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怪物だらけの世界―水上恒司の役者論「人とは違う狂った部分を持っていないとつまらない」

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水上恒司 (撮影:梁瀬玉実)

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俳優デビューは、オーディションで抜擢された2018年放送の『中学聖日記』(TBS系)。有村架純演じる教師に恋をする中学生役を瑞々しく魅力的な雰囲気で演じ、お茶の間からの注目を集めた。あれから7年の月日が経ち、水上恒司として重厚な人間ドラマで骨太なお芝居で魅せられる役者に。7月6日(日)から放送・配信のドラマ『連続ドラマW 怪物』では、WOWOWドラマ初主演にして安田顕と共にW主演を飾る。キャリア警察官役で安田とタッグを組んで事件の真相を探るスリリングな心理スリラーに挑む覚悟とは――?

とんでもないスケールの作品だと思いました

怪物はあいつか、俺自身か――。事件の裏に隠された、最も恐ろしい怪物があぶり出される傑作スリラー『連続ドラマW 怪物』が安田顕と水上恒司のW主演で、WOWOWで放送・配信される。今作は2021年に放送された韓国ドラマを基としており、神経をすり減らすような繊細な描写が引き込まれるストーリーが魅力だ。オファーを受けた時、脚本を読んで物語を把握することができたことで、作品の全体像が浮かび上がり、重厚な人間ドラマに心惹かれたという。

「これはとんでもないスケールの作品だと思いました。脚本を読んで、キャラクターたちのだまし合いに視聴者の方々が翻弄させられる構成にまず惹かれました。それと同時に自分にとってハードルの高い役だなと思いました。こういった役を任せてもらえることへの喜びと嬉しさはありながらも、それ以上に期待に応えられるかなという緊張感のほうが大きかった気がします。」

演じるのは、東京から地方都市・羽多野町へ異動してきた東大法学部卒のキャリア警察官僚・八代真人。25年前に双子の妹が失踪し、その容疑者として逮捕された過去を持つ警察官・富樫浩之(安田顕顕)と行動を共にすることになる。しかし、真人は富樫を一連の猟奇的殺人事件の犯人と疑っている役で二人の間には複雑な心理戦が繰り広げられる場面も盛りだくさんだ。

「インタビュー中の今の僕もそうなんですけど(笑)。人間って自分が話している言葉と大体違うことを考えていたり、違うものを持ちながら、出すべきものを出さないといけないということもありますよね。その時に求められているものを打ち出していく。それをお芝居でやるっていうことの複雑性が必要な作品でした。取調室のシーンもそうですし、僕と安田さん演じる富樫のちょっとした言葉、ちょっとしたアイキャッチ、ちょっとした怖さっていうのを見逃さないことがすごく大事になってくる。ただ疑いの目を向けているっていうだけじゃないんですね。対峙するシーンを重ねれば重ねるほど、お互いの眼差し、お互いの言葉、お互いの姿勢に表層を積み立てて深みを出さないといけないっていうことが、自分にとって、ものすごくハードルが高かったです。そのお芝居を成し得たら、自分にとって得難いものを得られるなっていう感覚で必死に挑んだ役です。」

真人と富樫は、それぞれの思惑で事件を追うことになる凸凹コンビぶりも見逃せない。気の合わない二人だが、課長の森平(光石研)の命令でペアを組むことになるのだ。新たに事件が起こる中、複雑に絡み合う25年前の事件と現在や登場人物たちの心の闇が明らかになっていく。水上は、繊細なお芝居が求められる中、真人という人物を試行錯誤して演じたという。

「例えば、富樫と向き合うシーンでは基本的に毎回、同じようなアプローチの仕方をするんですけど。お芝居のベクトルとして、自分の中にないものを作りあげていくっていうことがどれだけ大変かっていうことを痛感しました。真人が犯人を見つけたいという、正義感に溢れて熱い感じのお芝居は今までもやったことあるんですけど。真人っていうのは、正義感だけの人間じゃないんですよね。暴走する怖さっていうか、怪物の要素も潜んでいる役どころ。正義感の中に何か危うさを持ってるようなことだったんで、それをどう表現するか考えました。」

お互いに強烈に忘れられない関係性になるってすごいこと

真人は物語の登場人物の中で若い。「年齢的にも、経験的にも若いキャラクターとして存在する中、若さゆえの怪物さをいかに表現できるのか」が課題だったという。事件が起こるたびに富樫に対する疑念を膨らませていく真人というキャラクターを表情はもちろん、声色、姿勢、所作、志など細かいところまで作り込んで挑んだそうだが、どのように役を掴んでいったのだろうか。

