「フルートの可能性を知ってほしい」――女流作曲家に光を当てるソロリサイタル「鎌田邦裕フルートリサイタル 〜 U-N-I-T-Y〜」
クラシック
インタビュー


鎌田邦裕
2023年にイギリスで開催された第1回リバプール国際フルートコンクールで第1位を受賞するなど、国内外で活躍する鎌田邦裕が20歳から続けるソロリサイタル。「U-N-I-T-Y(ユニティ)」と題した本公演では女流作曲家に焦点を当て、300年前のバロックから現代までの曲を演奏する。音楽と軽妙なトークでフルート音楽の魅力を伝える鎌田に、本公演への意気込みを聞いた。
――毎回テーマ性のあるソロリサイタルを開催されています。12回目となる本公演で、女流作曲家をフィーチャーしようと思ったきっかけはなんですか。
鎌田 今回のプログラムに入っている「ファンミ・イメン」という曲は、私が優勝したリバプール国際フルートコンクールの課題曲でした。この曲はアメリカの黒人女性作曲家ヴァレリー・コールマンの作品で、モールス信号の「U-N-I-T-Y」というリズムが出てくる。私はこのメッセージから、女性たちの社会進出が難しかった時代について考えてみたんです。昔は男性たちが自分の仕事や地位を奪われることを恐れて、女性の社会進出を拒んでいた。当時の状況は、AIに仕事を奪われるかもしれないと不安を抱えている現代人と同じではないかと感じました。
――女性たちの社会進出とAI問題の状況が似ていると気づいた。
鎌田 どんなにAIが発達しても、人間だからこそできることが多くあります。女流作曲家の作品を通して、「人間の力」を感じられるリサイタルにできたらと考えています。
――少し難しそうな気もしますが、初めて演奏会に行く人も楽しめるでしょうか?
鎌田 もちろんです! 私のリサイタルでは、演奏前に曲の解説や聞きどころなどをお話ししています。たとえば、現代曲の中には“フルートを吹きながら歌う技法”など面白いテクニックが入っているので、演奏前に私が実践して「ここが面白いから注目してね」と紹介しています。美術館の音声ガイドのように、作品を深く知るコツをしっかりナビゲートしていますから、安心してください。
――クラシックに馴染みのない方や子どもも楽しめそうですね。
鎌田 最近は音楽アプリでフルート演奏のライブ配信をしているのですが、フルートやクラシックに興味がなかった人もファンになって、リサイタルに足を運んでくださったりします。先ほどお話ししたテクニックの実践解説では、子どもたちの反応もとても良いんです。誰もが楽しめるリサイタルなので、難しく考えずに来てもらえたらうれしいです。
――鎌田さんが思うフルートの魅力はなんですか。
鎌田 ピアノやヴァイオリンは弦を響かせて音を鳴らしますが、フルートは息そのものを震わせて音を出すので、よりダイレクトな音色が魅力だと思います。理想としては、穴の開いた筒に風が吹いて音が出るような、自然体の心地いい音を奏でたいです。
――ソロリサイタルならではのフルートの楽しみ方を教えてください。
鎌田 フルートは高音のイメージが強いですが、低音は太くてとても豊かな音がします。オーケストラではいわゆる“フルートらしい音”を求められることが多いですが、ソロリサイタルではお客様にフルートのいろいろな面を楽しんでいただきたいと思っています。きっと「こんな音も出るんだ」と驚くはずなので、ぜひフルートの可能性を体感しにいらしてください。
取材・文=北島あや
<公演情報>
「鎌田邦裕フルートリサイタル~U-N-I-T-Y~」
【東京公演】
日程:6月27日(金) 19:00開演(18:15開場)
会場:江東公会堂(ティアラこうとう)小ホール
【鶴岡公演】
日程:8月5日(火) 19:00開演(18:15開場)
会場:荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)大ホール
【山形公演】
日程:8月9日(土) 14:00開演(13:15開場)
会場:山形県郷土館「文翔館」議場ホール
出演:鎌田邦裕(フルート) / 三上翼(ピアノ)
【プログラム】
C. シューマン / 3つのロマンス op.22
C. シャミナード / コンチェルティーノ op.107
M. ボニス / フルート・ソナタ
S. グバイドゥーリナ / 森の音
上林裕子 / 廃墟の風
V. コールマン / ファンミ・イメン ほか
※都合によりプログラムが変更になる場合があります。
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2558995