トップシークレットマン対バン企画 超満員の渋谷CLUB QUATTRO公演レポート「俺はここで元気でやってるから!」
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トップシークレットマン 『日々、日々、思い出すと君しか頭にない状態』 6月13日 渋谷CLUB QUATTRO Photo:サカワヒカリ
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すべて見るText:西澤裕郎
トップシークレットマンが2025年6月13日、渋谷CLUB QUATTROにて、対バン企画『日々、日々、思い出すと君しか頭にない状態』を開催。ゲストにlilbesh ramkoを迎え、超満員の会場にて熱いライブを繰り広げた。
両者は、lilbesh ramkoの2ndアルバム『徘徊collection』に収録された「ヒミツ!!!!!」にて共演したり、神聖かまってちゃんの「死にたい季節」のカバーをするなど、これまで交流を行ってきた存在。2組ともサブカルチャーからの影響や、SoundCloudやYouTubeなどインターネットカルチャーからの影響を強く感じる部分でも共鳴している。
そんな2組による対バン企画。会場には、キャパシティをオーバーするほどの観客たちが詰めかけた。オーディエンスたちは全体的に20代前後。若いエネルギーに満ちていた。
開演時間になり客電が落ち、DJがトラックを流しはじめると、動画モードに切り替えたスマホを手に観客たちが一気にステージに向けて詰めかけた。ゆったりとしたイントロのBGMを突き破るかのように、エレクトロでメロディアスなサウンドへと変化し、lilbesh ramkoが登場。「踊れますか、渋谷ー!」と叫び、観客たちの割れんばかりの歓声が会場いっぱいに響くと、「haikai:pop」でライブがスタート。メロウなウワモノと、シンセベースが重なり、がなるように歌うlilbesh ramkoの声とリズムが心地いい。「まだ足りねえぞ!」と観客をあおると、カラフルな照明に照らされ「pop pop pop」と合唱が起こった。

「みなさん踊らせにきました」と、予測不能なビートメイク、シンセが絡み合う「BEAT IT」へ。「nichijou:loopmania」では<同じ同じ 同じ ことを繰り返す>と観客たちも大合唱。ポップな鍵盤のリフ、ブレイクビーツなど、自由な発想によるトラックが刺激的だ。
「熱がすごいっすね。たくさん踊るためには体力が必要ということでゆったり踊りましょう」と、「mokuyoubi:freestyle」で緩やかに観客たちを踊らせ、「俺が果てるか、あなたたちが果てるか勝負しましょう!」と、さらにフロアを盛り上げる。「次は「i (dont) know.」……」と代表曲をタイトルコールしたかと思いきや、「じゃなくて……私はうそつき」と粋な演出で、「うそつき」へ。「ここまで落ち着いたゆったりした曲をたくさんやりましたけど、暴れられますか? ギアあげていきましょう!」と休む暇なくフロアを盛り上げた。

「去年の8月にアルバムを出して、その1曲にトップシークレットマンと作らせてもらった曲がありまして……みなさんの秘密を教えてほしいなと思うんですけど、いけますか?」と伝えると、さらに大きな歓声が湧き起こる。そして、トップシークレットマンのボーカル・しのだが勢いよく登場し、「ヒミツ!!!!!」へ。一層ヒートアップするフロアに向けて、しのだはダイブした。ここで会場の温度が上がり過ぎ、暑すぎてデータがおかしくなり楽曲が止まってしまうハプニングが。DJが一度楽屋に戻りデータを再セットし、「みなさんの秘密をもう一回教えてください」と再び、「ヒミツ!!!!!」を披露。しのだがふたたびダイブをし、熱は一層高まった。

しのだがステージを去ると、「まさかのトラブルに見舞われましたけど、それくらい熱い。最後じゃないけど、ラストスパート!」と、さらに会場を盛り上げていく。「もっともっとぶっ壊したい」と観客へ言葉を投げかけると、代表曲である「i (dont) know.」へ。オイ! オイ!という観客たちのコールと合唱で一体感に包まれた。最後は「Parche/暮れ」を披露し、lilbesh ramkoは熱気に満ちたままステージを後にした。

