舞台芸術祭「秋の隕石2025東京」の詳細明らかに 岡田利規新作、佐々木蔵之介、仏名優イザベル・ユペール一人芝居のほか全ラインアップ発表
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舞台芸術祭「秋の隕石2025東京」ラインアップ記者発表会より、前列左より)花形慎、岡田利規、菊川朝子、後列左より)山口遥子、関田育子、タニノクロウ、葛西敏彦
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すべて見る東京芸術劇場(東京・池袋)を中心に10月1日(水)から11月3日(月・祝)まで開催される舞台芸術祭「秋の隕石2025東京」のラインアップ発表会が7月23日に開催され、アーティスティックディレクターを務める岡田利規(チェルフィッチュ主宰)らが出席。既に発表されていた、岡田の作・演出による『ダンスの審査員のダンス』、佐々木蔵之介出演のひとり芝居『ヨナ-Jonah』、フランスの名優イザベル・ユペールによるひとり芝居『Mary Said What She Said』などのほか、全ラインアップが発表された。
「新たな芸術の創造」、「海外発信」、「人材育成」をミッションとし、国内外の多様な舞台芸術作品の上演、世界で活躍できる舞台芸術人材の育成の取り組みを実施するというこちらの芸術祭。アーティスティックディレクターを務める岡田は、タイトルにある“隕石”という言葉について「ここにはないもの、支配的な価値観や存在とは決して見なされていないものがここにやってきて、それによって何かが起こるということを隕石という言葉に託しています。つまり“異物”であるということ――異物を寿ぐ場にしたいと思っています」と説明する。

プログラムの柱は3つ。国内外の多彩な舞台芸術作品14演目による「上演プログラム」にワークショップやレクチャーなど「上演じゃないプログラム」、さらにその両方を支える「ウェルカム体制(=来場サポート)」からなる。
岡田は特に3つ目の「ウェルカム体制」の重要性、意義について強調。観客もまた、芸術祭を構成する重要な要素(=隕石)の一部であると語り「これは、観客のみなさんへの我々の姿勢の表明です。アクセシビリティなどを充実させることで、観客をも隕石と捉えたい。これまで舞台芸術の場に来ることができなかった人、そもそも『そんなこと自分には無理だ』と思っていた方が多くいると思いますが、そういう人たちも隕石の一部、芸術祭を構成するメンバーとなってもらえるようにベストを尽くしたいと思います」と語った。

そして、気になる上演プログラムだが、オープニングを飾るのは、新作野外パフォーマンス『現実の別の姿/別の現実の姿』。岡田のコンセプトを受けて、芥川賞作家の市川沙央、YouTuberで小説家のダ・ヴィンチ・恐山、国内外で活躍する振付家・手塚夏子がそれぞれにテキストを執筆し、三者三様の世界が展開される。
また、岡田が作・演出を務める最新作で、ダンス作品兼演劇作品となる『ダンスの審査員のダンス』は複数のダンサーと俳優たちが出演する作品。哲学者の鷲田清一の所有を巡る論考「所有論」(2024)に触発されて生まれたという本作について、岡田は「数日前にリハーサルが始まりましたが、出演者の多くがダンサーで、その多くの方にとってテキストをしゃべるというのは挑戦です。そういう方たちと新たに『テキストをしゃべるというのはどういうことか?』『身体を動かすとはどういうことか?』ということの追求と試行錯誤をやっています。それは、これまで僕がやってきたこととも言えるんですが、決定的に質感の違うことをやろうとしているという手応えがあります」と語る。なお、本作は、先に挙げた「ウェルカム体制」の一環として、発達障害や自閉症など障害を抱え、大きな音や光の刺激などに対し不安を持つ人々や小さな子どもにも楽しんでもらうため、パフォーマンス中に声を出す、身体を動かす、入退場を自由にするなど鑑賞マナーを緩和したリラックスパフォーマンスとなっている。
また、ルーマニアを代表する演出家シルヴィヴ・プルカレーテと佐々木蔵之介が3度目のタッグを組むひとり芝居『ヨナ-Jonah』、フランスが誇る名優イザベル・ユペールが悲劇の女王メアリー・スチュワートに扮し、処刑前夜の彼女が数奇な一生をふり返りつつ、葛藤や思いをモノローグで語る『Mary Said What She Said』など実力派俳優によるふたつの一人芝居、鬼才ダミアン・ジャレ振付による彫刻家名和晃平とのコラボレーションダンス作品『Planet [wanderer]』は、今回の会場のひとつである東京芸術劇場が毎年秋におくる「芸劇オータムセレクション」としてもラインアップされている。
川端康成の小説をもとにした日台共同作品、“ママさんコーラス演劇“なども
この他、川端康成の小説「眠れる美女」を下敷きにした日台共同戯曲・演出作品で、タニノクロウが主催の庭劇団ペニノと台湾のShakespeare’s Wild Sisters Groupがタッグを組む『誠實浴池 せいじつよくじょう』がプレイハウスで上演される。タニノによると物語の舞台は「戦死した兵士たち専用のSMクラブ」だが「戦争そのものではなく、戦争に突き動かされていった者たちの内面に向き合う場所としてこの舞台設定を選んだ」とのこと。

