香港M+と国立新美術館の協働企画展『時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010』開催 国内外50超のアーティストの作品から、約20年間の日本の美術表現を検証する
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奈良美智《Agent Orange》 2006年 アクリル/カンヴァス 162.5×162.5cm 個人蔵 ©NARA Yoshitomo, 2025
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すべて見る昭和が終わり、平成の始まった1989年から2010年までに、日本でどのような美術が生まれ、日本からどのような表現が発信されたのかという問いを出発点に、日本のアートシーンを彩った革新的な表現に光をあてる展覧会が、9月3日(水)から12月8日(月)まで、東京・六本木の国立新美術館で開催される。
同展が焦点を当てる約20年間は、冷戦体制が終わり、人とものが世界規模で行き来するグローバル化の始まりによって、国際的な対話が大いに促進されるとともに、そうした社会構造の変化を反映する新たな表現が生まれた時代だった。とりわけ経済的な繁栄によって国際社会で知名度が高まり、また政治面でも安定を得ていた日本では、美術館の開館が相次ぎ、オルタナティヴ・スペースやアーティスト・イン・レジデンス、そして各地の芸術祭が興隆するなど、同時代の美術を支える土壌が豊かになると同時に、国際的なアーティストたちとの交流や日本の美術の海外への紹介もより活性化する時代を迎えていた。

同展は、そのような時代にどのような作品が生まれたのかを、国内外の50を超えるアーティストの実践を検証することによって辿るものだ。平成の始まりと冷戦体制の終結によって、日本も世界も大きな変化を体験した時代にあって、アーティストたちはその転機にどう向き合ったのか、また社会の変化に対してどのような表現を生み出したのか——同展は、その問いに、「過去という亡霊」「自己と他者と」「コミュニティの持つ未来」という3つの章の3つの視点から取り組んでいく。「過去という亡霊」では、戦争や被爆のトラウマや戦後問題に向き合い続けるアーティストたちの探求を、「自己と他者と」では、自他のまなざしの交換のなかでアイデンティティやジェンダーや文化的ヒエラルキーを問う実践を、また「コミュニティの持つ未来」では、既存のコミュニティとの関わりや新たな関係性の構築に可能性を探るプロジェクトを、それぞれ様々な表現でたどる。
同展で特筆すべきは、2021年に香港にオープンした美術館「M+」と国立新美術館との初の協働企画であるということだ。同館にとってアジア地域におけるパートナー美術館である「M+」との協働キュレーションは、複数の視点から日本で生まれた多様な美術表現に光をあてる今回の展覧会に、国内外の双方向的な視点を加えることになるだろう。

<開催概要>
『時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010』
会期:2025年9月3日(水)~2025年12月8日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E
時間:10:00~18:00、金土は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
休館日:火曜(9月23日は開館)、9月24日(水)
料金:一般2,000円、大学1,000円、高校500円
公式サイト:
https://www.nact.jp/exhibition_special/2025/JCAW/
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