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ショパンを愛する牛田智大が、ワルシャワの名門オケと共演

クラシック

インタビュー

ぴあ

©Ariga Terasawa

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今年9月1日(月)、来日するワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団とショパンのピアノ協奏曲第1番で共演する牛田智大(サントリーホール)。同楽団は、5年に一度のショパン国際ピアノ・コンクールで最終審査の演奏を担い続け、世界で最もショパンを理解しているオーケストラ。牛田自身も、現在ワルシャワのショパン音楽大学に籍を置き、作曲家の祖国ポーランドの空気を吸いながらあらためてその作品と向き合っている。幼い頃から何度も弾いてきたこの協奏曲から、どんな新しい表情をたぐり寄せてくれるのだろう。

「ワルシャワ国立フィルはワルシャワでもよく聴きに行きます」いい意味でオールドスタイル。古き良き時代の香りがするオーケストラだという。

「現代的でスマートというよりは、時間をゆったりとって、音楽の中にある要素をひとつひとつ踏みしめていくような、人間味のあるオーケストラなんです。弦楽器がとても魅力的で、弦の呼吸がすごく広くて深い。息の長いフレージングと、すすり泣くようなシルバートーンの甘い音色が魅力です。 なので、とくに今回の東京公演の、ショパンの協奏曲第1番とブラームスの交響曲第1番を組み合わせたプログラムはすごくいいなと思っています。ブラームス的な広い呼吸、大地が広がるような深い呼吸。まさにそういうタイプの音楽に向いているオーケストラなので、彼らの持ち味を最大限に感じられるはずです。そしてその呼吸はショパンの協奏曲の中にも現れます。ひじょうに親和性が高いプログラムだと思います」

©Grzegorz Mart

同オーケストラとはすでに2016年にも、同じショパンの協奏曲第1番で共演している(指揮:ヤツェク・カスプシク)。

「すごく弾きやすかったです。呼吸が広いので、ソリストがすごく自由になれるんです。今回の指揮者アンナ・スウコフスカ–ミゴンさんとはまだ面識がないのですが、指揮をしている映像をいくつか拝見して、すごく面白い、クリエイティヴなアイディアをいろいろ持っている方だなという印象なので楽しみです。ショパン音楽大学を出た方なので、親近感もあります」

ショパンの音楽といえば、自由に即興的に歌うのが典型的なスタイルなのかと思っていたのだが、それは違うと教えてくれた。

「じつはあまり自由でなかったりするんです。ショパンはどちらかというともっと古典寄りです。よく、“力のないベートーヴェン”などとも言われて。本質的にはすごくベートーヴェンに近い。ただし、自由がない音楽なんですけれども、ショパンのもともとのコンセプトとしては、とても即興的で自然に聴こえなければならない。つまり、きっちりと作り込みながらも即興的でなければならないという、ちょっと矛盾したコンセプトがなかなか難しいところ。悩まされる存在です。ただ最近は、自由に弾かれすぎる傾向があるかもしれません。それが認められるようになってきたということだとも思うんですね」

たとえば、これがシューマンだと、演奏家にもっと完全に自由を与えてくれるのだそう。

「シューマンは微妙にショパンに近いようでありながら、枠を見せて、その中だったら演奏家を自由にしてくれる。ところがショパンは、自由に見えていろんなことが決まっている。だからこその完成された美しさがあるんだと思います。

でもそのバランスを考えるのはなかなか大変です。とくに勉強し始めた頃は、これをやらなければいけない、あれもやらなければいけないみたいな感じで、しばられるような感覚がありました。それが最近はだんだん、優先順位をつけていろいろなアイディアを試せるようになって、すごく気楽に弾けるようになりました。やはり長く弾いていると、摑めるものが少しずつあるのかなと(笑)」

©Ariga Terasawa

取材は4月、彼が受賞した2024年度/第51回日本ショパン協会賞のセレモニーの直後に行われた。対象となる一年間で最も優れたショパン作品の演奏者に贈られる賞で、対象となったコンサートは、昨年10月に行われた『六重奏で聴くショパン・ピアノ協奏曲』だった(共演:カルテット・アマービレ、加藤雄太)。

「近い世代の音楽家の方々と室内楽をやりたいという、10代の頃からの希望がやっと実現した公演でした。ピアニストだと、ショパンの協奏曲はこう弾かなければというイメージにとらわれがちなんですけど、同世代だからこそ、もっとフラットな視点から新鮮なアイディアをいただくこともできましたし、フレキシブルに、普段やらないようなこともいろいろ試すことができました。その演奏を評価していただけたことに、とても感謝しています。この経験を、オーケストラと演奏するときも生かして、いろんな面白い要素を提案できるのではないかと思っています」

先ごろ、秋の第19回ショパン国際ピアノ・コンクール本大会(10月)の出場者が発表され、「ショパン」への関心が高まっている。ワルシャワが湧きたつよりも先に、ここ日本で、注目の演奏を聴くことができる。牛田とワルシャワ・フィルが互いに深く呼吸を交わしながら紡ぐショパンの協奏曲に耳を傾けたい。聴き逃せない公演だ。

(宮本明)

アンナ・スウコフスカ-ミゴン指揮
ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団/ピアノ:牛田智大

■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2558414

9月1日(月) 19:00開演
サントリーホール 大ホール

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