「物語の後半に出てくる真人の家族構成や描かれる家族模様が真人という人間を形作ってるんですよね。一体、父親にどんな風に育てられたのか、父親がどんな関係性の人物であるのか。それが判明する前までは、やはり富樫に対するベクトルがすごく大事なんですよね。富樫を邪魔に思ったり疑ったりする姿が、ちゃんと絡み合っていかないといけないので、そこを考えてましたね。安田さんの富樫から見てどうあるべきかということも意識しました。」

真人はある目的を抱えて羽多野町にやってきていた警察官。富樫と真人はお互いに疑いの目を向けながら、難航する捜査の真実を追い求めるうち、バディとなっていく関係性だ。水上はこの二人の関係性はどう捉えたのか訊いてみた。

「二人が一緒に捜査するのは、きっと二人の人生にとっては、ホントに一瞬の時間ですよね。でも、決して忘れられない人間になっていく関係性で。とても刹那的な感じがして、僕は好きですけどね。僕の人生は26年しか経験ないですけど、お互いにとって、強烈に忘れられないような関係性ってなかなかないもの。そういう存在になり得ているっていうのが素敵なんじゃないですかね。」

もしも、富樫のような人物とコンビを組むことになったら、自分自身ならどうするかと質問をぶつけてみると、少し笑みを浮かべながら、「富樫みたいな人は嫌(笑)」と、キッパリひとこと。

「富樫みたいにお互いに忘れられないバディが欲しいかってことですかね。今回のWOWOWもそうですけど、僕の仕事って数ヶ月に1回、周りの人がどんどん変わっていくんですね。一緒に映画を作っていく人たち、ドラマを作っていく人たちって、全く同じ座組でできるってないんですね。同じシリーズでも全員揃うことってなかなかなく、スケジュールの都合だったり、何かしらの理由で1人は必ず欠けてしまう。10数名ぐらいはスタッフが変わるっていうのも、ざらですから。そういった意味で言うと、同じ作品で出会ったチームはかけがえのない存在だと思います。僕にとっては、その時にしか一緒にいられないので。もちろん、その時で全てを分かり合えることは絶対にありえないですよ。でも、分かり合おうとする。全部お互いを見せつけ合おうとするっていう意味では、すごく情熱的な関係性だと思います。」

安田顕さんの破壊力のすごさを感じました

今回、初共演でW主演を果たした安田とは約3カ月の撮影期間を経て、どのような関係性になれたのだろうか。よりよい作品を届けたい一心で挑んだ二人の関係性も気になるところだ。

「真人と富樫の関係性に似たところがあるなと僕は感じられました。最初の方は真人が富樫を捕まえようとしていくけど、雲のように、霧のように掴んでは消え、掴もうとしては逃げられっていうのらりくらりする感じが似ているというか。やっぱり僕が一生懸命に全力投球しても、やっぱり安田さんからすると「もっと来いよ」っていう話だと思うんですね。もちろん全部は見せられてはないですけど、見せられるものは、僕はもう全部見せましたからね。二人で対峙するシーンに関しては、そのシーンごとに事実関係を確認して。「ここに来る前まであいつと会って、あいつとこういう風になって、こうだよな」って確認し合いました。起きる事柄の時系列が複雑なので、そのシーンにおける心情を大切にしましたね。」

ドラマに出てくる登場人物たちに怪物の要素があるが、役者の芝居に対する姿勢も怪物級。安田にはどんなところが怪物の要素があると感じたのだろう。

「僕はこの作品で富樫を生きた安田さんしか目の当たりにしてないんですけど、瞬間の破壊力、爆発力はすごいですよね。もちろんそれは役者さんですから、努力というか技術がいることですので、簡単にやっていることではないと思うんですけど。でも、簡単にやっているように見えるっていうのがすごさだと思いました。」

子への思いが大きすぎるとモンスターペアレントになるなど、誰しも怪物になり得る瞬間は、あるのかもしれない。自分自身も怪物のような強い思いが眠っていて、揺さぶられる瞬間があるのかと尋ねると、ハッとさせられるほど真剣な表情に。

「大事な仲間たちが馬鹿にされたら、絶対に許せないですよね。そういったことはないですけど。そういうことを想像したら、僕は頭に血が上って、歯止めがきかなくって怪物みたいになっちゃうのかなって思ったことがあるっていうだけのことなんですけど(笑)。つい先日、撮影中に絡まれそうになったんです。もしも仲間たちが危ない目にあったら、守りたいんだけど、暴力では絶対、解決してはならない。最悪なパターンにならないために、その危険をどう遠ざけたらいいのか考えましたね。意外と血の気が多いところがあるので、冷静になることを意識しました。誰しも大切な人を守るためなら、怪物になる瞬間はあるのかもしれないですね。」

役者は怪物だらけ…?

