Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > 【NTTリーグワン2024-25 プレーオフトーナメント特別企画】「プレーオフで自分たちの力を証明する」李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)

【NTTリーグワン2024-25 プレーオフトーナメント特別企画】「プレーオフで自分たちの力を証明する」李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)

スポーツ

ニュース

チケットぴあ

李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)  撮影:村瀬高司

続きを読む

フォトギャラリー(3件)

すべて見る

『NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25』第16節で三菱重工相模原ダイナボアーズに勝利し、『リーグワン』発足以来初となるプレーオフトーナメント進出を決め、コベルコ神戸スティーラーズを率いる若きリーダーは「優勝を目指す上でのスタートラインに立てて、正直、ホッとしました」と安堵の表情を見せていた。

今シーズンはチームにとって特別なシーズンである。2025年1月17日、未曾有の被害をもたらした阪神・淡路大震災から30年という節目を迎えた。神戸市をホストエリアに持つチームとして、地域の方々と手を取り合い街とともに復興を遂げてきたチームとして、今シーズン、優勝を達成することが使命だ。

「毎シーズン頂点を目指していますが、今シーズンは震災から30年ということで、これまで以上に結果を残さなければいけないという気持ちが強くあります。そういう年に共同キャプテンを任されて、個人的にも高いモチベーションでシーズンを戦っています」

『スーパーラグビー』のチーフスを連覇に導き、オーストラリア代表のヘッドコーチを務めたデイブ・レニーが指揮官に就任し2年目のシーズン、チームは始動当初から震災30年を強く意識し、ことあるごとに「誰を代表して、何のために戦うのか」を確認してきた。今年1月に24歳になった李承信は、阪神・淡路大震災を経験してはいないが、神戸市出身ということもあり震災を身近に感じており、昨年は毎年1月16日・17日に開催される「阪神淡路大震災1.17のつどい」に参列。今年はチームとして同イベントに全選手、スタッフがボランティアとして参加し、特別なシーズンに懸ける想いを強めた。

まずは何がなんでもプレーオフへ――。
今シーズンからレギュレーションが変更されプレーオフに進出できるチームが上位4チームから6チームに拡大し、前述の通り最終節を待たずに6位以内が確定した。

「成績は昨シーズンと同じ5位ですが、今シーズンはプレーオフ圏内に入ることがひとつの目標だったので、それをクリアできて良かったです」

とはいえ、容易に達成できたわけではない。各チームにワールドクラスの選手が加わり戦力差が縮まった中、もがき苦しみながら勝ち取ったプレーオフ進出だった。

李自身、両足のアキレス腱を痛めており昨年秋の日本代表での活動を辞退し、プレシーズンマッチ最終戦で復帰を果たした。また『NTTリーグワン2023-24』得点王で、ゲームメーカーであるSOブリン・ガットランドが膝を負傷し戦線離脱。雨の中、ヤマハスタジアムで行われた静岡ブルーレヴズとの開幕戦は、李がチームでは2シーズンぶりとなる「10番」を背負い攻撃のタクトを振るうも、ロスタイムにトライ&ゴールを許して13-15で悔しい逆転負けを喫した。しかも、自陣ゴール前での最後の攻防で、李は右耳に10針以上縫う裂傷を負い、今でもその傷痕は痛々しく残っている。

「開幕戦に勝っていれば勢いに乗ることができていたのですが……。第2節では横浜キヤノンイーグルスと対戦し、今シーズン強化してきたディフェンスからボールを奪ってアタックに転じて良いゲームができたんですけど、次の東芝ブレイブルーパス東京戦では自分たちのミスからチャンスを手放して敗れてしまって。シーズン序盤は試合の入りが良くなかったですし、チャンスは作れるけど、それをモノにできないことも多かった。立ち上がりの戦い方と、神戸のDNAであるボールを継続するラグビーをするために必要なコミュニケーションにフォーカスして取り組んできて、徐々に目指すラグビーができるようになってきました」

実は個人としてもチームと同様にフラストレーションの溜まる序盤戦だった。足首の状態が良くない上に、開幕戦での耳の裂傷により、耳孔が腫れ上がり、周りの声が聞こえ辛い状態に。肉体面だけでなく、さらに精神面でもキャプテンという重圧に苦しんだ。レニーHCからは共同キャプテンを務めるブロディ・レタリックのサポートを期待されていたが、「一体自分は何をすればいいのか」と悩み、練習後のハドルで発言を求められても言葉が出てこない自分の無力さ、未熟さを痛感する日々だったという。

「高校やジュニア・ジャパンでキャプテン経験はありますが、チームには先輩もいますし、それにもともと人に厳しく要求できない性格で……」と苦悩するスキッパーの背中を押したのが、李を共同キャプテンに任命した指揮官、その人だった。第4節を終えた後、「仲間からの信頼は間違いなくある。キャプテンとして自信を持ってどんどん発言していき、リーダーシップの面でも成長してほしい」と声をかけられた。

「自分の思ったことや感じたことを素直に伝えればいいのかなと。あとは、グラウンドではキャプテンとして誰よりもハードワークすることにしました」

第5節からは司令塔のガットランドが復帰し、李はCTBでプレーすることになった。第6・7節は悪化した左足首のリハビリに専念し試合メンバーから外れたが、第8節・クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦で戦線復帰。試合はS東京ベイが誇る強力なリザーブメンバーに後半逆転を許すも、前半は攻守で相手を圧倒し、「チームとしてどうすればスコアできるのか、どういうラグビーをやればいいのかを掴めた一戦になった」と言う。自身も「コンディションが上がってきたことや共同キャプテンという立場でやるべきことが明確になったこともあり、パフォーマンスがどんどん良くなってきた」と中盤以降、尻上がりに調子を上げ、チームはガットランド、李を起点にどんどんボールが動くようになっていた。

