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荒牧慶彦、再び“ゲゲゲの鬼太郎”へ── 妖怪と人間、その境界を五感で感じる新作に挑む

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荒牧慶彦 (撮影:You Ishii)

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水木しげる原作の「ゲゲゲの鬼太郎」といえば、いわゆる“国民的人気キャラクター”として知らぬ者はいない知名度を誇っている。その「ゲゲゲの鬼太郎」が水木しげる生誕100周年プロジェクトのひとつとして舞台化され、大きな話題を呼んだのは2022年のこと。鬼太郎を演じたのは、2.5次元舞台を中心に活躍している俳優の代表格のひとりである荒牧慶彦。そして2025年8月、荒牧は舞台「ゲゲゲの鬼太郎2025」で鬼太郎にふたたび挑む。彼が感じている鬼太郎、そして舞台版「ゲゲゲの鬼太郎」ならではの魅力とは何だろうか。

高くも低くもないテンションで、最後に締めるのが鬼太郎という役どころ

前回の公演では、コロナ禍で一部の公演が中止となってしまった。そのことを「途中で中止になって、その後公演は再開できたもののやっぱり悔しかったですね」と振り返った荒牧。その一方で、公演を通して「僕たちキャストのファンだけでなく作品そのもののファンの方々が、舞台『ゲゲゲの鬼太郎』を認めて楽しんで下さっているのが見えた」という手応えがあったと振り返る。だからこそ、今回は満を持して公演に臨みたい。そんな気持ちを強くもっていることが感じられた。

そして前回公演を通して、鬼太郎という役柄についても「結構つかめた」と感じているのだとか。

「鬼太郎はちょっと怪しげな雰囲気が特徴的。今回は新作なので物語によりますが、そういう鬼太郎らしさは全面に出していきたいですね。鬼太郎は幽霊族で、妖怪と人間との中立にいる立場。時には感情移入しすぎてどっちかに寄ったりするけど基本的には割と公平で、優しくあるけど時には冷静に、本当に公正なジャッジを下す。僕は、そんな鬼太郎がすごく好きです」

また、前回演じて「原作やアニメの鬼太郎は少年です。人間と比べたら年齢は上でしょうけど、 幽霊族としてはまだ子どもなので。だから最初は少年っぽくやろうかなと思ったけど、僕の身長を考えても見た目から絶対違うじゃないですか。どうしようか考えて、僕の中のイメージとしてはあまり子どもっぽくしすぎず、少し青年になっているくらい。人間のことも妖怪のことも知りつつ、なおかつそれでも真ん中の立場でいる。ある程度経験値を踏まえた鬼太郎」になったのだとか。

鬼太郎にはさらに、物語の構造そのものによる難しさもあるそう。鬼太郎は主人公ではあっても、物語を動かす立場ではない。それはむしろ、ねずみ男や欲に動かされた人間などの役割であり、鬼太郎はそれを客観視する役回りと言っていいだろう。

「ポジション的には『必殺仕事人』というか(笑)、最後に出てきておしおきしたり、とどめをさしたりして、びしっと締める。役者としては難しいテンション感だと思うけど、それが『ゲゲゲの鬼太郎』の世界観なので」

紙芝居、貸本漫画「墓場鬼太郎」を経て大ヒットし、今もなお皆に愛されている「ゲゲゲの鬼太郎」。その魅力について、荒牧はこう語る。

「妖怪は日本人にとってすごく身近で共に生きてきた、皆に愛されている存在ですよね。僕の大学や高校の友だちに、舞台とか全然見たことはなくても実は妖怪ファンで『水木しげるの妖怪図鑑』を持ってるって言われたこともあって。それだけ身近に根づいてるし、愛されてるんですよね。しかも『ゲゲゲの鬼太郎』は時代が変われば妖怪もその悪さも、起こる事件も違う。そういう社会風刺を交えているからこそ今でも世の中の方々に受けているんだと思うし、僕自身も大好きな部分です」

ちなみに、好きな妖怪は「昔からねずみ男が好きなんですよね。問題児だけど、彼がいるから彩りがあるというか、物語が展開していく。あと、やっぱり鬼太郎は好きでしたし、舞台には登場しませんけど、キジムナーもちっちゃくてマスコットっぽい感じで好きでした」とのこと。

憧れの大塚明夫、旧知の植田圭輔、廣野凌大ら新キャストとの共演にも期待

今回上演されるのは堤泰之の作・演出による新作で、鬼太郎たちと西洋妖怪との対立が描かれる。荒牧は、堤とは今回が初タッグだ。

「前回とはまた違うものとして、期待値しかないですね。自分の演じる役については、もちろん演出の方が言ってくださることが一番ですけど、自分なりに『もう少し、こうしたほうが伝わりやすいかもしれません』みたいなフィードバックは普段から結構しているほうです。今回の稽古場でも、そういった積極的なやりとりができるといいですね」