さらに2023年にニューヨークで初演され絶賛を浴びたノンバーバル劇で、米パフォーマンス作家/アーティストのフェイ・ドリスコルのコンセプト、振付、演出による『Weathering』、チェコを拠点に活動するハンダ・ゴテ・リサーチ&ディベロップメントによる人形劇『第三の手』、「サウンドエンジニアの葛西敏彦がディレクションを務める建物の構造も利用するという同時多発的音楽イベント『ユーバランス』、母となった女優たちが結成した、菊川朝子が代表を務める「うたうははごころ」による“ママさんコーラス演劇“『劇場版☆歌え!踊れ!育て!ははごころの庭〜子供服は輪廻です〜』、アーティスト花形慎による“劇場空間での身体認識をアップデートするための公開実験”『エルゴノミクス胚・プロトセル』、関田育子が代表を務め、2019年に設立された「広⾓レンズの演劇」を標榜している演劇団体[関田育子]による『under take』など、多彩なラインアップが展開される。
舞台芸術祭『秋の隕石2025東京』は10月1日(水)より11月3日(月・祝)まで東京・東京芸術劇場、GLOBAL RING THEATRE<池袋西口公園野外劇場>ほかにて開催。
取材・文・撮影:黒豆直樹
「秋の隕石2025東京」全プログラム
上演プログラム
■オープニングプログラム『現実の別の姿/別の現実の姿』

コンセプト:岡田利規
インストラクション:市川沙央、ダ・ヴィンチ・恐山(品田遊)、手塚夏子
構成:手塚夏子、横田僚平
DJ:okadada
出演:青柳潤、生実慧、串尾一輝、佐藤駿、芝崎健太、瀧腰教寛、中川友香、西山真来ほか
日程:2025年10月1日(水)17:30~
会場:東京・GLOBAL RING THEATRE〈池袋西口公園野外劇場〉
■岡田利規 ダンス作品兼演劇作品『ダンスの審査員のダンス』

作・演出:岡田利規
出演:中村恩恵、酒井はな、島地保武、入手杏奈、矢澤 誠/小林うてな
日程:2025年10月1日(水)~10月5日(日)
会場:東京・東京芸術劇場 シアターイースト
<ツアー情報>
・愛知公演:2025年9月19日(金)~21日(日) 愛知県芸術劇場 小ホール
・高知公演:2025年12月13日(土)・14日(日) 高知県立美術館 ホール
・長野公演:2026年1月12日(月・祝) サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)小ホール
・福岡公演:2026年1月25日(日) J:COM北九州芸術劇場 中劇場
■芸劇オータムセレクション 佐々木蔵之介ひとり芝居『ヨナ-Jonah』
東京芸術劇場 × ルーマニア・ラドゥ・スタンカ国立劇場 国際共同製作

原作:マリン・ソレスク
翻訳・修辞:ドリアン助川
演出:シルヴィウ・プルカレーテ
出演:佐々木蔵之介
日程:
2025年10月1日(水)※プレビュー公演
2025年10月2日(木)~10月13日(月・祝)
会場:東京・東京芸術劇場 シアターウエスト
<ツアー情報>
・金沢(石川)公演:2025年10月18日(土) 北國新聞赤羽ホール
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2520884
・松本(長野)公演:2025年10月25日(土)・26日(日) まつもと市民芸術館 小ホール
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2526310
・水戸(茨城)公演:2025年11月1日(土)・2日(日) 水戸芸術館ACM劇場
・山口公演:2025年11月8日(土)・9日(日) 山口情報芸術センタースタジオA
・大阪公演:2025年11月22日(土)~24日(月・休) COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
■Shakespeare's Wild Sisters Group × 庭劇団ペニノ『誠實浴池 せいじつよくじょう』

