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井上芳雄と浦井健治の初演コンビで『二都物語』が12年ぶりの再演! ヒロイン潤花は宝塚退団後初のミュージカル出演

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ミュージカル『二都物語』 ゲネプロより (撮影:岩村美佳)

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2007年にアメリカで上演、翌年にはブロードウェイにも進出した名作ミュージカル『二都物語』(チャールズ・ディケンズ原作)の日本版が初演されたのは、2013年のこと。英国の弁護士シドニー・カートンに井上芳雄、フランスの亡命貴族チャールズ・ダーニーには浦井健治という最強コンビに加え、繊細な人物描写に定評のある鵜山仁の演出もあいまって、再演の呼び声も高かった本作。待望の上演となる今回は井上と浦井、鵜山の続投に加え、ルーシー・マネット役に宝塚歌劇団を退団後、これがミュージカル初出演となる潤花が参加している。そのゲネプロ(公開通し稽古)が、初日前夜の5月6日、東京・明治座で行われた。

18世紀後半のロンドン。ルーシー(潤)は17年間行方不明の父ドクター・マネット(福井晶一)がバスティーユに投獄されていたと知り、パリへと向かう。酒屋の経営者ドファルジュ(橋本さとし)とマダム・ドファルジュ(未来優希)のもとで父と再会し、帰途につくルーシー。

だが船内で親切にしてくれた青年ダーニー(浦井)がスパイ容疑にかけられたことを知り、彼女も法廷に出ることに。

ふたりのピンチを救ったのは、ダーニーと容姿が似ているものの酒浸りの弁護士カートン(井上)だった。

周囲の人々だけでなく、自分にも分け隔てない愛情を向けるルーシーに次第に惹かれてゆくカートン。だが彼女がダーニーと結婚することを知り、潔く身を引くのだった。

その後もダーニーとルーシー、その周囲の人たちの温かさに触れて過ごすカートンだったが、ダーニーがかつての使用人を助けるために革命勃発後のパリへと渡ったことで、予想もしない運命の歯車が回り始める。

井上は、仕事は出来るが自分の人生に投げやりになっているような前半の様子から、ルーシーという存在を知って変わってゆくカートンを丁寧に表現。

ルーシーに向ける眼差しの変化がなんとも魅力的だ。

一方の浦井も、貴族階級に生まれながらも世の理不尽に抵抗し、民衆の側に立つダーニーを好演。

このダーニーなら恐怖政治のパリへも向かうはずという説得力をにじませる。

変化してゆく井上カートンと、純粋さを保ち続ける浦井ダーニー。好対照なふたりが対峙して歌う「あるべき姿~リプライズーーいまは子どものままで」は圧巻だ。

ルーシー役の潤は可憐な佇まいはもちろん、温かな声音と聡明な瞳が印象的。さらに息遣いひとつ、視線ひとつまで繊細に演じて、ヒロイン像を超えたルーシーという女性の内面を表現した。

周囲の登場人物を演じる面々も実力派ばかり。パリの民衆の怒りを代表するようなドファルジュ夫妻の橋本と未来や、高潔な人物だが運命に翻弄されるドクター・マネット役の福井晶一のほか、ダーニーの叔父で貴族の邪悪な部分を体現するエヴレモンド侯爵役の岡幸二郎、小悪党として立ち回るバーサッド役の福井貴一、しぶとく世の中を生き抜くジェリー・クランチャー役の宮川浩。さらにカートンやルーシーの周りにいる人々まで、どのシーンにも人間ドラマが広がり思わず引き込まれる。『クリスマス・キャロル』『大いなる遺産』などで知られる文豪チャールズ・ディケンズの豊かな文学性を、鵜山の繊細かつダイナミックな演出で再構築した本作。美しい楽曲の数々と手練の演技巧者たちによって、その魅力をたっぷりと堪能できることが嬉しい。

12年ぶりに共演の井上と浦井。互いへの感慨は

ゲネプロの前には、井上と浦井、潤による囲み会見も行われた。

井上は「また再演できるとは思っていなかったので本当に驚きました。それでもまた演じられるのが嬉しいと思いましたし、初演(の帝劇)より今回の明治座のほうが小さな空間なので、より濃密にお客様にお届けできるという意味で、この作品に合っているんじゃないかと思います」とアピール。

浦井も「鵜山さんらしい演出の人間ドラマを味わっていただけたら。僕たちも12年ぶりということで、その分の深みをもって挑みたいです」と意気込む。

初参加の潤も「そんな皆さんの中に入るのは緊張しましたが、稽古場でもとてもコミュニケーションをとってくださり、それでお芝居が作りやすい部分がありました」と感謝を打ち明けた。

井上と浦井は12年ぶりの共演。「すっかり頼もしくなって」(井上)、「ずっと背中を追っていた」(浦井)と互いへの感慨を語るふたりだが、「『再演も浦井と』という話を聞いたので相思相愛だなと!」と真顔で話す浦井に、「話が大きくなってる!」とツッコむ井上、と絶妙なコンビネーションは健在。

「付き合いも長くなってきたので、もう無駄話はしないかな。心は伝わっていると思いますし……いやどうだろう(笑)」と井上が話すなど、役以外でも好対照ぶりを見せるふたりに取材陣からは思わず笑いが漏れていた。

井上が「12年ぶりに演じてみて、前回とは違う感じを受けました。カートンはある種、聖人のような選択をするのですが、彼も初めからそうだったわけではなく、僕たちと同じように色々なことを感じながら生きていて、その結果がこうだったということなんですね。決して特別な話じゃないけれど、やっぱり素晴らしい物語なのだということを改めて感じました」と本作の魅力を語ると、浦井と潤が真剣な表情でうなずくひと幕も。

演者と共にさらに深化した2025年版の『二都物語』。見どころ満載の本作を、見逃す手はないだろう。

取材・文:藤野さくら 撮影:岩村美佳


<公演情報>
ミュージカル『二都物語』

脚本・作詞・作曲:ジル・サントリエロ
追加音楽:フランク・ワイルドホーン
原作:チャールズ・ディケンズ(「オリバー・ツイスト」「クリスマス・キャロル」)
翻訳・演出:鵜山仁

出演:
井上芳雄 浦井健治 潤花
未来優希 岡幸二郎 福井貴一 宮川浩 橋本さとし 福井晶一
原康義 塩田朋子 原慎一郎 他

【東京公演】
日程:2025年5月7日(水)~5月31日(土)
会場:明治座

【大阪公演】
日程:2025年6月7日(土)~6月12日(木)
会場:梅田芸術劇場メインホール

【愛知公演】
日程:2025年6月21日(土)~6月29日(日)
会場:御園座

【福岡公演】
日程:2025年7月5日(土)~7月13日(日)
会場:博多座

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/ataleoftwocities/

公式サイト:
https://www.tohostage.com/ataleoftwocities/

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