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ぴあ 総合TOP > 「今、僕が演じる意義のある作品」――鴻上尚史作品初参加の小関裕太が意気込むKOKAMI@network vol.21『サヨナラソング ー帰ってきた鶴ー』

「今、僕が演じる意義のある作品」――鴻上尚史作品初参加の小関裕太が意気込むKOKAMI@network vol.21『サヨナラソング ー帰ってきた鶴ー』

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左から鴻上尚史、小関裕太 (撮影/源 賀津己)

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8月31日(日)〜9月21日(日)東京・紀伊國屋ホール、9月27日(土)・28日(日)大阪・サンケイホールブリーゼにて、鴻上尚史のプロデュースユニット「KOKAMI@network」第21回公演『サヨナラソング ー帰ってきた鶴ー』が上演される。「生きのびること」をテーマに、日本の民話「鶴女房」の世界と、現代のある家族の現実世界が交差する物語。作・演出の鴻上と、主演の小関裕太に話を聞いた。

──今回の新作『サヨナラソング ー帰ってきた鶴ー』は民話の「鶴女房」がベースになっているとのことですが、どのような経緯で今作を作ることに?

鴻上 実は精神科医のきたやまおさむさんと話していたことがきっかけで。きたやまさんは加藤和彦さんという親友を自死で亡くしていらして。その話をしていた時に、きたやまさんが「去っていく者はかっこいいよね。でも残された者はたまったもんじゃないんだよ。鶴女房だってさ」と。いきなり鶴女房が出てきたんだけど、確かにそうだよなと思って、ブワーッと一気にイメージが広がって。「残された者は大変」ということと、もう一つは鶴が戻ってきた小説を作家として描いてこの世から消えた男がいたらどうなるか、その二つが浮かんで始めたんです。

──それはいつ頃のことですか?

鴻上 4〜5年前だったかな。「いつか芝居にしていい?」ときたやまさんに訊いたら「どうぞどうぞ」と言ってくれて。今回、きたやまさんに「いよいよ芝居になります」と伝えたら「それは嬉しい。何でも協力できることはします」と言ってくださいました。

──小関さんは今回、初めて鴻上作品に参加されますね。

小関 鴻上さんとご一緒したいなと思っていたので、それが叶うのが何より嬉しいことです。これまで演劇界を、時代を作っていらした鴻上さんと芝居を作るのが、今から楽しみです。

──鴻上さんのプロットを読んでどう感じましたか?

小関 人それぞれなので分かりませんが、僕の主観からすると、自分は年齢の割に人を亡くしている経験がありまして、読みながら痛感するものがありました。そんな中で、ビジュアル撮影で鴻上さんとお話しする機会があり、すごく時間をかけて聞いてくださり、僕もつい色々話させていただいたんです。そういう経験がこの作品に参加するにあたって意味のあるものになっていくかもしれないと思うと、自分が演じる意義もあるのかなと思います。

──今回、小関さんの演じる役は?

鴻上 ひとつは鶴女房が自分の元から去っていった男ですね。しかし鶴が家に帰ってくるんです。そりゃいろんなことが起こるよねという……ここまでは言ってもいいよね? だめか?

小関 戻ってくるというだけで、衝撃ではありますよね(笑)。せっかく戻ってきても、理想的な生活が送れるわけではないんです。どんなに愛を貫いても、鶴が好きでもうまくいかないところもある……。

鴻上 それともう一つは、24歳で書いたデビュー作が芥川賞にノミネートされた作家・宮瀬。33歳ともなるとまったく売れなくなっていて、一方で妻は夫の勧めでエンタメ系の作品を書き始めたらどんどん売れていく。その男、鶴女房の鶴が帰ってきたという作品を残して亡くなってしまう。その後、ある編集者が妻に「この続きを書いてくれませんか」と持ちかけるところから始まる話です。どんなに無様でも生きのびるという選択肢をとりましょうよ、ということを描くつもりです。面白そうでしょう?

──面白そうです。小関さんの演じる二役は真反対ですね。昔のおとぎ話の中のキャラクターと、現代の現実の世界の男。一度は妻が去って残された側と、妻を残して亡くなってしまった側。

鴻上 よく気づいてくれましたね、その通りです(笑)。

小関 ただ、僕は今回の作品に関しては「二役だ、どうしよう」という焦りはなくて。以前同じ作品を違う配役で演じたときは、人生を二つ生きなくてはいけない苦しさがあったんです。「一人の人生を背負うだけでも苦しいのに」という気持ちがありました。でも今回は、真反対だけれども繋がっている部分が多いせいか、プレッシャーはそこまで感じていないんです。

鴻上 確かにぴったり裏表だから、別人を作るということでもないと思うよ。

──小関さんの相手役、妻を演じられるのは臼田あさ美さんですね。

鴻上 僕の中で鶴女房は、男を愛し、信頼しながらしっかり頼り甲斐のある姉さん女房のイメージがあって。そういう関係が二人で出せるといいかなと思いますね。現実でも、臼田さんの方が呑気で、小関くんは真面目な感じじゃないかな。

小関 臼田さんと共演させていただくのは初めてなのですが、これまで拝見した作品を通じて臼田さんの感性がとても素敵だなと思っていたので、ご一緒できるのはすごく楽しみです。

──鴻上さんからみた小関さんの魅力は?

鴻上 飛ぶ鳥を落とす勢いの俳優ですね。演じることに対して真面目な印象があって、すごく誠実に役に向き合ってくれるんじゃないかと思ってオファーしました。

小関 僕、27歳の頃に「このまま30代になって、自分はこの世界で生きていけるんだろうか」という焦りが生まれたんです。自分の中に芯がないことが不安になった。そこから意識を変えて取り組むようになって、この3年は自分の中身を詰めていく作業をひたすらやってきました。そして30歳になって初めての舞台芝居が鴻上さんの演出作品で、歴史ある紀伊國屋ホールでストレートプレイというのはすごく意味があると思っています。

鴻上 そんなふうに思い入れを持ってくれているのはありがたい。僕はただただ、今作を傑作にするぞという思いで頑張ります。

小関 僕も鴻上さんの傑作作りに貢献できるといいなと思います。この作品を完走した後に何が見えるのかが、今はすごく楽しみです。

取材・文/釣木文恵
撮影/源 賀津己

<公演情報>
KOKAMI@network vol.21『サヨナラソング ー帰ってきた鶴ー』

【東京公演】
日程:2025年8月31日(日)〜9月21日(日)
会場:紀伊國屋ホール

【大阪公演】
日程:2025年9月27日(土)・28日(日)
会場:サンケイホールブリーゼ

[作・演出] 鴻上尚史
[出演] 小関裕太 臼田あさ美
太田基裕 安西慎太郎
三田一颯/中込佑玖(Wキャスト)
渡辺芳博 溝畑 藍 掛 裕登 都築亮介

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/sayonarasong/

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