キャストも続投組、初登場組と、それぞれに力強い顔ぶれが並んでいる。

「ねずみ男の大塚明夫さんは声優として数々のキャラクターを演じられていて、僕は大ファンなんですよ。キャスティングを知ってテンション上がったし、稽古場が既に楽しみ。あの声で、名前を呼んでもらいたい! 前回は砂かけばばあ役で今回は吸血鬼カミーラ役の浅野ゆう子さんは、僕が何か言うのはおこがましいぐらいの大先輩。見た目はもちろん、たたずまいが本当に美しいんです。しかもカーテンコールの時には、最後まで残ってお辞儀をする僕のことをいつも舞台袖で待っていてくださるんですよ。先に楽屋に戻っていていただいて構わないのに、すごく気にかけて、僕を主演として立ててくださる。そういうところが、芸能界という荒波のなか今現在も輝きを放っている理由なんでしょうね。ねこ娘の上坂すみれさんも、日ごろは声のお仕事をされているので前回が初舞台・初アクション。たぶん舞台上で動くことにあまり慣れていなかっただろうけど、そういう自分の欠点を克服しようとしていた。すごく前のめりに、僕も含めていろいろな人に殺陣やポージングのやり方を聞いていたんです。その一生懸命な姿が印象的でしたし、今回きっとパワーアップした上坂さんが見られると思います」

しかも荒牧と共演経験があり仲の良い植田圭輔が吸血鬼エリート役で、また廣野凌大がムサシP役で出演する。荒牧にとってもカンパニーにとっても、このうえなく強力な援軍といえるだろう。

「植ちゃんは同じ会社ですし、廣野くんもよく僕がやる作品に出てくれていて、よく見知った仲。お互い、やるべきことをやるだけです。前回も殺陣はありましたけど、せっかくバチバチに動ける植ちゃんがいますからね。廣野くんは人間役なので戦うかわからないけど(笑)、僕らの得意としていることを活かして殺陣の部分でも魅せられたらいいね、と話しています」

目の前で繰り広げられる、切れのよい殺陣。それは間違いなく、舞台の大きな魅力のひとつだろう。

「これは『ゲゲゲの鬼太郎』に限ったことではなく、人間が今ここで演じている、ここで何かが起こっているっていう空気感そのものが、映像にはない舞台の素晴らしいところじゃないでしょうか。僕たちだけじゃなくお客様も一緒に空気をつくって、『今ここで事件が起きてるんだ』って共有できるところは舞台独特だし、すごく好きなんです。今回の舞台『ゲゲゲの鬼太郎』も、たぶん笑いも、ピリッとするところも、少し怖いところもあるでしょう。でも、五感で楽しんでもらえるんじゃないかと思いますので、リラックスして観ていただきたいですね。そのほうが僕らも楽しめる」

エンターテイメントな部分も大切にしつつ、人間の闇を描く舞台に

心置きなく楽しんでもらいたい、舞台『ゲゲゲの鬼太郎』ならではの見どころとは何だろうか。

「視覚的な、殺陣や少しショーアップしたエンターテイメントな部分を楽しみにしてもらいたいことはもちろんですけど、『ゲゲゲの鬼太郎』の良さって少し怪しい、人間の醜いところも隠さず描いているところ。もちろん僕は人間が大好きですし、光の部分もあると思いますけど、それでも闇の部分はあるじゃないですか。妖怪ってよく悪にされがちですけど、そうではない。人間も妖怪もどっちも自分たちのエゴで動いているっていうのが『ゲゲゲの鬼太郎』の世界観。水木先生が『ゲゲゲの鬼太郎』を通して伝えたかった部分は、この舞台でもしっかり受け継いでいきたいですね」

さらに、ヘアメイクや衣裳もグレードアップしているという。

「ちゃんちゃんこがより派手になったんですよ。ウィッグも前回担当してくださった方がその時点での最高のパフォーマンスをしてくださったけど、今回『さらに荒牧くんに似合いそうな鬼太郎のウィッグ、作ってきたよ』って。よりスタイリッシュになっています。スタッフの皆さんもさらに上を目指していることがわかって嬉しくなりました」

取材・文:金井まゆみ 撮影:You Ishii

ぴあアプリでは荒牧慶彦さんのアプリ限定カットをご覧いただけます。ぴあアプリをダウンロードすると、この記事内に掲載されています。


<公演情報>
舞台『ゲゲゲの鬼太郎 2025』

脚本・演出:堤泰之
出演:荒牧慶彦 大塚明夫 上坂すみれ
植田圭輔 廣野凌大/美弥るりか/浅野ゆう子/野沢雅子(声の出演) 島田敏(声の出演) 山口勝平(声の出演)

長友光弘(響) 砂川脩弥

白井美貴 浅野琳 大城麗生 中土井俊允 矢吹百花 山田隼人 渡邉陸

【東京公演】
2025年8月2日(土)~8月16日(土)
会場:明治座

【大阪公演】
2025年8月21日(木)~8月25日(月)
会場:新歌舞伎座

公式サイト:
https://gegege-stage.jp/

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