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arko lemming自主企画『mouse trap vol.1』 Czecho No Republicを迎えて新曲「swifter」リリースを祝う「7年ぶりって引きますよね、さすがに」

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arko lemming『mouse trap vol.1』6月1日(日) 東京・下北沢SHELTER  Photo:タイコウヨシクニ

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Text:石角友香

ドレスコーズやyama、崎山蒼志や0.8秒と衝撃。らの音源やライブをギター、ベース、ドラムでサポートするマルチプレーヤー有島コレスケのソロユニット、arko lemming(アルコレミング)が7年ぶりの新曲となる「swifter」を配信リリース。これに伴う自主企画“mouse trap”の1回目が6月1日に下北沢SHELTERで開催された。ゲストにCzecho No Republic(チェコノーリパブリック)を迎えたことに意外だという声もあがっていたが、実はバンド活動をスタートした2010年代前半に近いライブシーンにいた両者。加えて最近のCzechoの動きに有島が共感していたというエピソードもあり、ライブが進むに連れ、その核心が見えたツーマンライブだった。

Czecho No Republic Photo:藤咲千明

マイクスタンドやキーボードに花があしらわれ、すでにハッピーなムードが醸し出されるステージにCzechoのメンバー、そしてサポートベースのオオナリが登場。スターターはメンバーのシンガロングが響き渡る「Amazing Parade」。サポートベースを入れ、武井優心(vo/g)がボーカルとギターに徹することで生まれるパフォーマンスの自由度に目を奪われる。じっとしていられないチアフルさ、武井とタカハシマイ(vo/key)の華やかさはキャパシティを超えていく勢いだ。

タカハシマイ(vo/key)Photo:藤咲千明

さらにタカハシと武井が交互に歌う「Bad Dreams」ではハンズクラップがどんどん広がり、もうすぐやってくる真夏を予感させる「Electric Girl」でのタカハシの深みと艶を増したボーカルに心拍が上がる。これまでも痛快なライブを見せてきた彼らだが、アルバム『Mirage Album』リリース後の開かれたパワーは完全にバンドの新章だ。

Czecho No Republic Photo:藤咲千明

MCも明快だ。arko lemmingのリリースパーティーであることにかけて「アーティストにとってリリースパーティーは誕生日みたいなもの。初めての人も新しい音楽に出会う誕生日ということで」と、インディポップにエバーグリーンな色彩が混ざり込んだ「Happy Birthday」を披露。砂川一黄(g)と武井のツインリードや三拍子の優雅さもアクセントに。続くポストパンクなビート感のドリームポップ「Friend」ではタカハシの透明感あふれるボーカルが上昇していくような恍惚感を作り出した。

砂川一黄(g)Photo:藤咲千明

オーディエンスを巻き込んでのパフォーマンスも自然で、「もっと楽しくなるためにサビで簡単にできる振り付けを持ってきたからやってみてね」と、タカハシが軽くレクチャー。その曲は新作の中でも新しい側面を見せたディスコファンクな「Psychedelic Night」で、山崎正太郎(ds)のシュアな4つ打ちとオオナリの腰に来るベースラインがフロアを踊らせる。ダンスでひとつになったところにちょっと懐かしいキラーチューン「No Way」を投下し、さらにエレクトロニックなダンスチューン「Firework」で畳み掛ける。サビではドラマーの山崎まで左手を挙げ、高く高く飛翔するイメージを全力で伝えていたのが印象的だ。

山崎正太郎(ds)Photo:藤咲千明

短いMC以外、8曲を駆け抜けてきたところで、「Psychedelic Night」にarko lemmingのカバーをつなげる段取りをすっ飛ばしたと武井。山崎がミスを白状し、急遽「星に願いを」のワンコーラスを披露した。できればどう1曲に繋げたのか聴いてみたかった。が、それ以上に今回の共演の経緯は腑に落ちる以上の熱さだったのだ。ともに15年ほど活動していて、ときにバンドを続行してくれていること自体に感謝されるが、そんなことをファンに言わせるのはダサいと武井。いつか見なくなった夢をもう一度掲げる意味で、2030年の武道館ワンマンを目指すと宣言。すでに発表していることだが、本人の声で聴くと強度が違う。そこから、何のためにとかは置いておいて、冒険の旅への欲求を頼りに進む新曲「Sing Again」が、宣言のように歌われたのだった。

武井優心(vo/g)Photo:藤咲千明

武井のMCでグッと共演の意味が立体的になったところで、ホストバンドarko lemmingがカーペンターズの「クロース・トゥ・ユー」を韓国のベテラン歌手キム・サン・ヒーがカバーしたバージョンに乗せて登場する。今回は有島も作品やライブに参加する中川昌利(b)と、told時代からの盟友、赤羽進互(ds)の3ピース編成だ。これまでのライブではギタリストを入れた4人編成だったが、今回は有島のギタリストとしての比重も自ずと大きくなるはず。その予感は1曲目の「街」で的中し、ロマンティックなオルタナティブロックを嵐のようなシューゲイズギターのエンディングでアップデートしたのだった。一転、テンション系のコードを多用した「stop!(primal)」では有島の甘やかなボーカルもあいまって洒脱さが際立つ。だが、部分部分にソリッドなギターカッティングが挟まれ、定石を軽く覆す。ちなみに美しいジャズマスターはこのライブに向けて入手されたものらしい。

