『チェン・フェイ 展|父と子』ワタリウム美術館で 北京在住の現代美術家が自伝的なアプローチで描いた新作絵画を中心に展観
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《PDF》2025年
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すべて見る1983年に中国・山西省に生まれ、現在は北京を拠点に活動している現代美術家チェン・フェイ(陳飛)の新作を中心とした個展が、7月3日(木)から10月5日(日)まで、東京・外苑前のワタリウム美術館で開催される。
同展で紹介されるのは、2022年から2025年にかけて描かれた新作絵画15点に加え、高さ7メートルの壁画、インスタレーション、ドキュメントなどだ。出品作の制作のきっかけとなったのは、コロナ下にあって、自分たちが生きている世界がどこかしら不寛容に感じられ、全体が混乱するなかで個人の力があまりに小さく見えたことだという。時代への関心を絵画にとりこもうとしてきたチェンには、大きな混乱と無力感がもたらされたが、その間にチェンは娘を得て、父親となった。そして生活の重心が変わり、多くの時間とエネルギーが子供の成長に向けられるようになった。

そのときに思い出されたのが、ナチス統治下にあって、時代の影響を深く受けたドイツの著名な漫画家E.O.プラウエン(1903-1944)が制作した名作『おとうさんとぼく』。この漫画は、父と子の日常の出来事をユーモラスに描くと同時に、家族、仲間、愛といった、貴重で示唆に富む関係性の意味をきわめて特異な社会的設定の中で探求したものだ。チェンはこの物語を出発点として、今回の展覧会では自伝的なアプローチをとり、夫と妻、父と子の家族関係や、同僚や友人との社会的な力関係を掘り下げ、画家自身の芸術家としての職業的イメージや、中国人画家としてのアイデンティティについての思索も織り交ぜているという。

同展の魅力のひとつは、こうして生まれた作品が、ワタリウム美術館ならでは空間に、サイトスペシフィックなかたちで展示されること。そして何より、娘の成長に日々目を向け、それを作品にしていく経験によって、命や生活そのものへの信頼を取り戻せた感じがしたというチェンが、世界を今どう見ているのか、どのような表現を新たに見せてくれるのか——その展開を目にできるのが楽しみなところだ。
<開催概要>
『チェン・フェイ 展|父と子』
会期:2025年7月3日(木)~10月5日(日)
会場:ワタリウム美術館
時間:11:00~19:00
休館日:月曜(7月21日、8月11日、9月15日)
料金:大人1,500円、大人ペア2,600円、学生(25歳以下)・高校・70歳以上1,300円、中小500円
公式サイト:
http://www.watarium.co.jp/
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