IMP.基俊介が大切にしていること「人の話を否定をせずに聞くようにしています」
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インタビュー

基俊介(IMP.) (撮影:梁瀬玉実)
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望まない愛からは逃げてもいい――。両親に虐待された苦しみを抱えるヒロインたちの青春逃走劇を描く映画『愛されなくても別に』。不幸を楯に他人と関わろうとしなかった彼女たちが人生を変える出会いをして、選んだ未来が描かれる。
今作で久しぶりに映画に出演するIMP.の基俊介。演じるのは、ヒロイン二人が働くコンビニの店員・堀口だ。役作りのヒントに観た作品についてや自分を変えてくれた運命の出会い、今興味あることなど、パーソナルに迫った。
解釈の仕方が人それぞれになりそうなのが面白い作品

――今作は浪費家の母親に依存され、人生に一度も期待を抱いたことのない主人公・宮田陽彩(南沙良)と父親から性暴力を受け、母親からは売春を強要される家庭で育った江永雅(馬場ふみか)が自分の足で人生を踏み出そうと奮闘する青春逃走劇ですが、台本を読んでどんな感想を持ちましたか。
母親との関係に悩む、陽彩と雅の姿にいろんなことを考えさせられましたね。彼女たちは避けたくても避けて通れない困難に巻き込まれていて。しかも、自分が起こしたわけではないことで悩みを抱えているので絶望的だと思いました。そんな日々の中で、自分の感情だったり、目の前の現実と向き合ったりしながら、強くたくましく生き抜こうとする彼女たちの姿勢にいろんなことを感じられる作品です。
重いテーマを扱っている映画ですが、僕は観終わった後に二人に清々しさみたいなものを感じて。最終的には、僕には二人がある意味、幸せそうにも見えました。ものすごくいろんな感情が生まれる作品になっていると思いますし、解釈の仕方は、人それぞれになりそうなのが面白い作品です。いろんな意見があると思うので、早く皆さんの反応が知りたいです。

――基さんが演じたのは、ヒロインの宮田陽彩(南沙良)と江永雅(馬場ふみか)がアルバイトするコンビニの同僚・堀口ですが、どんな人物だと捉えましたか。
原作で描かれている堀口のキャラクターの背景は、映画には登場しないんですよね。明るく陽気にふるまっているけれど、じつは心に闇を抱えたキャラクター。2人のヒロインの間で上手く立ち回っているけど、裏側では、彼なりにいろんな辛い想いも抱えているんですよね。意外と陽気に明るく振る舞っている人って、闇深かったりするじゃないですか。僕もわりとそのタイプかもしれませんね(笑)。共感できる部分もありつつ、やっぱり自分とは違う部分も多い役でした。

――陽彩と雅の身の上話をフランクに会話の中で引き出すのが上手い印象もあります。基さんは人から話しを聞きだすのは得意なほうですか。
どうですかね。でも、意外と友達から食事中に相談されることはあって、「相談相手、僕でいいのかな」って思います。僕は高校生くらいの頃から芸能の世界に身を置いて活動しているので、一般の友達からすると、きっといろいろな経験してんだろうなと思うんでしょうね(笑)。友達は僕がメンバー7人でずっと一緒にいるのを知っているので、職場の人間関係の悩みを相談されることが多いです。仕事先でこんなことがあったとか、同僚にこんなやつがいてとか。みんな色々あるんだなって。人間関係の悩みって尽きないなと思いましたし、今作にもつながるなと思いました。親との関係性や友人との繋がりもリアルに描かれていて。大学であまり仲良くない人にノートを貸すか、貸さないかというくだりもあって、そうだよなぁと思いました。
――ちなみに基さん自身は、人付き合いにおいて大切にされていることはありますか。
触れて欲しくないことはあまり詮索しすぎないとか、距離感を大切にしています。話していて、これ以上は話したくなさそうだなと思ったら、タッチしない。相談に乗っている時も、アドバイスをするというより、愚痴を聞いてあげるぐらいの感覚の方に近いかもしれないです。何か意見を言って、「いや、そうじゃなくて」って言われる場合もありますから。なるべく「なるほど」「そっか」って否定しないで話しを聞くみたいな感じですかね。あまり決めつけすぎずに。
コンビニバイトを体験したような感覚に

――お話をお伺いしていると、堀口とちょっと近い部分もありますよね。役を演じる上で意識されたことはありますか。
堀口を演じる上で、ちょっと憎めないウザさみたいなのは、自分の中で意識しましたね。堀口がいると一瞬ウザい感じがあって。でも、空気を読んでなさそうで、読んでいたりする瞬間があるなって僕の解釈では結構あったりして。そういうところが伝わるようになるべくやって演じてみようという意識はありましたね。本当に嫌いなわけじゃなくて、ちょっと笑いながら「ちょっとウザい」って言えるような関係性だと思いました。

