【レポート】堂本光一&井上芳雄『ナイツ・テイル -騎士物語-』ARENA LIVE始動 “帝劇から始まった物語”を新たな舞台で
ステージ
ニュース

『ナイツ・テイル -騎士物語-』ARENA LIVE製作発表会見より、左から)日本語脚本・歌詞の今井麻緒子、脚本・演出のジョン・ケアード、出演する島田歌穂、宮川浩、音月桂、堂本光一、井上芳雄、上白石萌音、大澄賢也
続きを読むフォトギャラリー(7件)
すべて見る堂本光一と井上芳雄の初タッグ作品として注目され、2018年の初演時にはチケットが争奪戦となった話題のミュージカル『ナイツ・テイル -騎士物語-』が今夏、ARENA LIVEとして再登場する。その製作発表会見が6月3日、都内で行われ、堂本と井上のほか、共演の音月桂、上白石萌音、島田歌穂、宮川浩、大澄賢也、脚本・演出のジョン・ケアード、日本語脚本・歌詞の今井麻緒子が登壇した。
2000年に帝国劇場最年少座長として『MILLENNIUM SHOCK』に主演、その後20年以上作品を背負い続け、『SHOCK』を日本演劇界が誇る金字塔へと導いた堂本光一と、同じく2000年に帝国劇場の『エリザベート』ルドルフ役で鮮烈なデビューを飾り、今やミュージカル界の顔となっている井上芳雄。『ナイツ・テイル』は、それまで舞台で交わることがなかったこの同世代のスター二人を主演に据えることからスタートした企画だ。ここにロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの名誉アソシエイトディレクターであり、『レ・ミゼラブル』初演を演出したジョン・ケアードが脚本・演出として参加。ケアードが二人のために用意したのはシェイクスピア最後の作品として知られる『二人の貴公子』(共作・ジョン・フレッチャー)のミュージカル化だった。日米英のスタッフが集結し創られたステージは大好評を博し、2020年にはシンフォニックコンサート版、そして2021年には再演もされた。その伝説の作品が6000人規模の劇場で、東京フィルハーモニー交響楽団の演奏で上演される。

堂本は「このメンバーでまた『ナイツ・テイル』ができることを本当に嬉しく思います。やればやるほど色々な発見がある作品なので、こういった形で上演できることが嬉しい」、井上は「再演が終わった時に、これでセットも破棄すると聞いたので、もうやることはないのかなと思い、作品とお別れした気持ちでした。形を変えて思いがけない再会が続くことは本当に幸せなことですし、それだけこの作品が可能性を持っているということだと思う。僕にとっては光一くんと出会った作品。今回もまた新しい出会いもあると思うので、楽しみにしています」と、ともに期待を語る。
本作を4年ぶりに上演することに対し、ケアードは「私はロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで様々なシェイクスピア作品を演出してきましたが、『二人の貴公子』は特に難しいとされているもの。女性の扱い、性差別的な面が強くあまりに時代遅れ、古臭いんです。でも逆に言えば、そこを書き直せばいいということ。だから僕がシェイクスピアのために、現代でも耐えられるものに書き直してあげました(笑)。大きなテーマは3つです。戦争の悪、環境保護、社会における女性の地位の向上。今はこれまで以上にこの3つのテーマが大事になってきている。だからこの時期にこの作品を再びやれることを嬉しく思います」と、意義を語った。

会見ではキャストたちがお互いの発言にツッコミを入れあったりと、親し気で和気藹々とした雰囲気だったが、音月、上白石、島田、大澄は初演からの続投。音月は「初演時、ジョンや麻緒子さんが家族のようなカンパニーを作り上げてくれた。コンサートや再演でみんなの絆も深まっています。また新たな作品を生み出せる気がします。楽しみです」と期待を寄せるとともに、会見の会場が羽田空港近くだったことに触れ「この作品はいずれ世界に羽ばたくんじゃないのかな」とも話す(ここですかさず井上が「世界に羽ばたくのなら羽田じゃなくて成田じゃないの?」とツッコミを)。
上白石は「7年前の初演時、私はまだ成人したばかりで右も左もわからず、先輩方の背中を追ってなんとか1公演ずつ重ねていた。公演がない期間も劇中歌を口ずさんでしまうほど自分の一部になっている作品ですが、再演やコンサートで出会い直すたびに、奥深さや難しさを感じ、初心に帰ります」と作品への思いを語り、「初演の時は、芳雄さんと親子のようだと言われていましたが、ちゃんと恋人に見えるように頑張りたい」と意気込みを。島田は「初演は、一からオリジナル作品を創っていく現場が毎日新鮮で楽しく、その時間を共有させていただけたことは本当に宝物でした。今回は今までにないスケールでの公演です。一体ジョンがどんなことを考えているのか、どんな“ジョンマジック”が起きるのか、心から楽しみにしています」と話した。
大澄は「2018年の初演がジョンとの出会いでしたが、その後『ジェーン・エア』『千と千尋の神隠し』と毎年のようにジョンと仕事をさせていただいています。この7年は役者としても成長させていただいたとジョンに感謝しています。今年は年男で厄年ですが、芸能の世界では厄年は“いい役につく”年でもあると言われている。このコンサートが自分にとっても新たなスタートになるのでは」と期待を語る。
宮川のみ今回初参加だが、共演経験のあるキャストも多く、中でもケアードと島田の二人とは、1987年の『レ・ミゼラブル』日本初演からの付き合い。「ジョンは、僕が21・2歳でこの世界に入り、初めてお会いした演出家。お父さんのように思っています。それから40年この世界で俳優としてやっているのはジョンのおかげ。作品については今勉強中ですが、皆さんを頼って頑張ります」と意気込んだ。
今まで観たことのない“ミュージカルのコンサート”
この日は松井るみが手掛ける舞台セットのデザインも初披露。森の中のようなそのイメージ図を見ながらケアードが「るみさんにはとにかく自然をたくさん取り入れてほしいとお願いしました。舞台の奥には東京フィルハーモニー交響楽団がいます。さらに和楽器も8人、前回の倍の人数がいます。普段のミュージカルの劇場ではできないような大きな音が奏でられます。また、役者たちには常に舞台上にいてもらおうと思っています」と構想を説明。