真人には次期警察庁長官の座を虎視眈々と狙っている警察庁次長の父親・八代正義(渡部篤郎)がいる。終盤には親子関係も明るみになり、二人が圧倒的な芝居で魅せるような対峙するシーンも多い。父親役の渡部篤郎とのお芝居で刺激を受けた部分がたくさんあったと語る。

「渡部さんは僕が絶対にやらないようなことをやられてましたね。それはすごく勉強になりました。僕は子供を持ったこともないですし、結婚したこともないからこそ、そういった想像が行きつかないのは当たり前なんですけど、父親というのは、面白いなと思いました。本当にいろんな父親がいるんだなと。今まで僕が対峙してきた共演者の方とはまた違ったアプローチの父親像を作られてましたね。」

ここで水上の父親の話になると「うちの父親は、めちゃくちゃ真面目です」と教えてくれた。
「テーブルマナーには厳しかったですね。「食事中にテーブルに肘を付くな」「口を大きく開けて食べるな」「よそを見ずに食べることに集中しろ」とか、いろいろ言われました(笑)。多分、僕が大人になってから、色々と恥ずかしい思いをして欲しくなかったんでしょうね。そのおかげでテーブルマナーには自信があるということはないですけど(笑)。決して上品に食べられているとは思いませんが、普通のレベルではあると思うので、父に感謝してますね。実家にはずっと帰ってないですが、つい先日も両親とテレビ電話で話しましたね。役者という仕事を選んだからには、もう親の死に目には会えないのは仕方ないことだと僕は思ってるので。そのことは、両親に伝えていますし、だからこそ話せる時は、電話でも話そうと思っています。」

このドラマを通して感じたのは「驚かすわけではないですが、我々の日常でも今作に出てくるキャラクターたちの意図は必ず存在してくるもの」と、怪物はどこにでもいるという。特別な瞬間を生み出す、エンターテイメント作品に携わる人々もどこか怪物なのかもしれない。

「役者は怪物だらけ……? 確かにそうかもしれないですね。感情を操り、怪物になりながらもどう自分をコントロールしていくか。カメラを向けられ、それを求められてますからね。僕は役者だからって良い人間でいなくていいと思うんですよ。もちろん、犯罪や世の中に叩かれるようなことをしてはいけないと思いますが、ただただ無害で善良な人間になるのって、どこかつまんない気がしていて。役者として様々な事柄を表現するには、やっぱりどこか人と違う、ちょっと狂った部分は持っていないと見ていて面白くないだろうなって僕は思うんですよね。」

取材・文:福田恵子 撮影:梁瀬玉実
ヘアメイク:Rina Kajiwara
スタイリスト/カワサキ タカフミ

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<作品情報>
『連続ドラマW 怪物』

WOWOW にて7月6日(日)スタート(全10話)
毎週日曜午後10:00放送・配信【第1話&第2話無料放送】

出演:安田顕 水上恒司
剛力彩芽 藤森慎吾 真飛聖 早乙女太一 久保史緒里(乃木坂46)
小手伸也 橋本じゅん 光石研 高畑淳子 / 渡部篤郎
原作:『怪物』(制作・著作:SLL JOONGANG Co.,Ltd 脚本:キム・スジン作家)

【あらすじ】
羽多野町に住む女子大生の富樫琴音が、自宅の庭に指の第1関節だけ残して失踪するという事件が発生。
その事件は未解決のまま25年が過ぎる。琴音の双子の兄である富樫浩之(安田顕)は警察官になり、羽多野署生活安全課に勤務している。そこにキャリア警察官の八代真人(水上恒司)が異動してくる。気の合わない2人だが、課長の森平の命令でペアを組むことに。そしてパトロール中に通報を受け認知症の老人の捜索へ行くのだが…。

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