【展示レポート】『上村松園と麗しき女性たち』山種美術館で開催中 理想とする清澄な女性像を追求した画業を概観
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すべて見る近代日本を代表する女性画家・上村松園の生誕150年を記念し、各地で回顧展が開催されているが、東京・広尾の山種美術館では、『【特別展】生誕150年記念 上村松園と麗しき女性たち』と題した展覧会が開催中だ。

山種美術館の創立者、山﨑種二は、美人画の名手として知られた上村松園と親しく交流し、日本有数の松園コレクションを築き上げた。同展では、これらのコレクションに加え個人蔵の作品4点をあわせ計22点で松園の画業を概観。さらに松園と同時代の画家から現在活躍中の若手作家に至るまで、多様な女性像が紹介されている。
外見だけでなく高い品格をも表現した女性像
展示は全3章で構成。第1章「上村松園の世界」では、画業初期の28歳ごろに描いた《姉妹》から、晩年の《杜鵑を聴く》まで22作品がおよそ年代順に並んでいる。

1875年、京都に生まれた上村松園は、京都府画学校に入学した後、鈴木松年や幸野楳嶺、竹内栖鳳らに師事。江戸から明治にかけての風俗の研究や、膨大な数の古画の模写などを通じて研鑽を重ね、10代のころから頭角を現していく。
同館の作品のなかでも最も有名な作品のひとつ《蛍》(1913年)は38歳のときに描いた作品。夏の夜、蚊帳を吊っている女性が、ふっと目を下にやると蛍が1匹飛んでいるのに気づいた、その瞬間を捉えている。当時、松園は江戸時代の風俗画を熱心に学んでおり、本作は、喜多川歌麿の浮世絵を参考にした可能性が指摘されている。

この《蛍》と、昭和に入ってから描かれた《新蛍》(1929年)とをぜひ見比べてみてほしい。松園は、このような簾越しの美人図を何点も描いているが、《新蛍》は1930年に開催されたローマ日本美術展に出品するために、改めて過去に描いたテーマに取り組んだ作品だ。


「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願」と語り、その言葉のとおり外見だけでなく高い品格を感じさせる理想の女性像を追求し続け、美人画の第一人者としての地位を確立していった松園。第1章の後半には、第2回新文展に出品した大作《砧》、帝室技芸員に選出された昭和19年の作品《牡丹雪》など、晩年の円熟期に描かれた名作が並ぶ。

亡くなる前年の1948年、松園は73歳のときに女性として初めて文化勲章を受章。当時の男性優位の画壇において、類まれなる努力で独自の表現を貫き通し、高い名声と評価を手にした松園の画業は、後進の女性画家たちの指針となった。最晩年も精力的に描き続け、《庭の雪》《杜鵑を聴く》など、さらに研ぎ澄まされた女性像を残している。


松園以降の多様な作品でたどる美人画の系譜
第2章「美人画の時代」では、松園と同時代もしくは以後に活躍した画家たちが描いた女性像に注目。2025年は、松園の次世代の女性画家であり院展で活躍した小倉遊亀、片岡球子のそれぞれ生誕130年、120年という記念の年でもある。ここでは、ふたりが描いた個性豊かな女性像を紹介。ほかにも、松園と同時期に東京の画壇で活躍し「西の松園、東の清方」と並び称された鏑木清方や、清方の弟子にあたる伊東深水などの作品から、美人画の系譜をたどることができる。


さらに第3章「女性表現の多様な広がり」では、現代の作家たちが女性をテーマに描いた作品を展示。松園から現代作家まで、さまざまな画家たちが表現した麗しき女性たちの姿を、見比べて楽しんでほしい。

<開催概要>
『【特別展】生誕150年記念 上村松園と麗しき女性たち』
2025年5月17日(土)~7月27日(日)、山種美術館にて開催
公式サイト:
https://www.yamatane-museum.jp/exh/2025/uemurashoen.html
■『【特別展】生誕150年記念 上村松園と麗しき女性たち』展示風景の動画はこちら
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