Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > 英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団 初参加の日本公演で『眠れる森の美女』主演 栗原ゆうがオーロラ姫への思いを語る

英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団 初参加の日本公演で『眠れる森の美女』主演 栗原ゆうがオーロラ姫への思いを語る

ステージ

インタビュー

ぴあ

栗原ゆう (photo:Shoko Matsuhashi)

続きを読む

フォトギャラリー(8件)

すべて見る

2025年6月から7月にかけて、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団(BRB)が、『眠れる森の美女』、『シンデレラ』を携えて、7年ぶりの日本公演を実施する。東京での『眠れる森の美女』公演の2日目に主演するのは、今回が初の日本ツアー参加となるファーストソリストの栗原ゆう。クラシック・バレエの父、プティパによる古典バレエの傑作の一つであり、1977年から18年間にわたりカンパニーを率いたピーター・ライトによる名作のヒロイン、オーロラ姫を演じる。日本での大舞台を控えた彼女に、役柄への取り組みや作品の魅力、BRBでの活動について聞いた。

流れに任せていれば、出会うべき人に出会う

(photo:Shoko Matsuhashi)

──日本公演での全幕作品主演を前に、いまどんなお気持ちでいらっしゃいますか。

光栄としか言いようがありませんが、ものすごく緊張しています(笑)。いい舞台をお届けして、支えてくれたり、教えてくださったりした方々に恩返しできたらと思っています。

──英国ロイヤル・バレエスクール卒業後、BRBに入団しキャリアを重ねてこられましたが、幼い頃からイギリスのバレエに興味を抱かれていたのですか。

小さい頃から、自分からこれをやりたいとかあそこに行きたいと強い気持ちを持つタイプではなく、流れに任せていれば、出会うべき人に出会うものと思っていました。最初はロイヤル・バレエスクールに短期留学する機会を得て、その時に「入学してみたら」と声をかけていただき、「え、入れるの?」という感じでした(笑)。その後ユース・アメリカ・グランプリでの優勝を経てロイヤル・バレエスクールで学び、卒業を前に一番先にオファーをくださったのがBRBだったので、ただただ嬉しくて、『入ります!』とお返事をしたんです。

──入団は2018年、当時の芸術監督はデヴィッド・ビントリーでした。その後2020年1月にはカルロス・アコスタが新たに芸術監督に就任、しかもすぐにコロナ禍に突入という時期でしたね。

そうでした。いまのシーズンが終わると丸7年在籍したことになります。「もうそんなに!?」という気持ちです。何度もチャンスをもらうと、少し余裕が出てきたり、上達したことを実感できたりするので、アコスタ監督にはすごく助けられていると感じます。初めて取り組んだ全幕の主役は、2021年の『シンデレラ』。ビントリーの作品ですから、配役の決定にはビントリー自身も携わっていたと思うので、すごく嬉しかったですね。

──ファーストソリストに昇進されたのが2022年。昇進のきっかけとなった作品、舞台はありますか。

アコスタ版『ドン・キホーテ』でキトリを踊りました。主役に配役されたとはいえ、私はまだソリストでしたから、日替わりでいろんな役を踊るんです。キトリにメルセデス、ドリアードの女王、それからその周りにいる妖精も(笑)! キャスト表の最初から最後まで自分の名前が入っていて、一つのショーでドリアードの女王とメルセデスを同時に踊った日も。「やり遂げた!」という感じがありました。その後ファーストソリストに昇進したので、自分は試されていたんだなと思いました。

(photo:Shoko Matsuhashi)

──アコスタ監督からもお祝いの言葉が?

「おめでとう」と言ってくれたのですが、「とっくに決めていたよ」という雰囲気でした。本当にありがたいですね。彼が芸術監督になってからは、現代振付家のクリエーションや新しいレパートリーに挑戦する機会も増えました。バランシンの『アポロ』のテレプシコール役に挑戦できたのは、とても価値あることでした。バランシンのスタイルはとても自由で新鮮で、大好きになりました。ずっとトレーニングしてきたクラシックのスタイルに、違う色が加わった感覚があります。

──『眠れる森の美女』のオーロラ姫に初めて取り組んだのは?

先シーズン、ライト版『眠れる森の美女』40周年の記念の舞台でした。バーミンガムでのオープニングナイトで踊らせていただいたんです! もちろん嬉しかったけれど、私にできるかな、という気持ちもありました。古典の全幕作品は、重みが違います。誤魔化しは全然きかないし、日々やってきたことがそのまま出てしまう。責任が重くのしかかってきて、軽い気持ちではできないなと実感しました。

『眠りの森の美女』(Photo:Tristram Kenton)

──『眠り』では、主役のほかにどんな役柄を経験されていたのですか。

いえ、経験していないんです。でも実は、スクールの生徒だった時にツアーに参加させていただいて、コール・ド・バレエを踊っています。こうした経験を積み重ねることってとても大事なんですね。作品全体の価値に気づく機会、ちょっとずつステップアップする機会をいただいたように思います。『くるみ割り人形』の花のワルツを踊らせてもらったのもとても嬉しかったし、『白鳥の湖』の大きい白鳥を踊れたことにも感謝、です。ビントリー時代にそうした経験をたくさん積むことができたので、主役が決まった時も、いきなり『はいっ、次はひとりで!』という感覚にはなりませんでした。コール・ドのダンサーたちともとても仲が良いし、踊っている時も目が合えば支えてくれていると感じられる。温かいカンパニーですね。