ステージ後方には、ライブではお馴染みのブラウン管のテレビが何台も積み重なっている。モニターに「ゆっくりボイスになってしまったしのだ」が映し出され、「トップシークレットマンとお前らが渋谷で本気出してぶつかり合ったらどうなってしまうのか、早速検証していこうと思うぜ」「それではゆっくりしていってね」という声が響くと、クリック音に合わせて「T」「S」「M」というリフレインと、観客たちの「オイ! オイ!」という掛け声が響きわたる。重低音とリバーブが効いたサウンドの中、メンバーが登場。「こんにちは、トップシークレットマンです!」というしのだの言葉とともに、「スペルマライフ」でライブがスタートした。

ドープなクラブサウンドから、ギターリフからはじまる「サッカー部のサノくんを倒す曲」では、観客たちはその場で飛び跳ねる。<しのだーしのだーしのだー>という観客との合唱が起こるも、「渋谷の夜はそんなもんじゃないだろ!」としのだが叫ぶと、「「死にたい」とか絶対言えない」へ。緑のレーザーが飛ぶなか、ドープなリズムに乗せてしのだの言葉が響く。「キミマインド」では、デスボイスから、メロコア、ヘビメタへと、ジェットコースターのように1曲の中でジャンルが変わっていき、バンドメンバーもヘッドバンキングをしながらハードな演奏をプレイする。

「ついに来ました、渋谷クアトロ! こんなバンドがクアトロ踏めると思っていたか? 日本の音楽業界! ざまーみろ!」と、しのだが宣戦布告。「今日見にきてくれたお前らにとっておきのラブソングを書いてきました」と、青春パンク風ファストチューン「君にラブソングを書く」へ。ハードコアパンク調から、裏拍の四つ打ちを取り入れたJ-ROCKバンド風の展開、90年代のビジュアル系やメロコアなど、インターネット世代のミクスチャーバンドといえる展開を見せる。

ベースのねぎしのはんの「いけますか?」の呼びかけに続け、「しのちゃんかわいい」へ。ファストコア調の展開になると、スタッフのTHE安藤がマイクを通し全力で歌い、そのまま客席にダイブ。ステージ上にスタッフが待機していたり、動画撮影をするカメラマンが常にいるのもトップシークレットマンらしいところだ。

「俺も、バンドをはじめた当初はこんなに客が入ると思ってませんでした」と、翌日幕張メッセで開催される「SATANIC CARNIVAL 2025」に出演することに触れ、「ここまでこれてマジで幸せです。最近、新曲を出しましたけど、こうやって幸せだと思っているけど、俺はめちゃ貪欲で。死んでから納得して満たされると思うんです。そんな俺を見てくれるお前らが大好きだ。そんなお前らを肯定する曲!」と、「キミがキミでいてほしいから」へ。ノイジーでインダストリアルなビートをブリッジに、メロコアとデジタルハードコア、青春パンクがミクスチャーされた「僕の心臓をフェラしてくれ」など一気に畳み掛けていく。

あまりの熱気に天井から水滴が落ちている。「このメンバーになってから、1年半くらい。いろいろありすぎたけど、バンドをやってて本当によかったなと思っているし、今後もずっと思いたいと思ってます。見てくれている人がずっといてくれたら最高だから、よろしくお願します」としのだは感謝を述べた。

最近の心情を綴った新曲で、イベントのタイトルにもなっている「日々、日々、思い出すと君しか頭にない状態」をライブ初披露すると、「こうやってほぼ1対1で向き合って。お客さんとの距離が近い場所でパッションでやりとりするのが最高だと思ってます。今日ここにいるやつらだけが正しい。だってそういうものなんだもん。人間は直感を信じて生きてきた。それがいろいろと世の中が複雑になってしまった。それに疲れているでしょ? でもいまは目の前にあるものに対して全力で返してくれればいい」と目の前の観客たちに語りかけると、「NEU!」へ。様々な音楽ジャンルが1曲の中で展開していき、最後はヘヴィメタル的なサウンドでメンバーたちは頭を振りながら演奏をしてステージを後にした。

