Hammer Head Sharkインタビュー、集大成的アルバム『27℃』完成「誰かにとっての居場所であってほしい」
音楽
インタビュー

左から 藤本栄太(g)、福間晴彦(ds)、ながいひゆ(vo)、後藤旭(b)
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すべて見るText:田中亮太/Photo:石原敦志
〈ロックンロール〉に圧倒されたいなら、ロック・バンドが自由であることを実感したいなら、Hammer Head Sharkを聴くといい。東京を拠点に活動する4人組は、グランジやシューゲイザーを幹としつつ 演奏や音作りのそこかしこでカテゴライズできない創造性を煌めかせる。さらに、ボーカリスト・ながいひゆのカリスマティックな歌声は、彼女自身の死生観のすべてを息にさえも宿しているようだ。昨年にはカナダ・ツアーを盛況に終えるなど飛躍を続ける彼女たちが、ファースト・アルバム『27℃』を完成。2021年以降に配信で発表していた楽曲を含む本作は、バンドのこれまでの集大成であり、さらに大きな世界へとその名を轟かす最初の一枚になるだろう。
――アルバムの中で、もっとも古い楽曲は2021年8月に発表された「レイクサイドグッドバイ」ですね。
ながいひゆ(vo) この曲は、フェス帰りの心情や光景を描いた曲なんです。私が行ったフェスにサカナクションが出ていたんですけど、その時期に彼らの「グッドバイ」なんかをよく聴いていて。だから、サカナクションの耳を包み込むようなサウンドを意識しました。それ以外にもレディオヘッドっぽいリバーブや空間系の音など、好きな要素が自然と出ましたね。
福間晴彦(ds) 自分たちの好きな音像ははっきりしてきた時期だったと思います。
――配信時とアルバムでは、アウトロが足されていたり、かなりアレンジや構成に変化があります。
ながい アルバム版は、いまライブで演奏しているアレンジになっています。このアルバム自体が、〈ライブの雰囲気をパッケージする〉というのがひとつのテーマでした。それで、「Dummy Flower」は、ボーカルの弾き語りを先に録って、それに他のパートが合わせていくという特殊な録り方をしたり。このバンドの強みってメンバーがボーカルをすごく聴いてくれていることだと思うので、それを活かしたかったんです。
――「Dummy Flower」は配信では2021年11月に発表されていて、アルバムで大胆にアレンジを変えています。ギター・ポップ~ベッドルーム・ポップ的なものから、オーガニックでフォーキーな楽曲になった印象でした。
ながい アルバムを作る段階でビッグ・シーフをすごく聴いていて、刺激を受けていたんです。彼らの「自由さ」が好きで、そこに驚かされたというか。音で遊んでいるなって。
福間 灰皿や楽譜の譜面台を割り箸で叩いた音、ライターをつけるときの「シュッシュッ」って音など、いろいろ入れています。
ながい アコギを指でカシャカシャこすったり。
――2022年10月の「Blurred Summer」は、アルバム版ではハイハットの刻む感じや各楽器のフレーズがニュー・オーダーっぽさを感じました。
福間 これは僕がコード進行を作ったんですけど、サッカー・マミーやスネイル・メイルなどのインディー・ロックの感じ――シンプルで力強く進んでいく曲――を意識して作りました。だから、アルバムの中で異質な存在になっている気がしますね。
――そのあとの2023年8月に発表された「たからもの」は、アルバムの最終曲に据えられましたね。
ながい 今回の「たからもの」は完全一発録りにしたんです。その録音が、バンド内でもすごく特別な音楽体験だったんですよね。録り終えたときに、たぶん全員が「これがアルバムの最後だな」って思っていたんじゃないかな。
後藤旭(b) スタジオの小窓から木漏れ日がさしていて、みんなで深呼吸して演奏を始めて......。みんなの呼吸がすごく分かったし、リアルタイムでヤバい音が鳴っていて、それが録音されているという感動がありました。鳥肌が立ちっぱなしでしたね。
ながい Hammer Head Sharkは内面に向いている曲が多いけど、「たからもの」は外に開けていて、お客さんとちゃんと目を合わせて歌える曲。だから、他の曲とちょっと違うんです。
――違うベクトルの曲が生まれたのには何かきっかけがあったんですか?
ながい はっきりとは分からないんですけど、その頃ちょうど藤本(栄太)と後藤が加わって、今の4人でやっていこうと決めたタイミングで。ライブを重ねていく中で、純粋に「バンドって楽しい」と感じられていて、その気持ちがあったから、書けたのかもしれません。「楽しくていいんだ」「楽しいのが正解なんだ」と思えたんですよね。
――アルバムの他の曲では〈ここではないいるべき場所を探している〉と感じるんですけど、「たからもの」は〈いまいる場所を肯定できている〉と聴こえる。不安も迷いもなく、ただ高揚感があるように感じるんです。
ながい まさにそうですね。曲を書くときは、架空の世界や触れられないものに向き合っていることが多い。でも「たからもの」に関しては、架空のものより現実の方を美しいと思えた瞬間みたいな、そんなことなんだろうなと、いまお話を聞いていて思いました。
福間 「たからもの」のあとに「綺麗な骨」を発表するんですけど(2024年4月)、そのあたりで自分たちの本質をメンバーで共有できて、思想的にもサウンド的にも、自分たちがやりたい「オルタナティブなもの」を確立できた気がします。ながいがよく(ライブで)言うんですけど――。
ながい 「安心できる場所でありたい」んです。「綺麗な骨」は、私が音楽に期待していることが滲み出ている曲だと思っていて。それは、居場所であってほしいということ。そして、私が音楽でやりたいことは「誰かにとっての居場所になる」ということ。それがはっきり分かったのが、この曲なのかもしれません。

――2024年11月に発表された「アトゥダラル僻地」は、アルバムの中でもとりわけノイジ―でグランジ感のある一曲ですね。
藤本栄太(g) やっぱりHammer Head Sharkの根幹は、ながいの内省的な部分を、外に向けて大きな音で叫ぶっていうスタイルだと思っていて。それを分かりやすく〈ロックンロール〉として提示できたのが、この曲なんじゃないかな。
――「アトゥダラル僻地」のMVには、発表の少し前に開催したカナダ・ツアーの映像を使っていますよね。海外に行った経験もバンドにとっては大きかったんじゃないですか?