絶対的にエレガンスを大切にするのが“ロイヤル”

──初めてオーロラ姫を踊った時は、振付家のピーター・ライトもいらっしゃったのですか。

そうなんです! 終演後には「最初から最後まで、ずっと期待を膨らませながら観ていられたよ」と声をかけてくださいました。バレエって時代に合わせて色々変わっていくので、脚をより高く上げるようになったり、より大きく動くようになったりするものですが、ピーターに観ていただくからには、ピーターが「こうしてほしい」と願っていらっしゃる通りにと、踊りを見直してのぞみました。たとえば、激しく動いてチュチュがバサッと派手に揺れてしまうのはエレガントではないですし、片脚で回転するときも上げる足は必要以上に高くしないんです。絶対的にエレガンスを大切にするのが“ロイヤル”、なんですね。

──オーロラ姫という役柄については、どのように捉えて取り組んでいらっしゃいますか。

オーロラ姫を演じる栗原ゆう(Photo:Tristram Kenton)

全幕を通して、オーロラ姫が成長していく様を見せていきますが、それがとても難しい。第1幕の誕生日のお祝いの場面では、初めて多くの人の前に出て、おもてなしをして、16歳にして初めて社交性を試されます。彼女は品格と華を持っていて、でも16歳ですから、無邪気さもピュアなところも、素直さも好奇心もある。振付もアップテンポで元気な感じなので、そんなところもピックアップできたらと思っています。第2幕の幻想の場もすごく大事で、BRBの『眠り』では、王子の前に現れたオーロラ姫が本当にそこにいるのかいないのか、観ている方次第で解釈が変わってくると思います。私としては、まるで香水の香りが漂っているかのように、感じられているかいないのかわからないくらいのバランスで──。とっても難しいけれど、大事にしたいですね。

──大きな見どころとなるグラン・パ・ド・ドゥが踊られる第3幕では、成長したオーロラ姫が登場するわけですね。

『眠りの森の美女』(Photo:Tristram Kenton)

お姫さまが、やがて女王になる。その変化について考えてみると、16歳の時から持っている品格と華に重みが加わり、地に足をつけて皆を率いる存在になる。それを身体でどう表現するか──。このバレエはテクニックが難しいとかスタミナが必要だとか、求められるものはいろいろですが、大切なのは技術だけでなく、技術を“使って”その人柄やストーリーを伝えること。すごく挑戦的で、難しいところではあります。王子役のラクラン・モナハンはとても音楽性豊かで、一緒に踊っていてすごく安心感があります。パートナーに恵まれているなと思いますし、パートナーシップもどんどん強くなっています。

──あらためて、ライト版『眠り』の魅力、その素晴らしさについて教えてください。

歴史あるプロダクションですね。まさに総合芸術で、セットだったり衣裳、髪飾りのちょっとした細工だったり、舞台を作り上げている構造もすごく工夫されています。こうした作品に関わることができて、本当に恵まれています。振付が音とすごく調和していて、踊りを聴いて、音楽を観ていると錯覚しそうなほど。それはBRBならではだと思いますし、イギリスのバレエらしく、とてもドラマティックでもあります。

『眠りの森の美女』(Photo:Tristram Kenton)

──日本公演もとても楽しみですが、その先の活躍にも期待が寄せられています。

年齢とともに踊りの質は変わると感じるので、これからどうなっていくのか自分でも楽しみなんです。同時に、バレエと離れたところにある自分の人生もしっかりと確立できるよう、心がけています。普通の人間として、いろんなことに対する理解を深めて取り組むことが、バレエを高めることに繋がると思っています。

──普段の生活ではどんなことを大切にされているのですか。

人と話したり、出会いを作ったりすることです。ピアノをやっていたこともあるので、ピアノを弾いたり、絵を描いたりすることも大好きです。

──絵を!? どんな絵を描かれるのですか。

油絵です。最近始めたことなので、素晴らしい絵が描けるかというときっとそうではないけれど(笑)、ちょっとダークな気分のときはダークな絵になったり、ふわふわしているなというときはすごく幸せな絵ができたり。それは自分に関する発見にも繋がります。

(photo:Shoko Matsuhashi)

取材・文:加藤智子

<公演情報>
英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団『眠れる森の美女』

日程/出演者
【東京公演】
2025年6月20日(金) 18:30
オーロラ姫:アリーナ・コジョカル(ゲスト・アーティスト)
王子:マチアス・ディングマン

2025年6月21日(土) 14:00
オーロラ姫:栗原 ゆう
王子:ラクラン・モナハン

2025年6月22日(日) 14:00
オーロラ姫:アリーナ・コジョカル(ゲスト・アーティスト)
王子:マチアス・ディングマン

指揮:ギャヴィン・サザーランド
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

会場:東京文化会館

【大阪(堺)公演】
2025年7月2日(水) 18:30
オーロラ姫:セリーヌ・ギッテンス
王子:ヤシエル・ホデリン・ベロ

会場:フェニーチェ堺 大ホール

【愛知(名古屋)公演】
2025年7月5日(土) 14:00
オーロラ姫:セリーヌ・ギッテンス
王子:ヤシエル・ホデリン・ベロ

会場:愛知県芸術劇場 大ホール

演奏:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団
(堺、名古屋)

チケット情報

公演特設サイト:
https://www.nbs.or.jp/lp/brb/2025/

フォトギャラリー(8件)

すべて見る