作:王嘉明(ワン・チャミン)、タニノクロウ
演出:王嘉明(ワン・チャミン)、タニノクロウ
出演:Fa(ファ)、楊迦恩(ヤン・ジャエン)、崔台鎬(ツゥエ・タイハウ)、陳以恩(チェン・イー エン)、洪佩瑜(ホン・ペイユー)(台湾)
片桐はいり、金子清文、藤丸千(日本)
日程:2025年10月3日(金)~10月5日(日)
会場:東京・東京芸術劇場 プレイハウス
〈ツアー情報〉
・豊岡公演(兵庫・豊岡演劇祭):2025年9月21日(日)・22日(月)
・富山公演:2025年9月27日(土)・28日(日)
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2516899
■フェイ・ドリスコル『Weathering』

コンセプト・振付・演出:フェイ・ドリスコル
出演:ジェームズ・バレット、カーラ・ブロディ、デビッド・グズマン、エイミー・ジェルヌクス、マイケル・マライ・ネアーン、マヤ・ラリベルテ、ジェニファー・ニュージェント、コリー・シールズ、カルロ・アントニオ・ヴィラヌエバ、ジョー・ウォーレン
日程:2025年10月10日(金)~10月12日(日)
会場:東京・東京芸術劇場 シアターイースト
■芸劇オータムセレクション『Mary Said What She Said』

演出・舞台美術・照明:ロバート・ウィルソン
出演:イザベル・ユペール
作:ダリル・ピンクニー
音楽:ルドヴィコ・エイナウディ
日程:2025年10月10日(金)~10月12日(日)
会場:東京・東京芸術劇場 プレイハウス
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2560947
■ハンダ・ゴテ・リサーチ&ディベロップメント『第三の手』

作:シュヴァーボヴァー&ドブロディンスカー、kosmo_nauty、デルネル&ニェメツ、プロハースカ
出演:トマーシュ・プロハースカ、ヴェロニカ・シュヴァーボヴァー、ヤン・デルネル/ヴァヴジネツ・ニェメツ
日程:2025年10月17日(金)~10月19日(日)
会場:東京・東京芸術劇場 シアターウエスト
■フォースド・エンタテインメント『Signal to Noise』

作・演出:ティム・エッチェルス
出演:ロビン・アーサー、セケ・チムテングウェンデ、リチャード・ロウドン、クレール・マーシャル、キャシー・ナデン、テリー・オコネル
日程:2025年10月17日(金)~10月19日(日)
会場:東京・東京芸術劇場 シアターイースト
■『ユーバランス』

ディレクション:葛西敏彦
ユーバランスクリエーションスタッフ:
大原大次郎、岡本太玖斗、井上千聖、佐々木文美、藤谷香子、高野洋、佐藤恵、久保二朗、中原楽、松田健一、髙田政義、河村美帆香、平野みなの、常田恵 ほか
出演:網守将平、井上 銘、梅林太郎、岡田拓郎、小田朋美、音無史哉、カニササレアヤコ、香田悠真、ゴンドウトモヒコ、崎山蒼志、澤部 渡(スカート)、詩的な食卓(石塚周太+イトケン+大崎清夏+葛西敏彦)、想像力の血、蓮沼執太チーム、原元由紀、日野浩志郎、福原 音、マーティ・ホロベック、街裏ぴんく、松丸 契、三浦康嗣、皆神陽太、ユザーン、ermhoi、Rico (LAUSBUB)ほか
日程:
2025年10月24日(金)15:30〜21:00(予定)
2025年10月25日(土)14:30〜21:00(予定)
会場:東京・東京芸術劇場 シアターイースト、ロワー広場、アトリウム
■うたうははごころ『劇場版☆歌え!踊れ!育て!ははごころの庭〜子供服は輪廻です〜』

作・演出:菊川朝子
出演:稲毛礼子、榎本純子、太田みち、菊池ゆみこ、高橋美貴、高村志穂、野村沙月、原田優理子、由 かほる、菊川朝子
日程:2025年10月25日(土)・26日(日)
会場:東京・東京芸術劇場 シアターウエスト
■シャヴィエ・ボベス 『やがて忘れてしまうもの』

作・演出:シャヴィエ・ボベス
出演:フランチェスコ・シノーポリ
日程:2025年10月28日(火)~11月3日(月・祝)
会場:東京・東京芸術劇場 シアターウエスト ほか
■[関田育子]『under take』

クリエーションメンバー:石川朝日、小久保悠人、小菜美、関田育子、中條玲、土屋光、富髙有紗、長田遼、野田帰里、林純也、半澤裕彦、星和也、増田祥基、森山千代、横山媛香、吉田萌 ほか
日程:2025年10月31日(金)~11月3日(月・祝)
会場:東京・東京芸術劇場 シアターイースト
■芸劇オータムセレクション ダミアン・ジャレ×名和晃平『Planet[wanderer]』

