漫画家・こうの史代の過去最大の展覧会、佐倉市立美術館で 貴重なデビュー前の原画や同館のみの描き下ろしも展示
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《この世界の片隅に》2007年 ©︎こうの史代/コアミックス
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すべて見るアニメーション映画にもなった『この世界の片隅に』などの大ヒット作で知られる漫画家、こうの史代。今年で漫画家生活30周年を迎えるこうののデビューから現在までを網羅した過去最大の回顧展が、8月2日(土)から10月2日(木)まで、千葉県の佐倉市立美術館で開催される。
1968年に広島市に生まれたこうのは、1995年に『街角花だより』の連載で漫画家としてデビュー。以後、インコとの日常を描く4コマ漫画『ぴっぴら帳(ノート)』、ニワトリと少女のユニークな日々を綴ったショートストーリー漫画『こっこさん』、子どもの心を釘付けにしたカラー漫画『かっぱのねね子』、夫婦の気ままでコミカルな一日を捉えた『長い道』、ドタバタ二世帯喜劇『さんさん録』、原爆の被害とその後に続く日々を真摯に紡いだ『夕凪の街 桜の国』、広島の軍都・呉の戦災を描いた『この世界の片隅に』、エッセイ漫画『平凡倶楽部』、ボールペンだけで古事記を忠実に漫画化した『ぼおるぺん古事記』、漫画に特有な記号表現である「漫符」を素材にした画期的な漫画図鑑『ギガタウン 漫符図譜』、百人一首と遊んだ華麗なるカラー1コマ漫画『百一 hyakuichi』など、常にそれまでの作品とは似ていない新たな作品を発表し続けてきた。

キャラクターも背景も等しく愛らしいタッチで描かれていながらも、どれをとっても似た作品がない理由を、同展監修者を務める小説家の福永信は、「ひとつの作品を描くごとに、新しい、まだ見たことのない漫画表現の可能性へ向けて、一歩ずつ歩き続けているから」だと評している。
同展は、そんな稀有な漫画家・こうの史代の画業がすべてわかる展覧会。デビュー前の貴重な原画から最新作の『空色心経』まで、500枚以上の漫画原画、挿絵原画、絵本原画、そして作品のコンテやメモ、スケッチ、制作風景を記録した初公開の映像などが並ぶ。初期からアシスタントを起用せず、すべて一人で原稿を描くこうのの作品は、「1枚の絵」としても実に見応えがある。さらに今回は、連作作品については一話単位、短編は基本的に全頁の原画を展示するため、ストーリーを読む楽しみがあるのも魅力となっている。最後には、同館のみの描き下ろしとして、こうの自身の「あとがき」も展示される予定だ。この機会に、その多彩な作品世界を堪能したい。

<開催概要>
『漫画家生活30周年 こうの史代展 鳥がとび、ウサギもはねて、花ゆれて、走ってこけて、長い道のり』
会期:2025年8月2日(土)~10月2日(木)
会場:佐倉市立美術館 2・3階展示室
時間:10:00~18:00(最終入館は17:30まで)
休館日:8月4日(月)、12日(火)、18日(月)、25日(月)、9月1日(月)、8日(月)、16日(火)、22日(月)、29日(月)
料金:一般1,000円、大学800円
公式サイト:
https://www.city.sakura.lg.jp/section/museum/
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