藤島武二、杉浦非水、竹久夢二らの作品を中心に大正時代の出版文化をひも解く 『大正イマジュリィの世界』7月12日から
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竹久夢二・表紙絵『汝が碧き眼を開け』(セノオ楽譜第56番)1917年初版/1927年7版 個人蔵
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すべて見る印刷技術の革新が進み、出版界が興隆した日本の大正時代(1912~1926)は、西洋の芸術やアール・ヌーヴォー、アール・デコといった新たな芸術様式と日本の伝統を融合させた独特な美意識のデザインやイラストレーションが生み出された時代。この時代に焦点をあて、文学と美術、音楽などが混じり合う近代の書物と刷物を愛した研究者・山田俊幸氏の収集品を紹介する展覧会が、7月12日(土)から8月31日(日)まで、東京・新宿のSOMPO美術館で開催される。
展覧会タイトルにある「イマジュリィ」とは、フランス語で、ある時代やジャンルに特徴的なイメージ群のこと。1900年代から1930年代にかけて、西洋から新しい複製技術が次々に到来した日本では、雑誌や絵葉書、ポスター、写真などに新鮮で魅力的なイメージがあふれ、大衆に忘れがたい記憶を残した。「大正イマジュリィ」とは、活況を呈したこうした大衆的な複製物の総称として命名されたもの。同展は、その大正イマジュリィの世界を、時代を代表する主要な作家たちと、時代を映す様々な意匠を切り口に、約330点という膨大なイメージ群で掘り下げる展覧会だ。
今回、テーマのひとつ「大正イマジュリィの作家たち」で取り上げられる作家は、12名。アール・ヌーヴォー様式を日本に広めた藤島武二、日本初のグラフィックデザイナー・杉浦非水、美しい装丁本の先駆者・橋口五葉、「夢二式」の美人で一世を風靡した竹久夢二、モダンな美少女像を築いた高畠華宵、文芸美術雑誌『白樺』でも活躍した洋画家・岸田劉生、さらに近年注目を浴びている小林かいちなど、大正時代の出版文化に創造的な足跡を残した多彩な作家が登場する。
同展の見どころのひとつは、ふだんはまとめて展示することの難しいこの12名の作家たちの装丁や挿絵が一堂に展示され、日本のグラフィックデザインとイラストレーションの黎明期を目の当たりにできること。一方、もうひとつのテーマ「さまざまな意匠(イマジュリィ)」では、匿名の作者も含め、さらに多くの作家たちのヴァラエティに富む作品が並ぶ。こうした魅力的なイラストレーションや都会的なデザインが生まれた大正時代は、現代日本の大衆文化のルーツとして見ることも可能だ。当時はほぼ唯一の視覚的情報源だった紙の印刷物は、映像やインターネットが普及した現代では減少しつつあるなか、稀少な存在になった大正イマジュリィの「物」としての存在感と魅力が感じられるという点もまた、同展のみどころのひとつとなっている。
<開催概要>
『大正イマジュリィの世界 デザインとイラストレーションの青春 1900s―1930s』
会期:2025年7月12日(土)~8月31日(日)
会場:SOMPO美術館
時間:10:00~18:00、金曜は20:00まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜(7月21日・8月11日は開館)、7月22日(火)、8月12日(火)
料金:26歳以上1,500円、25歳以下1,100円
チケット情報:https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2558502/
公式サイト:
https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2024/taisho-imagerie/
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