福間 ライブが変わりましたね。海外のお客さんって音がバーンって大きくなった瞬間とかでちゃんと盛り上がってくれるんですけど、そんなお客さんがライブ中に静まり返る瞬間があったんです。「届いてないのかな」と不安になったところ、曲が終わった瞬間に大歓声があがって。本当の意味で圧倒させられたと実感できたんです。
ながい 何をしても盛り上がる状況でも、一気に空気を沈めることができるバンドなんだと感じました。
福間 ながいが歌い出した瞬間に観客が一斉に静かになるような感覚を体験できたんです。メンバー4人全員が「これ、来てる」って同時に感じた。最近のライブでは、メンバーみんなが「これがながいのボーカルなんだ、くらえー」ってスタンスで演奏していると思います(笑)。
――アルバム『27℃』はバンドとして一枚岩となった状態で制作できた作品だと思いますが、その中でも苦労した曲はありますか?
後藤 「園」ですね。メロディーが良すぎるがゆえに、何をしてもいい曲になってしまう。でも逆に、「これだ!」っていう決定打が見つからなかった。試行錯誤を重ねて、ようやく納得のいく形に辿り着けたんです。
福間 「園」はノリ感やサウンドにすごくこだわったんです。グルーヴは海外のネオアコを意識しました。特に中盤の間奏では「2拍4拍をぐっと後ろに引こう」「ながいの手癖を変えて、ギターを後ろ目にずらしてみよう」とか、かなり細かく詰めました。
――アルバムの中では「しんだことになりたい」が印象的でした。藤本さんはU2のジ・エッジみたいなディレイを効かせたギターを弾いていますね。
藤本 ながいが弾き語りで聴かせてくれて、すごく良い曲だし、これはやりたいと思いました。ギターは2パターン作ったんですけど、採用されたパターンのほうが気に入っていたので、レコーディングはすごく楽しかったです。
――「しんだことになりたい」は歌詞も耳に残ります。〈死んだふりして生きていたい〉というフレーズに、ながいさんなりの実存が表れているなって。絶望に耽溺しているわけでも、希望に満ち溢れているわけでもない。
ながい 私もこの曲の歌詞をそんなに暗いと思ってないんです。使っている言葉自体は暗いんですけどね。言葉の温度感と音のバランスに苦労しましたね。歌詞の内容がすっと入ってくるようにするのが、いちばん大変な曲だったかもしれません。
――アルバムのツアーはすでにスタートしていますが、どんな感じですか?
福間 最高です。でも、まだ自分たちのものにできてないと感じる曲もあるし、ツアーを通して、どういうふうに育っていくかが楽しみ。
ながい このツアーは、これまで〈会いに来てくれた〉人たちに、今度は〈自分たちから会いに行く〉というつもりで企画したものなんです。
福間 今回のアルバムとツアーは全部自主でやっていて、レーベルや事務所みたいなものは一切関わっていません。だからこそ、ここで起きる出来事は、僕らとお客さんだけのものになる。それが伝わってくれたら、本当にうれしいです。
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<リリース情報>
1st Full Album『27℃』
発売中
3,300円(税込)
【収録曲】
01.名前を呼んで
02.Blurred Summer
03.アトゥダラル僻地
04.Dummy Flower
05.レイクサイドグッドバイ
06.Daisy
07.Gummi
08.しんだことになりたい
09.綺麗な骨
10.うた
11.園
12.たからもの
配信リンク:
https://friendship.lnk.to/27c_hhs
<ツアー情報>
『Hammer Head Shark pre.「Befor 27℃ tour」』
※終了公演は割愛
7月12日(土)
岡山・CRAZYMAMA 2ndRoom
開場 17:30 / 開演 18:00
出演 : Hammer Head Shark / 揺れるは幽霊 / サバノオミソニー / 蟹蟹 (O.A)
7月13日(日)
大阪・寺田町 Fireloop
開場 18:00 / 開演 18:30
出演 : Hammer Head Shark / Hue's
8月3日(日)
宮城・LIVE HOUSE enn 3rd
開場 18:30 / 開演 19:00
出演 : Hammer Head Shark / JIGDRESS / TIDAL CLUB
8月8日(金)
京都・nano
開場 18:30 / 開演 19:00
出演 : Hammer Head Shark / 井上園子
8月9日(土)
愛知・K.Dハポン
開場 17:30 / 開演 18:00
出演 : Hammer Head Shark / ゆうさり(合奏) / Trooper Salute / 溶けない名前
8月31日(日)
東京・渋谷Spotify O-Crest
開場 18:00 / 開演 18:30
出演 : Hammer Head Shark ※ワンマン公演
【チケット情報】
前売:3,500円
※ドリンク代別途必要
https://w.pia.jp/t/hhs2025/
Hammer Head Shark 公式サイト:
https://hammerheadshark.studio.site/
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