、その状態でメダルが取れないようではいけないと私自身は思っています。それはチームメンバーにも伝えなくてはいけないですし、そういうチームを作っていきたいと思っています」

──400mではライバルとして争う選手と、マイルリレーではチームメイトになる。精神的な切り替えはスムーズにできるものなのでしょうか?

「はい、できます。個人で戦うときはライバルで、自分自身の走りに集中する。自分のレーン以外に立っている選手は全員ライバルという認識です。バトンをつないでいくことになったら、しっかりとチームで団結できる。いまの日本のロングスプリントチームは、その切り替えができていると思います」

──5月の『セイコーゴールデングランプリ陸上』、7月の『日本選手権』も、『東京2025世界陸上』と同じ国立競技場で行なわれます。これもアドバンテージになりますか?

「大きいですね。他国の選手よりも2回多く実戦が積める。どちらも大きな大会で、『日本選手権』は『東京2025世界陸上』の代表選考を兼ねています。大きな大会ですし、一つひとつ記録を狙っていかなくてはいけないですけれど、『世界陸上』を見据えた実戦練習という位置づけにもできます。間違いなくアドバンテージになりますし、そんな準備ができる我々が他国の選手に負けるようではいけない。そういう気持ちで臨んでいきたいと思っています」

──それだけの決意を持って挑む『東京2025世界陸上』で、どんな走りを見せたいでしょうか?

「私自身が考える400m走というものを、100%体現できる準備をしていきます。それが確実にできれば、日本記録以上のものは更新できます。決勝の舞台でメダルを獲得するためには、43秒台を出す必要があります。みなさんの前でその記録を出せるように、日々頑張っていきます」

東京2025世界陸上競技選手権大会のチケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2453080&utm_source=pia&utm_medium=media1&utm_campaign=20250502

公式チケットインフォメーションサイト
https://tokyo25-lp.pia.jp/?utm_source=pia&utm_medium=media1&utm_campaign=20250502

セイコーゴールデングランプリ陸上2025東京のチケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2557859

第109回日本陸上競技選手権大会兼東京2025世界陸上 日本代表選手選考競技会のチケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2558644

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