――演じるうえで難しかったことはありますか。
僕、バイト経験がなくて、コンビニのバイト役も初体験なんで、レジってこうなっているんだ、みたいな社会体験の瞬間もありました(笑)。演じるにあたっては、コンビニへ行って、いつもの倍はブラブラしましたね。ただ僕がよく行くコンビニは海外のお客さんが多かったんで、あまり参考にならなかったかも。あと、お笑い芸人さんのコントも観てみました。東京03さんの。そのアプローチの仕方教えてくれたの、落合モトキさんなんですよね。落合さんとは2人でご飯とか行ったりするくらい仲良くて、「どうやっていろんな役やられてるんですか?」って聞いたら、「俺、芸人さんのコントをよく観るんだよね」って言っていて、なるほどと思って。それをヒントに観てみたんですが、芸人さんってすごく分かりやすい表現が上手で、自分もそれくらい分かりやすくやってもいいのかなとヒントになりました。

――コンビニのシーンでは南さんや馬場さんとはどんなやりとりをしましたか。
撮影期間は3日間あったんですが、自分でもビックリするくらい喋んなかったですね(笑)。あっという間に時が過ぎてって。お二人はお芝居に集中されていて。多分、1ヶ月同じ現場にいても一言だけ会話を交わすぐらいじゃないかな。現場にあるキャンプの時に使うような椅子に座りながら、もう見るところがないぐらい台本を読んでました(笑)。携帯をいじるのはダメだなと思って、待機場所でひたすらずっと待機でしたよ(笑)。
――撮影から1年空いているので、公開記念舞台挨拶などでお二人とお会いしても、初めましての人に戻っている可能性ありますかね。
その可能性はあります(笑)。現場ではプロデューサーさんが一人でいる僕のことを気にかけてくださって。「基くん、ちょっといい。差し入れのお礼がいいたいそうです」って声をかけられて、パッと見たら、お礼を言いたいはずの南さんが遥か遠くにいまして。「え、これどういう状況でしょうか……」ってちょっと戸惑いました。しかも、その差し入れは事務所がしてくれたトリュフのおしゃれなお菓子で僕個人が差し入れしたものではなかったんですよね。事務所の差し入れのセンスに僕の差し入れが負けた気分になりました(笑)。
IMP.のメンバーと仲が深まった瞬間

――芸人さんのコントを参考にしてお芝居されたということですが、お芝居が好きな俳優さんはいますか。
昔から佐藤健さんが好きです。『仮面ライダー』を観て、アクションする姿が恰好いいなって思って。以来、ずっと役者として最前線を走り続けている姿をリスペクトしています。年齢を感じさせないというか、ビジュアルも変わらず恰好良いいですよね。
――映画では陽彩が大切な誰かと出会うことで人生が変わっていく姿が描かれていますが、ご自身にとって運命を変えてくれた人といえば?
やっぱり今の事務所の社長の存在ですかね。僕にとって大きな存在です。僕が芸能界に入ったきっかけが滝沢社長でしたし、デビューできたのも社長のおかげですし。社長がいなかったら今の僕はいないです。今までいろんな言葉で背中を押していただきましたが、印象に残っているのは、「黙っていても分かんないよ。言葉にしないと伝わらないよ」っていう言葉。すごく響きましたね。謙虚であった方がいいんだろうなって思っていて、自分の意見を言えなかったことがあって。
甘えるところは甘えますけど、「こう言ったらあれかな」とか、たまにいろんなことを考えて言えない時もあるんですよね。グループを組んだ時に「こうしたいと思っていることがある時、『言わないでも分かってくれ』、では思っていることが伝わらないから」と言われた時に「確かにそうだよな」と、深い気づきをもらいました。もちろんタイミングは自分の中で考えながら、言いたいことがある時は、言葉にするように心掛けていますね。

――IMP.のメンバーには思っていることを、ちゃんと言えていますか。
そうですね。自分の思っていることは言えています。でも、基本的にメンバーの数だけいろんな考え方があるっていうことを念頭に置いているので。メンバーの意見がちょっと自分とは違うなぁ、俺だったら、こういう風にはしないなとは思っても、僕は言わないですね。それは我慢しているわけではなく、言わなくていいことだと思ってるんで。誰かに意見を求められたら、自分の意見を言う時もありますけど、例えば「これってどう思う?」って聞かれた時に、「俺はこういう風に思ったけど、でも別に全然それでもいいと思うよ」って。否定はしないようにしています。
――取材の今は舞台の真っ只中ですが、『IMPACT』を通してメンバーと絆が深まったなって思った瞬間はありましたか。
本当にお互いフォローし合えているなと思いました。とくにアクシデントがあったわけではないですが、良い作品にするために誰かが何か提案した時に「いいよ、そうしようぜ」って調整できるいい環境が作れていると思います。メンバーとは付き合いも長くて、お互いの考え方が理解し合えているのも大きいですね。分かり合えている仲だからこそ、舞台ではみんなそれぞれの個性を発揮できるいい時間になりました。
素敵な場所でホカンスしてみたい

