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オーストラリア・バレエ団デヴィッド・ホールバーグ芸術監督が会見  ヌレエフ版『ドン・キホーテ』の魅力をアピール

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(C)Yuji Namba

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来月末にオーストラリア・バレエ団が15年ぶりの日本公演を行う。カンパニーを率いるのは、アメリカン・バレエ・シアターのスターとして活躍、史上初のアメリカ出身のプリンシパルとしてボリショイ・バレエに入団するなど、輝かしいキャリアで注目されたデヴィッド・ホールバーグだ。4月11日に都内で実施された記者会見に登場した彼が、2021年の芸術監督就任以来初となる日本公演への思い、日本で上演するヌレエフ版『ドン・キホーテ』への取り組みについて語った。

カンパニーを象徴する作品、ヌレエフ版『ドン・キホーテ』

颯爽と会見会場に登場したホールバーグは、ダンサー時代と変わらぬ端正な面持ちと美しい佇まいが印象的。大勢の記者を前に、「日本に再び戻って来ることができ、本当に嬉しく思います。今回はダンサーとしてではなく、芸術監督。全く違う心境です」と挨拶、人懐こい笑顔を見せながら、自らがリードするバレエ団を紹介した。

「今回の日本公演は、私たちにとって本当に重要な出来事です。ほとんどのダンサーは日本で踊った経験がなく、とても緊張していますが、その緊張の先にある喜びに到達できたらと思っています。オーストラリア・バレエ団には60年を超える歴史があり、その間に極めて熱心な観客を育んできました。年間170回以上の公演をし、国内はもとより世界中を飛び回るツアーリングカンパニーでもある。ダンサーたちはいつも鞄に荷物を詰めて、世界中を飛び回っています。オーストラリアは地理的に遠く、世界の皆さんに観ていただくためにも、こうした国際的なツアーはとても重要なのです」

今回の日本公演に選ばれた作品は、ルドルフ・ヌレエフ(1938~1993)が1970年にオーストラリア・バレエ団のために振付けた全幕作品、『ドン・キホーテ』。スペインを舞台に繰り広げられる、遍歴の騎士ドン・キホーテがバルセロナで出会った、キトリとバジルという若い恋人同士の物語が、躍動感あふれる踊りで描かれる古典バレエの傑作だ。ヌレエフによる『ドン・キホーテ』はパリ・オペラ座やミラノ・スカラ座でも上演されているが、オーストラリア・バレエ団にとってこの作品は特別なもの。2023年のカンパニー創設60周年記念の際に、セットと衣裳を新しく作り直したという。

「カンパニーを象徴する作品です。ヌレエフの『ドン・キホーテ』は1970年代に映画にもなりましたが、私たちはその映画のセットと衣裳を、舞台用に新たに作り直したんです。舞台のオープニングでは、まるで映画のようにその日踊るダンサーの名前のクレジットを映し出します。映画へのオマージュです。生命力にあふれる、オーストラリアらしい温かみのあるプロダクションですので、ぜひご覧になって、世界の著名なバレエ団が上演されている『ドン・キホーテ』と比較していただきたいと思っています」

古典バレエの中でも際立って楽しく、コメディの要素も多く散りばめられた『ドン・キホーテ』だが、今回はさらに、オーストラリアの明るい太陽と開放的な雰囲気が反映された、この上なく朗らかな『ドン・キホーテ』が期待される。会場に掲げられた日本公演のポスターに映し出されているのは、キトリ役ジル・オオガイとバジル役マーカス・モレリ。その輝くような笑顔が印象的だ。

「それがすべてを象徴しています。初日は近藤亜香とチェンウ・グオ。その後ベネディクト・ベメとジョセフ・ケイリー、ジル・オオガイとマーカス・モレリが主演しますが、それぞれが個性をしっかりと見せますから、どの日をご覧いただいても楽しんでいただける自信があります。ダンサーたちにが、バレエの厳しさに囚われることなく、より自由に、それぞれの個性を出して思い切り踊ってくれるたらと願っています」

