上白石萌音「印象派の推しはやっぱりモネ」 『印象派―室内をめぐる物語』アンバサダー就任で推しの魅力をアピール
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すべて見るパリのオルセー美術館のコレクションを中心に、「室内」というテーマから印象派の魅力を紹介する『オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語』。10月25日(土)より国立西洋美術館にて開催される同展の記者発表会が行われ、国立西洋美術館の田中正之館長と袴田紘代研究員、展覧会のアンバサダーで音声ガイドも務める俳優・歌手の上白石萌音が登壇した。
印象派といえば、戸外の風景を移ろう光とともにとらえた絵画がまず思い浮かぶが、同展では、彼らが多く描いたもうひとつのテーマである室内に注目。世界最大規模の印象派コレクションを誇るオルセー美術館から、マネ、ドガ、モネ、ルノワール、セザンヌなど日本初公開作品を含む約70点に加え、国内外の重要作品も合わせ約100点が展示される。オルセー美術館の印象派コレクションがこれだけの規模で来日するのはおよそ10年ぶりのことだ。

国立西洋美術館の田中正之館長は、印象派の画家たちにとっての「室内」というテーマについて次のように語った。
「室内を意味する英語のinterior、フランス語のIntérieurは、どちらも人の内面とか精神という意味も持っています。室内は、実際に人間の内面や精神と密接に結びついているとも言えると思います。家具や調度品、絨毯、壁紙など、室内を飾るものには何かしらの意味が潜んでいて、印象派の時代にはそこに大きな関心が向けられていました。今回の展覧会は、室内という観点から印象派の絵画の秘密を解き明かすものになります。ぜひ、新たな視点から捉えられた印象派の魅力を堪能していただきたいと願っています」
画家たちが室内のモチーフで示唆したものを読み解く
展示は全4章構成。まず冒頭の第1章では、室内を舞台とした肖像画を取り上げる。肖像画は19世紀のサロンや美術市場で人気が高く、印象派にとっても重要な表現手段だった。本章でいちばんの見どころとなるのは、今回が日本初公開となるドガの《ベレッリ家(家族の肖像)》だ。

ドガの作品の中でもとりわけ大型(約2×2.5メートル)のこの作品のモデルとなっているのは、フィレンツェに住むドガの叔母一家。喪服をまとって直立する叔母とふたりの娘、背を向けて椅子に座る叔父、それぞれの表情やポーズ、配置などから人物の個性と家族の関係性が巧みに示唆されている。若き日のドガが描いた本作について、同展を担当した袴田紘代研究員は「あるブルジョワ一家の心理劇を見ているかのような集団肖像画は、お決まりの親密で理想的な家族像に対するドガの挑戦だったのかもしれません。間近でじっくりとご覧いただき、背後のドラマを探るのも1つの楽しみ方かと思います」と鑑賞のポイントを解説した。
第2章は「日常の情景」。印象派の画家たちは、家族や仲間内での奏楽会、読書や針仕事など家庭での楽しみや手仕事の情景などもよく描いた。本章ではドガの《家族の肖像(ベレッリ家)》とともに同展のメインビジュアルにもなっているルノワールの《ピアノを弾く少女たち》などが紹介される。「こうした家庭の情景を描いた作品には女性像が進出します。当時、男性が公共空間を闊歩できたのに対し、ブルジョワ階級の女性たちは一人では外を出歩けませんでした。家庭室内を女性たちの領域とみなす当時のジェンダー感も透けて見えます」(袴田学芸員)

第3章「室内の外光と自然」では、印象派がしばしば絵画の舞台に選んだバルコニーやテラス、温室といった屋内と屋外の中間領域に注目する。《温室の中で》は、バルトロメが、温室に足を踏み入れる妻を描いたもの。明るい戸外とほの暗い室内の対比のなかで、内と外の領域をまたぐ一瞬が捉えられている。

そして最終章となる第4章「印象派の装飾」では、印象派が室内の装飾品として制作した作品を見ていく。モネの《七面鳥》は、印象派の初期の支援者だった実業家エルネスト・オシュデの城館内を装飾するために描かれた作品だ。

モネは世紀転換期から水蓮の池をモチーフにした作品群に着手し、それらはやがて大型の装飾画となって見る者を囲うことで、室内にいながらにして自然への没入を可能にした。ここででは、国立西洋美術館が所蔵するモネの《睡蓮》ほか、同じく花々が画面全体を覆うカイユボットの装飾パネル《ヒナギクの花壇》などが紹介される。


上白石萌音「印象派が描いた当時の気配を感じてほしい」
記者発表会の最後には、同展のアンバサダーで音声ガイドも担当する俳優・歌手の上白石萌音が登壇。印象派の絵画が好きだという上白石が同展で楽しみにしている作品はモネの《アパルトマンの一隅》とのこと。

「モネが息子のジャンを描いた作品なのですが、暗い室内の奥にある窓から淡い光が差し込んでいるすごくきれいで静かな絵です。光を捉えるのが得意だったモネが描く、彼ならではの室内の絵という感じがします」と、この作品に心惹かれる理由を説明。続けて、「同じ名前だけに、どうしてもモネ推しになってしまいますね」と話し、会場の笑いを誘った。
また、今回、音声ガイドに出演するにあたり、声で表現する上で意識していることは?という質問に対しては、「声を当てる対象に心を寄せるということ」と回答。「今回はその対象が絵画になりますので、絵をしっかり見て、その息遣いを感じて、展覧会をご覧になる方のいいお供ができるよう心を込めて努めたいと思っています」と意気込んだ。
最後に、「私は美術館に行くのが好きなのですが、絵画の前に立つたびに、画家が一心不乱に向かったまさにそのキャンバスの前に今、私は立っているんだなという感動を覚えます。当時の空気がまだそこに保存されているような気がして、タイムスリップをしたような不思議な感覚になります。今回は、印象派が描いた当時の室内の静かな移ろいや、暮らす人々の息遣い、暮らしの気配を感じに、ぜひ国立西洋美術館に足をお運びください」と展覧会をアピールした。
<開催情報>
『オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語』
2025年10月25日(土)~2026年2月15日(日)、国立西洋美術館にて開催
公式サイト:
https://www.orsay2025.jp
■『オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語』記者発表会の動画はコチラ
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