佐野勇斗がレベルアップし続けられる理由「僕が頑張れる言動力はM!LKとファンの存在」
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佐野勇斗 (撮影/稲澤朝博)
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よりよく生きて、よりよく死ぬための準備をする“終活”に焦点をあてた土曜ドラマ『ひとりでしにたい』がNHK総合で6月21日(土)より放送される。
原作は文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞したカレー沢薫の同名マンガとなる社会派コメディだ。ドラマでは、綾瀬はるかが主人公の未婚・子なしの山口鳴海役を務め、大河ドラマ『青天を衝け』や連続テレビ小説『あさが来た』の大森美香が脚本を手がけている。
佐野勇斗が演じるのは、鳴海の同僚で、都庁から出向組のエリート・那須田優弥役。那須田は孤独死を恐れて急に婚活を始めた鳴海に、鋭いツッコミを入れて動揺させ、終活へと意識改革をさせる。
なぜか終活事情や孤独死に詳しい那須田役をどのように演じたのか。キャラクターや綾瀬はるかとの共演について、本作への想いを語ってくれた。
那須田の感情表現は難しかった

――本作のオファーを受けた時のお気持ちと、カレー沢薫さんの原作や大森美香さんの脚本を読んだストーリーの第一印象は?
今回のお話をいただいてから、まず原作を読ませていただきました。取り扱っている内容は終活や独身としてどう生きるかということなど、少し考えないといけないような内容のお話を面白くコメディタッチに描いているので、クスクス笑いながら読み切りました。そして僕もそうですが、脚本家の大森さんも原作にリスペクトを持っている方なので、原作に近い形で脚本を作ってくださっていて、あとは僕がどう演じていくかどうかだなと思いました。
――佐野さん演じる那須田は気持ちをストレートに伝えるのではなく、何かと作戦を練るタイプですが、彼の感情表現についてはどのように感じましたか。
那須田の感情表現はすごく難しくて、ひとことで言うと、「嫌なやつだな」という第一印象だったんです(苦笑)。セリフひとつにしても、そんな言い方をしなくてもいいだろうと思うことも。ただ、那須田にもいろいろと思っていることがあるわけで、演じるうえで一番意識したことは、目の輝きのなさかもしれません。ちょっと死んだ目をしていると言いますか、原作にも彼のそういう雰囲気があったので、そこは意識しました。
あとは、実際に心の中で思っていることはかわいらしいところもあるのですが、その内面と外面のギャップも大事にしたいなと思いながら演じていましたね。僕自身は、けっこう感情表現はストレートの方かもしれません。心の中で思ったことはもちろん整理してからになりますが、けっこうストレートに相手に伝えるタイプです。

ーー終活をテーマにしている内容とあってセンシティブな内容も多く、専門用語も多いですが、ドラマをやるにあたって知ったことなどはありますか。
あらためて思ったことは、両親の今後についてですね。考えればわかることではあるものの、ずっと子どもの頃のイメージのまま、両親はいつまでも元気なものだと思っていました。二人とも50歳を越えて、父親も何年後かには定年の歳にもなってきますし、介護のことを考える時も来るのだろうなと。それは人間だから当たり前のことではあるのですが、よりそのことを実感して。みなさんどこか考えないようにしている問題かもしれないのですが、今回、真剣に向き合いました。今まで面倒を見てもらったぶん、両親の今後について自分に何が出来るか考えないといけないなという、気づきを与えていただけましたね。
――ドラマでは「特養」や「要介護」などの専門用語が出てきます。
そうですね。介護に関する専門用語のなかには知っているものもありましたが、8割ぐらいは意味まで知らない言葉が多くて、今回はそういう意味においてセリフを言うのも本当に大変でした。セリフが多くて詰まったところもあったのですが、綾瀬はるかさんはそんな時も、現場で良い形になるようにしてくださるので、救われました。
――初回ではまだ那須田が終活に詳しい背景が見えてこないですが、普段使わない介護用語以外で、役を演じるにあたって事前に準備したことはありましたか?
那須田があのような感じに育った背景を考えている時に、毒親のモラハラが原因で自己肯定感が持てないでいるとわかって。例えば、ネグレクトのようなことをされていたとして、彼の場合はそこまでひどい扱いではなかったような印象を受けたのですが、役の事前準備としてそういった扱いを受けた子どもたちのドキュメンタリーを観ました。そういう親の元で育った子どもたちは目の動きなどがどんな挙動になるのか、もしかしたら人をあまり信用できないようになるのではないか、といったことを調べました。
――那須田が少し違う個性を持って育ったということですね。
はい。どこか那須田は親の愛に飢えているように感じました。僕自身、これまでありがたい環境でやってこられたのは、本当に両親のことを100%信用しているから。両親への気持ちが100%ではなかった人の場合、どういう生き方になるんだろうかと考えました。

