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映画『「桐島です」』 高橋伴明監督のオフィシャルインタビュー公開「ひとりの人間の⻘春の軌跡を描いた」

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高橋伴明監督 (C)北の丸プロダクション

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1970年代の連続企業爆破事件で指名手配されていた桐島聡の軌跡を映画化した『「桐島です」』より、高橋伴明監督のオフィシャルインタビューが公開された。

桐島聡は、1975年4月19日に東京・銀座の「韓国産業経済研究所」ビルに爆弾を仕掛け、爆発させた事件に関与したとして、爆発物取締罰則違反の疑いで全国に指名手配。最終的に被疑者死亡のため、不起訴処分となった。

この謎に満ちた桐島の軌跡を実写映画化したのは、『夜明けまでバス停で』(2022年)の脚本家・梶原阿貴と高橋伴明監督のコンビ。そして主演の桐島聡役を毎熊克哉が務め、本作では20歳から70歳で亡くなるまでを演じ切った。

<高橋伴明監督インタビュー>

──2024年1月、桐島聡のニュースを知ったとき、どのように感じましたか?

「日本にいたのか」と思いました。彼は海外にうまく逃げているのではないかという予想もあったので、「日本にいたのか」という驚きがまずありました。そして、彼は単に逃げ続けていたのではなく、一般社会に溶け込んで生きていたからこそ、ここまで⻑く逃亡を続けることができたのだろう、とも感じました。それも、小さな町にひっそりと隠れていたわけではなく、神奈川県藤沢市という都市に住み、普通の社会の中で暮らしていた。そんな事実を知り、改めて彼の生き方に関心を持ちました。

──それが映画になると思ったのは、いつ頃ですか?

事件が報じられたとき、ちょうど別の企画を進めていたのですが、その映画のプロデューサーの小宮亜里さんが「いや、これをやるべきでしょ」と言い出しました。僕自身、過去に連合赤軍事件を題材にした『光の雨』(2001年)を撮った経験もあり、「この話を映画として残すべきだ」と考えました。49年もの間、逃亡し続けたひとりの男の物語には、映画として描くべきテーマがある。そこから、急遽企画が動き始めました。

──脚本はどのように作られたのでしょうか?

すぐに(『夜明けまでバス停で』でコンビを組んだ)脚本家の梶原阿貴さんに電話しました。すると、彼女が「もうスクラップは作っていますよ」と言ったんです。僕は、事実とフィクションをどう織り交ぜるかを考えていたので、「嘘の部分は俺が責任を取るから、事実の部分を5日でまとめてくれ」とお願いしました。2月の初めには作業が始まり、本当に5日で第1稿が完成しました。僕自身も「こういう話にしたい」という下地を作っていたので、それと梶原さんの脚本にコメントを書き加えながら進めていきました。

──フィクションとして描きたかったのはどんな部分ですか?

それは、桐島の⻘春時代です。彼は単なるイデオロギーの信奉者ではなく、もっと普通の若者だったのではないかと思うんです。もし彼が純粋に思想だけで突っ走っていたなら、もっと早く捕まっていたのではないか。彼には、革命家としての一面とは別に、ごく普通の⻘年としての側面もあったはずです。だからこそ、⻘春や恋愛の部分を描くことで、「逃亡者」ではなく「ひとりの人間」としての桐島聡を表現したかった。

──毎熊克哉さんの演技について、どのように評価されていますか?

毎熊さんは映画をよく理解している俳優で、細かく説明しなくても、こちらの意図をすぐに察してくれる。彼はもともと監督志望だったこともあって、現場の流れや演出意図を深く理解してくれるんです。演技にも深みがあり、表情ひとつで内面の葛藤が伝わってくる。その内面的な演技力が、この映画には欠かせなかったですね。撮影を進めるうちに、「この役を彼にやってもらえて良かった」と何度も思いました。

──映画で描きたかったものは何でしょうか?

この映画は「単なる逃亡の物語ではない」ということです。桐島聡が49年間逃げ続けたのは、ただの逃亡生活ではなく、彼の中に人間的な優しさがあったからではないかと考えています。彼は、弱い立場の人に寄り添うことができる人間だった。毎熊さんの所属事務所のアルファーエージェンシー社⻑、万代博実さん(2025年2月11日逝去、享年74)が「これは⻘春映画だ」と言ってくれたのがうれしかった。単なる社会派の映画でもなく、政治運動の映画でもなく、ひとりの人間の⻘春の軌跡を描いたつもりです。

<作品情報>
『「桐島です」』

7月4日(金)公開

公式サイト:
https://kirishimadesu.com/

(C)北の丸プロダクション

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