【スペシャルインタビュー前編】志田彩良の朝ドラへの挑戦「うさ子役を掴むまでは“悔しい”の繰り返しだった」
映画
インタビュー

志田彩良 (撮影/稲澤朝博)
続きを読むフォトギャラリー(10件)
すべて見る
撮影当日。現場は癒し空間となっていた。志田彩良の愛犬2匹が同席しており、「くまちゃん、うさちゃん」と名前を呼ぶ志田の声には優しさが滲む。くまちゃんを抱っこし、終始笑顔を見せていたが、不意に真剣な表情に変わる。芝居について話す瞬間だ。
現在、連続テレビ小説『あんぱん』に、ヒロイン・のぶの幼なじみ“うさ子”役で出演中の志田。念願だった朝ドラに出演するまで、悔しい思いもたくさんしてきた。ようやくつかんだ朝ドラ出演を果たした志田の現在の思いを聞いた。
悔しさを乗り越えてようやく掴んだ朝ドラ出演

――連続テレビ小説『あんぱん』に三週目から出演されています。周りの反響はいかがですか?
ほかのお仕事の現場でも「朝ドラ、楽しみにしています」と放送前から声をかけていただくことが多いですね。あとは地元で歩いていると近所の方からも「朝ドラ、おめでとう」と声を掛けていただいたり、これまでの作品以上に身近な方たちから反響をいただくことを実感していて嬉しいです。
――朝ドラに対してはどういった想いを抱いているのでしょう?
このお仕事を続けていく中で、いつか朝ドラに出演したいという思いがあったので出演が決まった時は「ようやく夢が叶ったな」という気持ちでしたね。17歳ぐらいからずっとオーディションを受けていたんですけど、毎回悔しい思いをしていたので、本当に嬉しかったです。
――今回決まるまでの過程の中で、朝ドラに関して印象的な出来事はありますか。
以前、事務所の先輩の高良健吾さんが『べっぴんさん』に出演されていたときに大阪のスタジオを見学させていただいたことがあったんです。朝ドラの現場の雰囲気がすごくアットホームで、プロフェッショナルなんだけど、温かい空気感があって……でも、見ているだけで何もできない悔しさもありました。そこで「いつか絶対にここでお芝居がしたい」という気持ちがより強くなりましたね。
そのあとも最終まで残ったけど落ちた朝ドラのオーディションもありました。本気でぶつかっては毎回悔しい思いをして……という繰り返しだったので、今回出演が決まった時は本当に嬉しかったです。

――実際に現場に入られていかがですか。
本当に見学させていただいたままでしたね。家族のような雰囲気で。私は毎日撮影があるわけではなかったんですが、現場に行った時は、みなさん温かく迎えてくださるんです。本当に優しくて温かい現場だからこそ、よりたくさんの方に届くんだろうな、と思います。
――ほかの現場と違って驚いたことはありますか?
事前にリハーサルするのもほかの現場ではないことなので、そこも驚いたんですけど、それ以上に現場のスピード感が速すぎて。すっごく速いのに、とても丁寧に演出してくださるんです。時間の流れが不思議でしたね。こんなに丁寧なのにサクサク進んでいって、「あれ? もう終わった?」という感じでした。

初めての朝ドラが『あんぱん』でよかった

――志田さんが演じられる小川うさ子さんについて教えてください。
うさ子は今田美桜さん演じるのぶちゃんと同じ女子師範学校に入学するのですが、そこがとても厳しくてホームシックになるんです。メソメソしてしまうんですけど、のぶちゃんや担任の先生など、周りの刺激をたくさん受けてどんどん成長して強くなっていく女の子です。
――クランクイン前にはどういった準備をされたんですか?
薙刀の稽古があったんですが、監督と「うさ子はここできっと強く気持ちが切り替わるんじゃないかな」とか、稽古を通して、うさ子の人柄がどんどんできあがっていきましたね。
――ちなみに、飼われているワンちゃんのお名前がうさちゃん……。
そうなんです! 家では「うさこ」って呼ばれているんですよ。だから役名がうさ子だと聞いたときには運命を感じました(笑)。
――本当に運命的! 『あんぱん』という作品に対してはどういった想いをお持ちですか?
オーディションで題材を聞いた時から「絶対にこの作品に出たい」という強い思いがありました。ヒロインのオーディションの結果を聞いた瞬間は本当に悔しくて泣いてしまいました。
だからこそ、うさ子として『あんぱん』に携われるということだけでも、ものすごく嬉しかったですね。朝ドラは目標ではあったんですけど、『あんぱん』がその初めての作品になったことが、本当に幸せです。

――オーディションを受けられる時点では、作品のどういったところに魅力を感じてらしたんですか?
アンパンマンは誰もが知っているキャラクターですし、やなせたかしさんがどんな人生を歩んできたのか、たとえ自分が出演できなかったとしても、絶対に観たいと思っていました。どうしてあんなにも愛される作品を生み出すことができたのか? ということは気になっていましたね。
――今後、うさ子さんの見どころを教えてください。
これからうさ子の展開はいくつかあるんですけど、ホームシックになって、心がくじけそうになる場面があります。そこからうさ子がどう気持ちを切り替えて変化して行くのか。どんどん強くなっていくうさ子をぜひ見ていただきたいなと思いますし、観てくださる方の中で、誰か一人でも「私もがんばろう」と思っていただけたら嬉しいですね。

壁にぶつかったときは成長のチャンス

――この4年で本当にさまざまな役を演じていらっしゃる印象があります。志田さんご自身は俳優としてご自身の変化をどのように感じていらっしゃいますか?
毎年毎年、前の年を超えられる1年になっているな、と感じていますね。作品もそうですけど、いただく役の幅も少しずつ広がっていることを最近特に実感しています。期待していただく機会も多くなって、その分「もっと努力しなければ」という気持ちも、これまで以上に強くなりました。
――最近ですと映画『遺書、公開。』で印象的な役を演じていらっしゃいました。
これまでやったことあるようでない、初めての挑戦をした役でしたね。一匹狼的な役はこれまでも演じたことがあったんですけど、一匹狼なだけではなく少し癖のある、でも可愛らしさも入れてほしいと監督から言っていただいていたので、そこをどう表現しようか悩みながら、監督ともたくさん話し合って作りました。
――経験を重ねていくことで俳優に対して難しいと思う部分が増えたり?
難しさは常に感じてるんですけど、年々より楽しめるようになっているな、と感じています。
――壁を感じたりすることはあったんですか?
結構な頻度で壁にぶち当たってます(笑)。でも、最近は「どうやって乗り越えようかな」と考えることも楽しめるようになってきています。ここが足りないから、もっとこういう作品を見て勉強しようとか、この役だったらこの女優さんがすごく魅力的だから、その方の表情とかを見て勉強しようとか。想像力の幅もどんどん広がっている気がします。壁が出てきたら、自分の引き出しが増えるチャンスだと思って、そこから逃げずにちゃんとぶつかっていけるようになりましたね。


撮影/稲澤朝博、取材・文/ふくだりょうこ
フォトギャラリー(10件)
すべて見る