今年は新たな試みも! 本映画祭出身・石川慶監督が語る
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 特集
7月18 (金)~7月26日(土) SKIPシティにて開催
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 公式サイト/SNS
今年は縦型シアターやAI映画など新たな試みも!
本映画祭出身・石川慶監督が語る、映画祭の役割と魅力
デジタルシネマにいち早く着目して2004年にスタートすると、『凶悪』『碁盤斬り』などで知られる白石和彌監督や、『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督ら若い才能を見出してきた<SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025>。「若手映像作家の登竜門」として存在感を増している本映画祭だが、22回目を迎える今年は大きな変革を迎える!
国内外の若手作家の発掘と育成を最重要視してきた本映画祭のこれまでの両輪は、国際と国内のコンペティション。だが今回は、映画祭の在り方を再考。国内クリエイターに比重を置くことにし、国内コンペティションに特化した編成となった。
また、多様化する映像作品及び映像視聴スタイルを踏まえて、若者たちに人気の縦型映画やフルAIで制作した映画などを特集。次世代の映画シーンを見据えて新たな一歩を踏み出す。
変化を恐れずに新たなチャレンジに挑む本開催に期待したい。
今年の特徴・見どころは?
《SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025》ガイド
石川慶監督が自身の経験を語る
《SKIPシティ国際Dシネマ映画祭》
石川慶監督が自身の経験を語る《SKIPシティ国際Dシネマ映画祭》

今年、大きな変革の時を迎えた<SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025>。だが、国内の若手映像作家たちを支援するスタンスは一切変わらない。これまで通り、<国内コンペティション>は実施され、これまで以上に新たな映像作家の才能の発掘と育成に力を注ぐ。
その重責といえるコンペの審査委員長を務めるのは、今年のカンヌ国際映画祭である視点部門にノミネートされた『遠い山なみの光』の公開が控える石川慶監督。実は石川監督、ポーランド国立映画大学卒業後に発表した短編『It's All in the Fingers』が、本映画祭の短編部門に入選している。映画監督としてのファーストステップが本映画祭だった。
そこで石川監督にインタビュー。2009年の本映画祭の思い出から、自身の長編デビュー作『愚行録』が上映される特集「商業映画監督への道」でのトークのこと、審査の意気込みまで話を聞いた。
映画作家をサポートしてくれる映画祭の存在の大きさを初めて実感
──2009年に『It's All in the Fingers』が短編部門に入選して本映画祭に参加されています。そのときの本映画祭でなにか印象に残っていることはありますか?
石川 ポーランドの国立映画大学を卒業して、帰国してさほど経っていないときのこと。まだ、この道で生きていけるのかまったくわからない頃にいて、入選した『It's All in the Fingers』から8年を経てようやく『愚行録』で長編映画監督デビューとなるんですね。ですから、8年の長く苦しかった時間とセットでSKIPシティの映画祭のことは思い出すところがあります。
ただ、映画祭自体は本当にかけがえのない時間で、いい思い出として記憶しています。長編部門に『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で選出されていた白石和彌監督といろいろとお話ししたことをよく覚えています。そのときの入選監督や映画祭で出会った方にはいまでもお付き合いのある方がいます。
あと、『It's All in the Fingers』は、当時、出て間もない高解像度・高画質で撮影できる最新鋭のデジタルシネマカメラ・REDで撮影した作品だったんです。
まだ4Kまでたぶんいってなくて2Kの素材だったんですけど、それでも日本では最適な環境で上映できるところがありませんでした。そうしたら、SKIPシティの技術者の方たちが「この素材があるのならば、できるだけ最高の環境で上映をしましょう」と言ってくださって、いろいろと奔走してくれて、できるだけ良い上映環境を作ってくださったんですよね。
大学を出たばかりの僕のようなまだ駆け出しの人間の、しかもたった10分の短編作品のために尽力してくださった。このことは本当にありがたかったです。「自分のためにここまでしてくれるんだ」と感銘を受けました。
おかげさまで上映も素晴らしかったんです。上映のときは、自分で作った作品で何度も観ているのに、びっくりしました。映像が美しくて。「こんな綺麗な映像で観ることができるんだ」と感動したことを今でもよく覚えています。
このことを含めて、僕にとっては映画作家をサポートしてくれる映画祭の存在の大きさを初めて実感した場だった気がします。
審査員は審査をしているようで、実は自分という人間が試されている
──その映画祭に審査員として戻ってくることになりました。
石川 それこそ2009年のとき、僕は審査される側にいたわけです。真剣なんです。「なんであっちが選ばれて、自分の作品はダメだったのか?」「どうして審査員の心に響かなかったのか?」など、審査される側はあれこれ考えてしまう。根に持つわけではないですけど、審査員の顔をいまでも全員覚えています(笑)。それぐらい必死なんですね。
そのことを思うと、審査員はできればやりたくないなというのが偽らざる本心です。ただ、僕もそれなりに映画監督としてキャリアを重ねてきて、映画祭という場やそこで出会った人にサポートしていただいていまがある。それを考えると、そう逃げてばかりもいられない。
それから、いまの若い監督たちの映画がどこに向かおうとしているのか、どういうことを考えて作品に取り組んでいるのか、どんなところに問題意識をもっているのか、どんな映画を撮るのかということを、自分の作品作りに追われているとなかなか感じることができないんですね。ですから、このような機会に、今の若い監督たちがどんなことを考えているのか、肌で感じたいところがありました。それでありがたく審査員を受けさせていただきました。

