豪華声優陣が見せる、新選組と女性たちの生きざま 朗読劇『新選組の恋~春の在処~』
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(撮影/阿部章仁)
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脚本・演出を土城温美が手がける朗読劇『新選組の恋~春の在処~』が5月1日に開幕した。
新選組の土方歳三、近藤勇、山南敬助にスポットライトを当て、武士として生きること、誰かを愛することにひたむきに向き合った男たちの姿をドラマティックに描いた本作。キャストは回替わりとなっており、5月1日は土方歳三を寺島惇太、近藤勇を笠間淳、山南敬助を山中真尋、琴・つね・明里を結那が演じた。
物語は、緊迫感ある戦いのシーンからスタートする。声と音楽、少しの映像だけだが、血生臭い光景が見えてくるような迫力ある芝居によって、客席がグッと物語の世界に入り込むのが感じられた。
近藤と土方、山南の出会いから順を追って描かれているのに加え、3人の個性や考え方も丁寧に描写されているため、歴史に詳しくなくても問題はない。時代が急激に変化していく中でどう生きていくかを考え、行動した彼らの姿から多くのことを感じ取れるはずだ。

寺島は、本心が読みづらいが優しさを感じられる土方を好演。近藤をからかうお茶目な一面と、新選組を支える副長としての苦悩や覚悟のギャップも魅力的に見せていた。許嫁の琴に向ける静かで優しい声、琴が送ってくる風流な手紙に対する反応なども可愛らしい。
笠間が演じたのは、穏やかで人の良さが前面に出ている近藤勇。意見が対立しがちな土方と山南の間をとりもち、気の強い妻・つねにたじたじになりつつ、いざという時は新選組局長らしい矜持を見せる人物を見事に演じる。アドリブシーンでは自由に遊び、客席を笑いの渦に巻き込んでいた。
山中は、冷静で賢く、女性に対してはピュアな山南をチャーミングに描く。近藤の人柄に惹かれて仲間になった彼が、なぜ新選組を脱走し、切腹に至ったのか。ドラマティックな脚本を丁寧に見せる山中の芝居に、後半では客席からすすり泣きも聞こえていた。

そして、結那は厳しい態度の中に近藤への深い愛情が感じられるつね、一途に土方を慕う琴、はんなりした言葉遣いで山南を翻弄する遊女・明里と、まったくタイプの違う女性3人を魅力的に演じ分ける。
新選組の前身となる浪士組の発足から敗北までが描かれ、国に対する思いや武士としてのプライド、価値観の衝突……と、シリアスなシーンも多い中で、彼女たちの存在がほっと一息つかせてくれた。
女性たちの性格、土方や近藤、山南との関係性が、立ち位置や照明の違いであらわされているのも面白い。声の多彩さと共に、表情や動きでも各キャラクターの個性を楽しめるのは朗読劇ならではと言えるだろう。
『新選組の恋』というタイトルではあるが、恋だけではなく、新選組に対するそれぞれの想いや夢、隊士同士の信頼や軋轢、迫力ある戦闘シーンも描かれており、見応え抜群の作品となっていた。
また、劇場のロビーには作中に登場する3人の女性をイメージした文香が置いてある。観劇の思い出と共に、気に入った香りを持ち帰ることができるのも嬉しい。
土方歳三、近藤勇、山南敬助の人生と価値観、彼らに寄り添う女性たちの姿が鮮やかに立ち上がってくる本作。出演する豪華声優陣がそれぞれどんな芝居と化学反応を見せてくれるのか期待したい。

取材・文/吉田沙奈
撮影/阿部章仁
<公演情報>
朗読劇『新選組の恋~春の在処~』
日程:2025年5月1日(木)〜6日(火・祝)
会場:博品館劇場
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/shinsenguminokoi/
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