自分自身が納得できる人生になればいい

――那須田は鳴海に「結婚すれば安心って昭和の発想ですよね?」「そもそもそのスペックで無料婚活アプリとか登録しても男、来なくないですか?」などと“婚活”について切り込みます。そして「ひとりでしにたい」というタイトルのように“終活”に進みますが、佐野さんは終活についてはどんな印象ですか?
どちらも素敵なことだなと。終活に関しては、誰しも訪れる話でもありますよね。僕はこれまで、終わり方を考えるという発想もありませんでした。どういう死に方をしたいかなんて、なりゆきでなるようになるものだろうと思っていましたが、考え方によってはどういう死に方をするか、努力次第で選べるのかなと思うようになりました。
――こういった終活のような概念は、昭和・平成・令和と時代によって、ひとぞれぞれ価値観やそのときどきの知識に変化があります。那須田は令和の若者ですが、佐野さんご自身は多様性のあるこの時代の変化はどう感じますか?
僕は昭和っぽい発想の人間なんです。例えるなら、とにかく肩をぶん回して「働けっ」ていう感じの人間なんです、自分に対して。ただ、今の時代は無理をしないという考えの方も周りにいて、そういう生き方もあるんだなと思いましたし、どんな生き方がいいのかは人それぞれだなと感じています。自分自身が納得できる人生になればいいのかなと。僕がもし死ぬ直前に、どういう人生だったかなと振り返るとすれば、その時に後悔をしないように生きていきたい。後悔するようなことをなくしていこうと思って生きています。
――ドラマでは鳴海が、気がついたらこの歳になっても独りだっただけ、というようなセリフを言うシーンも。例えば、仕事をしていたら仕事以外に目を向けられないという人は意外と多いように思いました。
そうなんですね。僕はいろいろなことを並行してやっていくことが苦手ではないのですが、それは「ここをうまくいかせるためには自分を高めなきゃいけない」と思っているだけなんです。器用なわけではなく、何をするにしても全部自分がすることなので、全部が繋がっているからできるのかもしれません。

――共演者の方についても聞きます。主演の綾瀬さんの印象は。
綾瀬さんは国民的な女優さんなので、お会いする前までは、多少緊張感があったんです。共演する前から噂を聞くんですよ、「業界イチ肌が綺麗」だとか、「お茶目な方」だとか。実際にお会いしてみると、とてもフランクな方で驚きました。お互いに人見知りなので、撮影の序盤は深い話ができなかったのですが、綾瀬さんの人柄のおかげで慣れることができました。
綾瀬さんはとてもお芝居がうまいですし、要所ごとに細かいところや表情も繊細ですごいのですが、一番はなんといってもその人柄が勉強になりました。監督との話し合いの中でもしも意見が食い違ったとしても、「1回やってみようか」と、とても良い空気で現場を進めていく姿を見て、素晴らしいなと思いました。周りのスタッフさんとの距離感も近いですし、どうすればああいう方に育つのかな、と親御さんに今度アンケートをお願いしたいぐらいです(笑)。
――佐野さんは現場で綾瀬さんと一緒にダンスをしたとか。
撮影自体でいうと、僕はダンスを踊るシーンはないのですが、綾瀬さんは踊るシーンがあって、「一緒に覚えてよ」と言われて。その場で何分かかけて振り付けを覚えさせてもらって、一緒に踊りました。最初は「全然ダンスに自信がない」と綾瀬さんは言っていましたが、すぐに踊っていらして、器用な方だなあと。綾瀬さんは「走るの速いから」とも言っていましたが、運動神経がいいんでしょうね。現場では、親戚のお姉ちゃんのような存在でした。
――他の共演者の方で印象的だった方はいますか。
鳴海の父の山口和夫役を演じた、國村隼さんですね。これまでにも何度かご一緒しているんですが、本当にすごいなと。セリフを頭に入れてくるのは役者として当たり前の話とはいえ、隼さんはご自身で付け足されて、いろいろとスパイスを加えてくるので、見ていて飽きないです。すごく勉強になりました。
僕が頑張れる原動力は、M!LKです