また脚本については「コンサート版なので、(ミュージカル版からは)大幅に台詞をカットします。その代わり、キャラクターたちが“そのポイントで何が起きているか”を説明し、次の歌の導入とする構成にします。それぞれのキャラクターの視点からこの物語を語っていく、という形です。音楽は全部やります。振付も欠かすことなくやろうと思っています。殺陣もやります」と話した。それを受け井上が「思った以上に“ほぼ本編”……」と唸り、堂本が「どれだけのセリフを覚える必要があるのか……」と話したところで「前回のコンサート版でも、ジョンは当初『みんな台本を持って読みながらお客さまに伝える形にしましょう』って言ったのに、萌音ちゃんが台本を持たずに喋っていたのをきっかけに誰も台本を持たなくなった(から、覚えなければいけなくなった)……」と思い出したように上白石に苦情を。これに対し上白石は「意義あり、それ私じゃないです! 私も今、誰かが言い始めて台本を持たなくなったんだよなと思っていたところです」。それでも「萌音ちゃんだったと思う」と言いつのる堂本に、上白石はしぶしぶ「なんか……ごめんなさい。今回はお二人が台本手放さない限り、私はずっと持ってやります」と宣言するという一幕も。さらに「自分たちはどのくらいセリフを覚える必要があるのか」と問う井上に、ケアードも「私は(コンサート版は)セリフを覚えなくていいって言っているのに、結局覚えるのはあなたたちじゃないですか(笑)」と言い返していた。なお、ケアードによると上演時間は2時間20分から30分、休憩なしを予定しているとのこと。

音月が「光一さんと芳雄さんの夫婦漫才のような雰囲気を、今回もこうして見ることができて幸せ」と語るように、堂本と井上のテンポのよいやりとりが幾度となく爆笑を呼び、二人の絆の強さも伝わってきた会見だったが、会見中には堂本と井上が二人で、立ち入りができなくなる直前の帝国劇場に最後のお別れを言いに行き、がらんとした稽古場や畳も全部はがされた楽屋、内壁が崩された劇場を見て感傷的になったというような話も。「この作品は帝国劇場から始まったもの。今年、帝国劇場が(建替えのため)一度閉じて、再開場まで5年程度かかると言われていますが、その間にも“繋いでいく”という意味もあるのだと思います」と堂本。

会見は最後に、井上が「まだどうなるのか、僕たちもわからないこともたくさんありますが、確実に言えるのは、今まで観たことのない“ミュージカルのコンサート”になるでしょう。コンサートという言葉の印象よりはもっとミュージカルの舞台を見てるのに近く、でもとても大きな会場で、フルオーケストラで上演する。とにかく新しい体験になると思うので、楽しみに来ていただければ」、堂本が「今日みんなの顔を見て、ジョンとも再会して、ワクワクがどんどん増幅していきました。この空気感を持ったまま、締めるところは締め、緊張感とともにステージに立ちたい。『ナイツ・テイル』の世界を再び皆さんにお届けできることを、楽しみにしています」とそれぞれ意気込み、終了した。
公演は8月2日(土)から10日(日)にかけ、東京・東京ガーデンシアターで上演される。
取材・文・撮影:平野祥恵
<公演情報>
ミュージカル『ナイツ・テイル -騎士物語-』ARENA LIVE

脚本・演出:ジョン・ケアード
作詞・作曲:ポール・ゴードン
日本語脚本・歌詞:今井麻緒子
音楽スーパーバイザー・オーケストレーション・編曲・指揮:ブラッド・ハーク
振付:デヴィッド・パーソンズ
振付助手:大澄賢也/西岡憲吾
アクションコーディネーター:諸鍛治裕太
歌唱指導:中井智彦
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 東宝ミュージック ダット・ミュージック
【出演】
アーサイト:堂本光一 パラモン:井上芳雄
エミーリア:音月桂
牢番の娘:上白石萌音
ヒポリタ:島田歌穂
シーシアス:宮川浩
ジェロルド:大澄賢也
牡鹿:松野乃知
穴井豪 岩下貴史 大山五十和 佐藤セイガ 西口晴乃亮 石井亜早実 遠藤令 酒井比那 塩川ちひろ 知念紗耶 富田亜希
植木達也 神田恭兵 小西のりゆき 茶谷健太 照井裕隆 中井智彦 広瀬斗史輝 本田大河
青山郁代 岩瀬光世 咲花莉帆 田中真由 堤梨菜 原梓 藤咲みどり 水野貴以
邦楽:武田朋子(篠笛・能管) 小濱明人(尺八) 織江響(津軽三味線) 松橋礼香(津軽三味線) 三浦公規(太鼓) 内藤哲郎(太鼓)/石川直(太鼓) 日野一輝(太鼓)
2025年8月2日(土)~10日(日) ※12回公演
会場:東京・東京ガーデンシアター
★チケット一般発売は7月6日(日) 11:00より
https://w.pia.jp/t/kt2025/
公式サイト:
https://www.tohostage.com/kt2025/
フォトギャラリー(7件)
すべて見る