──今年の本映画祭は国内コンペティションの長編・短編の区別がない。審査員の果たす役割は重大です(笑)。これまでほかの映画祭でも審査員を務められていると思うのですが、審査で大切にしていることはありますか?
石川 もちろん映画祭の責務として若手監督の発掘ということがあるので、審査には心して臨まないといけない。そのことがまず第一にあります。さきほどお話ししましたけど、やはり真剣勝負。若い監督たちが作品に込める熱って必ずあるんです。作品にはその熱がどんな形であれ入っている。
ですから、その熱をきちんと受け止めて、作品と向き合わないといけない。そして、選ばれる側は、審査員の顔を覚えていますから(笑)、たとえば最高賞に選んだ作品があったら、その作品のどこが他よりも優れていたのか、どこが賞に値したのかなど明確に答えられなければならない。逆に選ばれなかった作品であったら、なぜ逃したのかを説明し尽くさないといけない。言い逃れはできないことは肝に命じています。
それと、これは審査員が審査の途中でよく思うことなんですけど、実は自分たちは審査をしているようで、自分という人間が試されているんじゃないかと思うことがあるんですよ。何を推すのか、何に重きを置くのかといったことで、自分の感性や人間性が全部出てしまう。ある意味、審査する側が丸裸にされてしまうところがあるんです。だから、いつも審査員を務めるときはすごく緊張します。
あと、今回は長編と短編と合わせて審査。これはほんとうに悩ましい。難儀な審査になるんだろうなと思っています。でも、頑張って全作品と向き合いたいと思っています。
特集「商業映画監督への道」では「最初のスタートはどういうものだったのか振り返りたい」

──期待するところは?
石川 まずはひとりの映画人としてひとりの映画監督として大いに刺激を受ける作品に出会うことを楽しみにしています。
それから、基本的に映画館で映画を上映する以上、基本ライバルだと思っているので、同じ作り手としてもう本当に嫉妬するぐらいすごい才能に出会いたいですね。そして、このような場で出会うと、意外と長い付き合いになったりすることがあります。そういうつながりがもてる人と出会えたらという気持ちもあります。
──審査委員長を務めるとともに、石川監督はもうひとつ大役があります。特集「商業映画監督への道」に登壇されます。石川監督の長編デビュー作『愚行録』の上映後、若手映画監督たちにむけてのトークが続きます。どのような機会になりそうでしょうか?
石川 9月から公開のカズオ・イシグロさん原作の映画『遠い山なみの光』は、僕の中でひとつ大きな区切りを迎えた作品という感触があるというか。一旦、自分の中の引き出しにあったものをすべて出して作ったような感覚がある。そして、いま自分のキャリアの出発点といえるポーランドとの共同制作のプロジェクトにとりかかっているんです。
その中で、いい機会なので、原点回帰ではないですけど、自身の最初のスタートはどういうものだったのか、ちょっと振り返りたいなと思いました。
ということで、長編デビュー作の『愚行録』をチョイスして、なかなかデビューできずにいたころからそこをどう抜けてデビューにこぎつけたのかを主に話そうかと思っています。映画監督としてデビューする道も、僕の時代と今ではだいぶ変わってきているので、そのあたりのことも僕の知る範囲内で話して、これからこの道に進もうと考えている若い監督たちのひとつの参考になればなと思っています。
取材・文:水上賢治
チケット情報
開催期間:7月18日(金)~7月26日(土)
コンペ作品:前売800円/当日1,000円
特別上映 SKIPシティ インキュベート作品:前売1,000円/当日1,200円
海外招待作品:前売1,000円/当日1,200円
特集「商業映画監督への道」:前売1,000円/当日1,200円
クレージング・セレモニー:前売1,000円/当日1,200円
SKIPシティセレクション:前売1,000円/当日1,200円
※前売りはオンラインにて販売。
※当日券は、各日の初回上映の開場時間より以下の場所にて販売。
映像ホール受付:映像ホールの上映プログラムおよび縦型映画
多目的ホール受付:縦型映画のみ
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