コンセプト・振付:ダミアン・ジャレ
コンセプト・舞台美術:名和晃平
出演:ショーン・アハーン、エミリオス・アラポグル、カリマ・エル・アムラニ、フランチェスコ・フェラーリ、ヴィンソン・フレイリー、クリスティーナ・ギエブ、アストリッド・スウィーニー、湯浅永麻
日程:2025年11月1日(土)~11月3日(月・祝)
会場:東京・東京芸術劇場 プレイハウス
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2560991
<ツアー情報>
・京都公演:2025年11月8日(土)・9日(日) ロームシアター京都 サウスホール
■花形 槙『エルゴノミクス胚・プロトセル』

日程:2025年11月1日(土)~11月3日(月・祝)
会場:東京・東京芸術劇場 アトリエウエスト
上演じゃないプログラム
■アリエル・ドロン
「オブジェクトシアター ワークショップ/プロフェッショナル編」
「オブジェクトシアター ワークショップ/実験体験編」

「プロフェッショナル編」
日程:2025年10月28日(火)~11月1日(土)各日10:30~16:30(全5回)
成果発表:2025年11月1日(土)18:00~20:00
「実験体験編」
日程:2025年11月3日(月・祝)13:00~16:00
会場:東京・東京芸術劇場 シアターウエスト
■シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]×舞台芸術祭「秋の隕石」Future Ideations Camp Vol.7
Super Sober Shamanism:
同期・共在・模倣を演劇とテクノロジーの両岸から考える

ディレクター:江口正登(研究者)、ゴッドスコーピオン(メディアアーティスト)、篠田千明(演劇作家、演出家、学童指導員、観光ガイド)
講師・ファシリテーター:岸 裕真(アーティスト)、JACKSON kaki(アーティスト、DJ、VJ、映像作家、グラフィックデザイナー)、中井 悠(音楽その他、東京大学副産物ラボ)、円香(現代魔女、アーティスト)、山本浩貴(小説家、デザイナー、批評家、編集者、いぬのせなか座主宰)、涌井智仁(美術家、音楽家、WHITEHOUSEディレクター・キュレーター)
日程:2025年10月1日(水)〜10月12日(日)11:00~19:00頃(予定)
会場:東京・東京芸術劇場 アトリエウエスト、ギャラリー2
■次はどこ?みて、はなすレジデンシー
世界の舞台芸術の創作に関わる若手を招聘する、未来に向けた発見と交流のためのプログラム
■海外プレゼンター招聘
世界の劇場やフェスティバルとのネットワークを更新するための交流・意見交換プログラム
■コンセプトブック「文脈たちの宴」
舞台芸術祭「秋の隕石」の〈隕石み〉により深くアクセスするための手引き
■山口遥子 レクチャー『現代オブジェクトシアターへのクイックガイド』
オブジェクトシアターの設立の背景や発展の過程、主要動向や現在の担い手を紹介するレクチャー

講師:山口遥子
日程:10月18日(土)13:00~
会場:東京・東京芸術劇場 シンフォニースぺ―ス
ウェルカム体制(=来場サポートのこと)
■ウェルカムぎんが

東京芸術劇場前に生まれる広場「ウェルカムぎんが」。ふらりと立ち寄って当日券情報などを入手できる案内所であり、劇場の飲食店と「秋の隕石」とのコラボレーションフード/ドリンクが楽しめる休憩所です。この空間は日々変化していきます。ベンチやテーブルはフレキシブルに組み替えられます。ベビーカー連れなど、どのような方が立ち寄ってもストレスなく過ごせる場所です。DJもやる現代美術家、植物療法士、けん玉プレイヤーなど多種多様なメンバーがウェルカムします。
日程:2025年10月1日(水)〜11月3日(月・祝)
※各日のオープン時間については公式WEBサイトをご確認ください。
会場:東京・東京芸術劇場 劇場前広場
■アクセシビリティ・鑑賞サポート
どなたにも「秋の隕石」を楽しんでいただけるよう、鑑賞サポートを充実。字幕や音声ガイドなどの情報保障をし、見守りスタッフによるサポート体制を敷き、託児サービスを実施。子どもたちがアートにふれられる「託児型ワークショップ」もあり。
■池袋まち歩きツアー
オープニングプログラム『現実の別の姿/別の現実の姿』の鑑賞と池袋のまち歩きを行うツアー
日程:10月1日(水)開催予定
<開催概要>
舞台芸術祭「秋の隕石2025東京」
2025年10月1日(水)〜11月3日(月・祝)
会場:東京・東京芸術劇場、GLOBAL RING THEATRE〈池袋西口公園野外劇場〉ほか
公式サイト:
https://autumnmeteorite.jp
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