市川團十郎「新歌舞伎十八番を並べるのは意義がある」 七月大歌舞伎『船弁慶』で知盛の霊、『紅葉狩』で鬼女を勤める
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歌舞伎座「七月大歌舞伎」取材会より、市川團十郎
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すべて見る2025年7月上演の東京・歌舞伎座公演「七月大歌舞伎」昼の部で、新歌舞伎十八番の『大森彦七』、『船弁慶』、『高時』、『紅葉狩』の4演目が一挙に上演される。このうち、『船弁慶』、『紅葉狩』に出演する市川團十郎が取材に応じ、「新歌舞伎十八番を並べるのは意義があること。團十郎としての仕事という認識で考えました」と語った。

新歌舞伎十八番とは、江戸から明治にかけて活躍した名優・九世市川團十郎が、父・七世團十郎が制定した「歌舞伎十八番」に続き、新たに家の芸を集めて制定したもの。このうち4演目が一度に上演されることは非常に珍しく、この度は当代市川團十郎が平成19(2007)年(博多座「二月花形歌舞伎」)以来18年ぶりに、『船弁慶』静御前/新中納言平知盛の霊を、平成18(2006)年(歌舞伎座「十二月大歌舞伎」)以来19年ぶりに『紅葉狩』更科姫実は戸隠山の鬼女を勤める。
『船弁慶』は、前半では静御前の愁嘆の舞、後半では知盛の霊の迫力を見せる、女方と立役の踊り分けが見どころ。能狂言を起源に持ち、「雪が降り、春のウグイスが鳴き、紅葉が色づく光景を、視覚的ではなく、見えない世界で表現する。そんな能狂言の素晴らしさを、歌舞伎から勉強させていただき、今の皆様に伝えるのが醍醐味」だと説明。恋と別れ、復讐を描きつつ「長い目で見ると、勝者のいない世界」だと話していた。


一方、『紅葉狩』は、高貴な姫から猛々しい鬼女への変化と、それぞれ異なる魅力を持つ役柄の演じ分けが見どころの舞踊劇だ。「こちらはディテールが面白い。例えば『スター・ウォーズ』みたいな、おとぎ話の基になっている、日本文化の根幹にある勧善懲悪の部分を楽しんでもらえれば」とアピールした。
女方の衣装に身を包むことに「自分で言うのも変ですけど、かなり厳しいですね(笑)」と苦笑いを見せ、「どちらかといえば、逆三角形の男性的な骨格なので、帯の位置も違いますし。ビジュ的に(見た目)はそんなに変わらないと思うので、まあまあ可愛らしく見せられたら」と意欲を見せた。
その『紅葉狩』には、長男・市川新之助と長女・市川ぼたんが出演する。新之助は先月上演された「團菊祭五月大歌舞伎」で、『弁天娘女男白浪』に出演し、尾上菊之助をはじめ、尾上眞秀、中村梅枝、坂東亀三郎という同世代の歌舞伎役者と共演。團十郎は「こういう機会は、あまりなかったことなので、歌舞伎への向き合い方に多面性が増えてきたと思う。刺激を受けたようで、歌舞伎に対しての情熱が少し出てきたように見えます」と、その成長に目を細めた。
また、ぼたんは、『紅葉狩』で侍女野菊を、夜の部『鬼平犯科帳』では少女のおまさを演じる。『鬼平犯科帳』への出演は、主演を勤める松本幸四郎本人が、團十郎の楽屋を訪れて直接オファーしたそうで、「その日の夜に伝えたら、本人が『出たい』と。舞台に対しても、映像でも新たな扉が開きつつある」と、さらなる飛躍に期待を寄せていた。
「七月大歌舞伎」の上演は、2025年7月5日(土) から26日(土)。チケット一般発売は6月14日(土) から開始予定。
取材・文・撮影:内田涼
<公演情報>
松竹創業百三十周年
「七月大歌舞伎」
【昼の部】
一、新歌舞伎十八番の内 大森彦七
二、新歌舞伎十八番の内 船弁慶
三、新歌舞伎十八番の内 高時
四、新歌舞伎十八番の内 紅葉狩
【夜の部】
一、鬼平犯科帳
二、蝶の道行
2025年7月5日(土)~7月26日(土)
会場:東京・歌舞伎座
※7月11日(金)、18日(金)は休演
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2520457
公演情報
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/935
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