(C)Yuji Namba

2023年の『ドン・キホーテ』上演の際には、指導者としてシルヴィ・ギエムを迎え、大きな話題に。百年に一人の天才と謳われ、世界の舞台で輝かしい活躍を重ねるも、2015年にダンサーを引退して以来、バレエの世界とは距離を置いていた彼女が、ダンサーたちにどんな指導をし、何をもたらしたのだろう。

「シルヴィはその後『白鳥の湖』で、また今回は再び『ドン・キホーテ』のために指導に来てくれましたが、彼女は素晴らしい指導者だったのです。シルヴィはダンサーたちに『私はこうやったのよ』と言ったりはせず、ダンサー一人ひとりの個性に向き合い、しっかりと背景を考え、どう表現するのかを引き出してくれました。自身のダンサーとしての経験を、キトリ役のダンサーだけでなく、全団員に染みわたらせてくれた。ヌレエフとともに仕事をしてきたからこそ知っていること、彼女のヴィジョンをもって、カンパニーの実力を押し上げてくれたのです」

文化的な交流を促進し、お互いの文化を豊かにし合う

拠点であるメルボルンでのシーズンに加えて、4カ月間はシドニーでのシーズンを実施し、年間で170以上の公演を行っている彼ら。が、在籍ダンサーの数は75名とそれほど多くはない。その分、ダンサーたちは様々な役を踊るチャンスを得ることができるという。その公演会場となっているのは、メルボルンのアーツ・センター・メルボルン、シドニーのオペラハウスという国内二大劇場だが、現在メルボルンの劇場は改修中。2027年まで休館だというが、政府の助けにより別の劇場が見つかり、公演を行っているそう。ホールバーグは「東京文化会館も同じ理由で休館になるそうですが、政府のバックアップで別の会場が見つかることを願っています」とコメントした。

さらに話題は、ダンサー時代にホールバーグ自身がリハビリでお世話になったというオーストラリア・バレエ団の医療体制や、産休や出産からの復帰のためのプログラムにまで及んだ。「世界の中でも優れた体制を持つカンパニーです。これを引き継ぐことができ、とても幸運です」と誇らしげなホールバーグ。「芸術監督に就任して最も重視していたのは、カンパニーのクオリティを上げることでした。一方で、個性を保つことも大事だと考えていました。私が世界各地で得た経験から、踊る技術だけでなく、演技の仕方、どのようにお客さまを惹きつけるかも伝えてきたつもりです。日本の舞台でも、それをお見せできたら嬉しく思います」

数多くの公演を手がける中で、「踊りをやめて初めて、バレエの舞台はたくさんのスタッフに支えられて実現するものだと気づいた」と話すホールバーグ。バレエの重要な要素の一つである、音楽への取り組みについてもこう述べた。

「日本公演で指揮をするジョナサン・ローは、3年前にオーストラリア・バレエ団の音楽監督に就任しました。熱心で情熱的で、私はダンスのオタクですが、彼は音楽オタクなんです。彼のおかげでオーストラリアの楽団のレベルは上がってきていると言えるでしょう。30 代の若い指揮者であり、そのエネルギーを十分に感じていただけると思いますし、私自身、彼からいろんなアイディア、インスピレーションを得ています。貴重な人と巡り会うことができました」

(C)Yuji Namba

オーストラリア・バレエ団が取り組む国際交流についても質問が寄せられた。2023年には、ホールバーグの招きで東京バレエ団のメルボルン公演が実現したことも、強く印象的に残る。

「国際ツアーを実施するだけではなく、文化交流をするということが重要。東京バレエ団は、メルボルンでの『ジゼル』12公演で成功を収めましたが、今度はオーストラリア・バレエ団が日本を訪れます。それぞれのバレエ団が代表作を見せ合うだけでなく、文化的な交流を促進し、それによってお互いの文化を豊かにし合う。そうなることを、願い続けたいと思っています」

取材・文:加藤智子

オーストラリア・バレエ団 2025日本公演
ルドルフ・ヌレエフ振付
ドン・キホーテ

■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2556629

5月30日(金) 18:30 (近藤亜香×チェンウ・グオ)
5月31日(土) 12:30 (ベネディクト・ベメ×ジョセフ・ケイリー)
5月31日(土) 18:30 (ジル・オオガイ×マーカス・モレリ)
6月1日(日) 12:00 (近藤亜香×チェンウ・グオ)

東京文化会館

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