arko lemming Photo:タイコウヨシクニ

三段論法もかくや「7年ぶりにシングルをリリースしまして今ここにいる」「ひとりでは心もとないのでバンドでライブをしている」「一組では心もとないということで2バンドでライブをしているというわけです」という説明的なMCも有島のキャラクターを知るファンにはむしろホッとするものだろう。今日もバンカラさと丁寧さが独特なバランスでミックスされている。

arko lemming Photo:タイコウヨシクニ

ギターの比重が高いだけにギターそのものも適材適所の1本が選ばれる。クリアボディのフルアコースティックというのだろうか、ユニークなギターがボサノヴァテイストのリフに似合う「アロウ」をアップデートした印象を受ける。ボーカルはファルセットを多用し、意味より音のひとつとして耳に届く。そして緩やかな哀しみが立ち上がる「スーサイド」では自身もボーカリストである中川の歌心あふれるベースラインにも魅せられる。そして有島のジャズやブルース寄りのフレーズもせつなさを増幅させるのだ。

この3人のアンサンブルということと、シンプルな生音で豊かに構築するということ以外、特定のジャンル感に縛られないレパートリーは次の「Avec」で往年のファンク/フュージョンの匂いにも近づいていく。中川の重くむっちりしたベースでスライ&ファミリーストーンばりの肉体性を獲得したライブバーションは乖離していく関係を描く歌詞と微妙なズレを作り出して、音源とはまったく違うアウトプットで楽しめた。

有島コレスケ Photo:タイコウヨシクニ

新曲を披露する前に「シングルを出したんですよ。7年ぶりって引きますよね、さすがに」と、彼らしいセルフツッコミ込みの発言をきっかけに曲の説明をすることもなく、まず「swifter」を演奏する。日常のさまざまな“速さ”をテーマにしているという曲だが、「同じような未来じゃもう面白くないのさ」という歌詞には去年からarko lemmingで再び動き出した事実がなんとなく重なる。加えて軽快なカッティングは音源よりさらに冴え、バンド形態ならではのスリルは少しコリー・ウォンを想起したりも。ポップなファンクチューンだが、エンディングに向かってゴリゴリのリフを弾き倒す有島にどうしたって自然にはみ出すオルタナティヴな気質を見た。

赤羽進互(ds)Photo:タイコウヨシクニ

もう1曲の新曲「flashback」もリズム隊が非常にタイト。そのボトムの上を幻惑的なギターとボーカルがたゆたうなんとも魅力的な仕上がりに。なんとなくバンカラになりきれない向井秀徳、というワードが頭に浮かんだものの切れ味鋭いギターソロに目を覚まされる。新曲2曲の方向性から今後の共演相手をいろいろ妄想する楽しみも発生してしまった。

中川昌利(b)Photo:タイコウヨシクニ

メンバーと顔を見合わせ「練習した甲斐あったねえ」とホッとした表情の有島は続けてCzechoとの対バンの理由を詳しく話す。冒頭にも書いたが、2010年代に対バンこそなかったものの、武井は近いライブシーンにいて、昨年からのCzechoの精力的な活動が勇気になっていたのだという。「(音楽を)続けてるだけでいいけど、「やったろ!」っていうのはいいなと思った」という共感は年齢やキャリアの近さだけでなく、ストレートな物言いを避けてきたふたりなればこそなんじゃないだろうか。本編は日本語ロックの系譜にある「日々の泡」をセット。オープニングBGMに流れた「クロース・トゥ・ユー」のフレーズをギターで織り込みながら、最後は渾身のインストセクションで締めくくった。

アンコールでは次回9月開催の『mouse trap vol.2』も発表され、ギター&ボーカルの精度を上げた「恋する惑星」で第一回の幕を閉じた。有島ならではの想像の斜め上を行く共演に次回も期待したい。

arko lemming Photo:タイコウヨシクニ


<公演情報>
arko lemming『mouse trap vol.1』

2025年6月1日 東京・下北沢SHELTER
出演:arko lemming / Czecho No Republic

セットリスト

●Czecho No Republic
1.Amazing Parade
2.Bad Dreams
3.Electric Girl
4.Happy Birthday
5.Friend
6.Psychedelic Night
7.No Way
8.Firework
9.Sing Again

●arko lemming
1.街
2.stop!(primal)
3.アロウ
4.スーサイド
5.Avec
6.swifter
7.flashback
8.日々の泡
EN.恋する惑星

<次回公演情報>
arko lemming『mouse trap vol.2』

2025年9月6日(土) 東京・下北沢SHELTER
開場 17:30 / 開演 18:00
出演:arko lemming
※ゲストあり

【チケット情報】
全自由4,000円 / 学割3,000円(要学生証)
※入場時ドリンク代が必要
●オフィシャルチケット先行受付:6月17日(火) 23:59まで
https://w.pia.jp/t/arkolemming-mt2/

arko lemming リンクまとめ:https://lit.link/arkolemming

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