ターニングポイントになったゲームを問うと、李は2試合を挙げてくれた。ひとつは、秩父宮ラグビー場で行われた第12節・東京サンゴリアス戦。プレーオフに向けて絶対に落とせない大事な一戦ととらえて、敵地へと向かった。試合はシーソーゲームの様相を見せるも、最後の最後に相手ボールのラインアウトを途中出場の小瀧尚弘が値千金のスティールをし、そこからボールを繋いで逆転のトライを奪い、39-37で勝ち切った。

「チームはこれまで接戦を落とすことが多かったのですが、大事な試合をしっかりモノにできたことが大きかったです。それに、サラマンダーズ(Bチーム)のメンバーとしてこれまで試合メンバーを支えてきてくれた小瀧さんが活躍したことでみんなが盛り上がり、チームの結束力が高まりました」

もう1試合はホストゲームとして行われた第14節・BL東京戦だ。ディフェンディングチャンピオンとの1度目の対戦は26-32で敗戦。第14節は攻守の大黒柱であるレタリックが負傷により不在ではあるも、磨き上げてきた神戸Sのラグビーでリベンジを果たそうと臨んだ。だがしかし、立ち上がりから簡単に防御網を破られて11トライを献上、28-73と『トップリーグ』時代を通じてチーム史上ワースト失点での大敗という結果に終わった。

「自分たちのホストゲームであのような試合をしてしまったことが情けなくて、ただただ悔しかったです。でも、今となっては、あの試合があったから原点に立ち戻ることができたように思います」

その理由は、こうだ。試合後、ロッカールームでミーティングを行った。それまでの敗戦後のミーティングでは戦術面について話すことがほとんどだったが、この時は「自分たちがどういうチームで、どういうラグビーをするのか」を再確認し、「もう一度神戸のジャージにプライドを持って戦おう」と気持ちをひとつにした。シーズン終盤に差しかかかったところでの痛い大敗ではあったが、李は「だからといって自信を失うこともなかったです。やっていることは間違っていません。自分たちの力を証明したい。その思いが強かったですし、全員が早く次の試合がしたいという気持ちになっていました」と浮上のポイントになったと語る。実際、神戸Sはそこから3連勝を飾っている。

これまでリーグ戦の戦いを牽引してきた李、レタリック両共同キャプテンはコンディションを考慮しメンバー外となり、第18節静岡BR戦はスタンドで見守ることになった。その後、ターゲットにしてきたプレーオフの戦いが幕を開ける。「入団1年目の時、最後の『トップリーグ』でチームはプレーオフに進みましたが、その時は2回戦に途中から出ただけで。だから、自分としては初めてのプレーオフという感覚で。プレーオフはハイプレッシャーでの戦いになると思いますが、緊張よりも、楽しみな気持ちの方が強いですね」と高ぶる。

リーグ戦での戦いを通じて李は大きな手応えを掴んでいる。埼玉ワイルドナイツやBL東京、S東京ベイといった上位に敗れはしたが、歯が立たない相手ではないと断言する。

「自分たちのラグビーをすれば、どのチームと対戦しても『勝てる』という自信はあります。負けた試合は相手に抑えこまれたというよりも、自分たちのミスから崩れたという印象があります。それに、プレッシャーがかかる中で全員が判断の面などで同じページに立てなかったところがありました。80分間、全員が同じページに立って、一貫性を持ったパフォーマンスをやり続ける。プレーオフだからといってやることは変わりませんし、これまでやってきたラグビーを精度高く遂行して、プレーオフで自分たちの力を証明したいです」

神戸で生まれ育ち、兵庫県、神戸市をホストエリアとするチームに2020年に入団し、そこで震災から30年という節目に共同キャプテンを務めることになった。

「こんなに早くキャプテンをすることになるとは思っていませんでした。けど、共同キャプテンになったことでチーム愛や、神戸の街に対しての想いがより一層強くなりました。だからこそ、このチームで勝ちたいですし、街の方々と喜びを分かち合いたい」

自身にとって2度目の『ラグビーワールドカップ』出場を見据え、第17節終了後の記者会見では日本代表にまつわる質問が飛ぶも、今は代表のことは「考えていない」と述べていた。李は目の前の戦いに集中する。

5月17日(土)・東大阪市花園ラグビー場での『NTTリーグワン202425』プレーオフ準々決勝で5位の神戸Sは、第18節から2週続けて4位静岡BRと対戦する。

「相手はFWが強く、スクラムを武器にしています。それに、今シーズンは自陣からでもどんどんボールを回してきます。神戸Sとしてはセットプレーでプレッシャーをかけることはもちろん、ディフェンスからターンオーバーしたり、キックカウンターであったり、強みとするアンストラクチャーの状況をどんどん作っていって、自分たちのペースに持ち込みたい」

ラグビー界のレジェンドであるダン・カーターが所属した2018-2019シーズン以来の頂点を目指して、李は自身の武器であるランや精度の高いパス、キックを駆使し、神戸Sのアタックを牽引する。

取材・文:山本暁子
撮影:村瀬高司
取材日:5月6日

静岡ブルーレヴズ対コベルコ神戸スティーラーズ NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25 プレーオフトーナメント 準々決勝1のチケット情報
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=11027033

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25 プレーオフトーナメントの特設ページ
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2558701

フォトギャラリー(3件)

すべて見る