間髪なく起こるアンコールに、再びメンバーたちが登場。「今日こんなに集まってくれたのでお知らせがあります」と、8月に東名阪、福岡、北海道を回るツアーを実施することを発表すると、大きな拍手に包まれた。ツアーファイナルは8月22日(金)、東京・新代田FEVERで開催される。対バンも追って発表されることも伝えられた。

しのだは「クアトロっていうのは、バンドの登竜門のひとつ。そんな場所でできて、こんな多くの人に見てもらえて光栄です。ありがとうございます。バンドを初めての転機になったような曲をやって終わります」と、この日二度目となる「サッカー部のサノくんを倒す曲」「「死にたい」とか絶対言えない」を披露すると、「ひとみちゃん」へ。楽曲の間奏部分で、しのだが「言うか迷ったんですけど」と一言置き、「実は今日、両親がきてるんですよ。うちの両親はもう別れちゃって一緒に住んではいないんですけど、そういう話になったときに、僕はもう20歳を超えていて。自分はすごく自由に育ててもらったんです。だから、うちの両親が離れ離れになるのがすごく悲しかったけど、でも、どれもこれもそういう運命だと思うから、僕は何も言いませんでした。俺は、俺は、俺は、両親に伝えたい! この7年間、すごくすごく迷惑をかけてきたけど、マジで産んでくれてありがとう!」。
大きな歓声が会場に響きわたる。

「俺はここで元気でやってるから! 明日幕張メッセでライブやってくるから! なるべく長生きして俺のこと見てくれよなーーーー!」と全力で言葉を放つと、「最後、僕のバンド人生、一番心込めて歌います」と語り、「心を込めて一緒に歌ってくれるうちのドラム紹介します! 正義! 叩け!」と叫ぶと、メンバーによる演奏が再び鳴り響き「ひとみちゃん」を力一杯パフォーマンス。しのだの想いと、メンバーたちの演奏に観客たちの熱気がさらにあがり、トップシークレットマンのステージは大団円を迎えた。

ライブの中でしのだは、「我々がトップシークレットマンです!」と何度も叫んでいた。それは、自分たちの存在証明を確認するようにも見えた。ジェットコースターのように変わっていく音楽的展開は、様々な出来事で溢れる日常やインターネットの世界を表しているようでもあり、そんな世界で否応なしに激しく動かされる心の動きともリンクしているともいえる。だからこそ、そんな世界を描き、肯定してくれるトップシークレットマンのライブはこれだけ熱狂が生まれるのだろう。トップシークレットマンは、サブカルチャー、インターネットカルチャー、音楽ジャンルを縦横無尽にミクスチャーした、令和アンダーグラウンドカルチャーの寵児だ。そんなことを堂々と証明した夜だった。

<公演情報>
トップシークレットマン 夏の対バン企画 2025
『日々、日々、思い出すと君しか頭にない状態』
2025年6月13日 東京・渋谷CLUB QUATTRO
ゲスト:lilbesh ramko
<公演情報>
トップシークレットマン 夏の5大都市ツアー2025(仮)
2025年8月4日(月) 大阪・心斎橋FANJ twice
開場 18:00 / 開演 19:00
ゲスト:あり
2025年8月5日(火) 愛知・名古屋CLUB UPSET
開場 19:00 / 開演 19:45
ゲスト:あり
2025年8月9日(土) 北海道・サッポロ近松
開場 19:00 / 開演 19:45
ゲスト:あり
2025年8月15日(金) 福岡・福岡OP's
開場 19:00 / 開演 19:45
ゲスト:あり
2025年8月22日(金) 東京・新代田FEVER
開場 18:00 / 開演 19:00
ゲスト:あり
【チケット情報】
・一般:3,800円(税込)
・限定Tシャツ付き:5,500円(税込/ 先行受付のみ)
※整理番号付き、入場時ドリンク代が必要
●オフィシャル先行:6月23日(日) 23:59まで
申込URL:https://w.pia.jp/t/topsecretman-tour25/
トップシークレットマン 公式サイト: https://topsecretman.com/
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