――演出家でもある滝沢(秀明)さんからの要望はあったのでしょうか。
もう見守っていただいている感じで、何も言われないんですよ。後輩のCLASS SEVENに対してはいろんなことを伝えていますね。もっとこうしたほうがいいみたいなことを言われている後輩の姿を見ると、昔の自分たちを思い出しました。懐かしい気持ちになりましたね。
――今後は役者としてどんな作品に挑戦してみたいですか。
アクション映画が好きなので、アクションやりたいです。サスペンスアクション『イコライザー』みたいな話が好きです。元CIA工作員が闇の仕事請負人として悪を抹消するストーリーでめちゃくちゃ面白いんです。日本の作品なら、岡田准一さんのドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』ですね。SP役の岡田さんがテロリストから警護人を守る姿に「なんてカッコいい世界なんだ」って思いました。
アクションは自信があるわけではないですが、舞台でも殺陣のアクションがあって、アンサンブルで一緒になってるアクション部の方とは長い付き合いなんで、丁寧に教えてもらいました。それこそ刀の持ち方とか、結構細かいとこまでこだわってやりましたね。殺陣のアクションをいつか映像でもやってみたいです。まだ身体が身軽なうちにできたらいいですけど……といいつつも、もうお話をいただけるなら、どんなジャンルの作品でも挑戦したいです、やらせて下さいっていうマインドです(笑)。
――プライベートでは最近はどんなことに興味がありますか。
いろんな雑貨を見るのが好きです。ネットでもチェックしますけど、家具屋さんで雑貨を見るのも好きなんですよね。和モダンな感じが好みです。モデルルームも見に行ってみたいな。こういう部屋に住みたいなって夢が広がるので。あと、やってみたいことは、ホカンス。ずっとやりたいって言っていて、できてないんです。ホカンスって知っていますか? ホテルバカンスの造語だと思うんですけど。なかなか遠出の旅ができないコロナ禍で流行っていたんですって。ホテルって、様々なコンセプトがあって、非現実空間でお客さんを楽しませるわけじゃないですか。YouTubeでリゾートホテルの映像とか見るだけで、リラックスできるけど、やっぱり実際に素敵な場所でホカンスして、くつろいでみたいですね。

取材・文:福田恵子 撮影:梁瀬玉実
<作品情報>
『愛されなくても別に』
新宿ピカデリーほか全国にて絶賛公開中

出演:南沙良 馬場ふみか
本田望結 基俊介(IMP.) 伊島空 池津祥子 河井青葉
監督:井樫彩 原作:武田綾乃『愛されなくても別に』(講談社文庫)
脚本:井樫彩/イ・ナウォン
主題歌:hockrockb「プレゼント交換」(TOY'S FACTORY)
企画・プロデュース:佐藤慎太朗
製作幹事・制作プロダクション:murmur
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
公式HP:
https://aisare-betsuni.com/
公式X:
https://x.com/aisare_betsuni
公式Instagram:
https://www.instagram.com/aisare_betsuni
【Story】
宮田陽彩(みやた・ひいろ)(19)は、“クソ”のような大学生活を送っていた。
大学に通い、それ以外の時間のほとんどを浪費家の母に変わっての家事とコンビニでのアルバイトに費やし、その中から学費と母と2人暮らしの家計8万を収める日々。遊ぶ時間も、金もない。
何かに期待して生きてきたことがない。親にも、友人にも……。
いつものように早朝にバイトを終えた宮田は、母のために朝ご飯を作り、家事をした後に大学に登校していた。そこで大学の同級生であり、バイト先の同僚でもある 江永雅(えなが・みやび)(24)のひょんな噂を耳にする。威圧的な髪色、メイク、ピアス──バイト先ではイヤホンをつけながら接客する、地味な宮田とは正反対の彼女の噂。
「江永さんのお父さんって殺人犯なんだって」
他の誰かと普通の関係を築けないと思っていたふたり。ふたりの出会いが人生を変えていく──。
(C)武田綾乃/講談社 (C)2025 映画「愛されなくても別に」製作委員会
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