――鳴海は推し活に一生懸命な女性ですが、佐野さんはドラマのキャラクターの中に推しはいますか。
同僚の松岡陽子役の岸本鮎佳さんのお芝居がすごく好きなので、推しですね。これ台本に書いてあったっけ? と思うぐらい自然な感じでアドリブをよくされていました。そして同僚感を出すのもすごくて、今後もたくさん岸本さんのシーンが観たいですね。
――普段は佐野さんご自身が5人組ボーカルダンスユニット「M!LK」のメンバーでもあり“推し活をされる側”ですが、鳴海や那須田の様子を見てどんな印象ですか?
こんな感じなんだろうな、という印象ですね。そこまでの驚きのようなものがないのは、いつも僕らを推してくれているファンの方のことや気持ちを考えているからだと思います。M!LKの時は、ファンの方が「何をされたら嬉しいかな?」と思いを馳せることが僕らの仕事でもあります。
――では佐野さんが現在、個人的に推すとまではいかなくても、ハマっていることは?
ハマっているのは……日々自分自身を高めることです。僕は自分のことをポケモンだと思っていて。ポケモンのゲームのように、日々自分をレベルアップさせていきたいんです。例えば、英語の勉強をして、単語を1個覚えるだけでもいい。それだけでもちょっと変わるということが好きなんです。でも、常にレベルアップさせるようなことばかりでもなく、それ以外の時間も好きで、怠惰な時間を過ごしてしまう時もあります。
――基本的にはレベルアップしているんですね。ちなみにポケモンのキャラクターだと、ご自身は何だと思いますか?
自分自身がどのキャラクターかは難しいですね(笑)。好きなキャラクターで言えば、カイリューとかバンギラスとか。強くてごつめのキャラクターが好きです。
――「M!LK」は結成10周年を迎え、7月9日にニューシングル「アオノオト」をリリースしますし、7月までグループ史上最大動員数のツアーを開催中です。ドラマでは、那須田が鳴海の存在を楽しく見ていますが、佐野さんは俳優業や歌手業をするなかでの楽しみや生きる原動力といえば?
それはM!LKでしかないんですよね。よく考えるんですが、1人の佐野勇斗としてだったら、芸能界でここまで頑張れていない。つらい時に踏ん張れるのはM!LKという存在があるから。そして今は3、4年ぶりにお芝居のお仕事が入っていない期間があって、ありがたいことにM!LKでもたくさんお仕事をもらっていてずっとメンバーといるんですが、それがちょっと大変だけどすごく楽しくて。10年やってきて、まだ楽しいと思えるのは、本当に恵まれているなと。だから、僕が頑張れる原動力は、M!LKです。
誰しもが自分事のようにとらえられるドラマ

――佐野さんはドラマの第1回はご覧になりましたか。
観ました。まずやっぱり思ったのは、綾瀬さんはすごいなと。登場されてすぐに目を引きつけられるんです。綾瀬さんはコメディを演じてもちゃんとドラマの内容も入ってきますし、面白いですよね。あと僕自身のシーンについてはいろいろと反省はありますが、綾瀬さん演じる鳴海のテンションの高さと、僕が演じる那須田の気持ち悪さのギャップがあるので、この二人が今後どうなっていくのか気になりました。
――一番、楽しみなシーンといえば。
第1話では、鳴海は那須田に対して、なんだこいつはという風に接していたんですが、那須田は鳴海に一貫した気持ちを抱えていて。この那須田に対する鳴海の心境の変化が、どういう風に今後変わっていくのか、もちろん演じている側なので先は知っていますが、どう映っていくのかが楽しみです。あとは綾瀬さんがダンスを頑張っていらしたので、楽しみにしています。
――では、最後にドラマをご覧になるみなさんへメッセージをお願いします。
このドラマは、きっと誰しもが自分事のようにとらえられる話だと思っています。僕ぐらいの世代の方も30代以上の方も、あらためて人生を考えさせられるのではないかなと。そして面白く観られるドラマだと思うので、暗くならずに勉強できるという意味でも楽しんで観ていただきたいですね。


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NHKドラマ『ひとりでしにたい』
6月21日(土) 午後10時スタート
放送予定はこちら
https://www.nhk.jp/p/hitorideshinitai/ts/M6X7266P6P/

取材・文/かわむら あみり
撮影/稲澤朝博
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