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舞台『七つ数えて』岡本ゆい×水湊美緒インタビュー――過酷な現実をポップに描く岡本昌也の世界観に共鳴

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左から岡本ゆい、水湊美緒

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気鋭の劇作家・岡本昌也の作・演出による最新作で、『怪獣は襲ってくれない』『仔犬たちの午後』に続く“キッズ・ノワール”最終章となる『七つ数えて』が新宿シアタートップスにて8月13日(水)より上演される。
Z世代の独特の言語感覚や感性を戯曲に取り込み、トー横キッズや闇バイト、放置子といった社会問題を描いてきた岡本が、十年後の歌舞伎町を舞台に描く本作。元トー横キッズで多目的トイレに赤子を置き去りにする透子を演じる岡本ゆい、カラオケバー「エッジ」で歌舞伎町に暮らす若者たちを匿う永井真琴を演じる水湊美緒が本作への思いを語ってくれた。

――本作への出演が決まった時のお気持ちを教えてください。

岡本 私はもともと岡本昌也さんの作品が大好きで、普通に劇場に観に行っていましたので、お話をいただいてびっくりしましたが、ふたつ返事で「お願いします!」と言いました。社会の裏側を描いたお話で、いったいどんな気持ちで演じたらいいのか? 自分自身、社会の闇の部分みたいなものは見ずに生きてきたので、不安はありましたけど「やるしかない」と思ってお引き受けしました。

――岡本さんの作品に出たいとは以前から思っていたんですか?

岡本 どちらかというと、出たくなくて……(笑)。

水湊 出たくない……(笑)?

岡本 すごく大好きでしたけど、劇場で拝見して、すごく長いセリフもあるし、演技力も試されるし、「これ絶対に出たくないかも」と思いながら観てました(苦笑)。

――ここまで堂々と「出たくなかった」と言う主演俳優も珍しいです。

岡本 大ファンではあったんです!

水湊 私は初めて台本を読んだ時、ちょっと迷いました。これまでアイドルとして活動してきて、アイドルの頃の私のイメージとはかけ離れている役だなと率直に感じて。「挑戦したい!」という気持ちはありましたが、ファンのみなさんがどう感じるのかなという不安はあって。でもすごく面白くて、やってみたい気持ちが強くて、マネージャーさんとも相談して「できるうちにいろんな挑戦をしたほうがいいんじゃないか?」ということで、お引き受けさせていただきました。
決して親しみやすいテーマではありませんが、いまの社会問題として取り上げられていることなので、スーッと入ってきました。最初に台本を読んだ時は「重いな」とも思いましたが、私自身すごく考えさせられることが多くて、「もし自分がこういう状況にあったらどう感じるのか?」と考えながら心が揺さぶられていきました。

――決して、ご自身の人生に役柄と近い経験があるわけでもない中で、それでも岡本さんの描く作品を見て、ファンになったというのは、どういう部分に共感・共鳴されたんでしょうか?

岡本 作品の題材は丁寧に扱わなくてはいけないと思いますが、岡本さんはそれをポップでキャッチ―な感じに描かれているんです。たとえば劇中の音楽がどんどんスピードアップしてバーン! と爆発するような感じだったり、スクリーンに文字が映し出されるタイミングであったり、全部が気持ちよくて、すごく感動して、本当に毎回「さすがだな」と思って観ています。『怪獣は襲ってくれない』でも、踊り出すシーンがあって少しびっくりしたんですけど、ちゃんと成立していて、全部がしっくりくるんです。そこにヤミツキになる感覚ですね。

――水湊さんは、この作品のテーマや登場人物たちに共感・共鳴するような部分はありましたか?

水湊 自分と重なると部分はあまりないんですけど、育児放棄や毒親……頻繁にあってはいけないことですが、現実によく耳にすることでもありますから、想像しやすい部分は多かったです。ゆいちゃんも言っていたように、そういう題材だからこそ、丁寧に扱わないといけないと思っています。 演出の部分でも、ゆいちゃんが話していた通り、昨日、通し稽古をやったんですけど、少しタイミングがずれるだけで「あれ?」となってしまう部分が多くて、細かい部分まで綿密に計算されているんだなと感じています。私は、オファーをいただいてから、過去作を映像で観させていただいて、すごく重いんですけど、不思議と観終わった後に「最悪だな」みたいなドヨンとした気持ちにはならないんですよね。

過酷な現実と向き合う役を真摯に丁寧に演じていきたい

――それぞれの役柄に関して、どんなふうに見せられたらと考えていますか?

岡本 私は普段、「まっすぐだね」って言われるんですけど、演じる透子もまっすぐな子で、でも、めちゃくちゃ歪みはあるんですよね。透子は私をもうちょっと極端にした感じかもしれません(笑)。簡単に「わかる!わかる! こんな感じね」と言うことはできませんが、だいぶ寄り添いやすいとは思いました。母親役は経験したことないですが、愛情の歪みみたいな部分に関しては、いまも悩みつつ、作り上げていっているところです。

水湊 永井は怒るシーンが多いイメージでしたが、読み解いていくうちに、すごく感情表現が豊かで、喜怒哀楽がハッキリしている人だと思って、そういうところは自分と似ていると思います。アネゴ肌であるがゆえの表現がすごく出てくるんだろうなと思いますし、自分もグループ時代は、最年長でみんなの相談に乗ったりもしていたので、近い部分はあります。

――永井は過酷な環境の中で生きる傷ついた若者たちを受け入れ、彼らに居場所と救いを与えます。彼女の生き方にどんなことを感じますか?

水湊 過酷な環境で居場所求めることは、彼女自身にもあったと思っています。だからこそ「来るもの拒まず」というスタンスで、困っている子を助けてあげたいと思っている。だからといって永井は「よしよし」するようなタイプでもなく、子どもだからといって特別視することもないので、そこは演じながらも気をつけています。簡単に「わかる!」なんて言えないけど、もし自分がこういう環境に身を置いていて、困っている子たちを助けられる力を持っていたなら、そうしたいと思います。

――岡本さんの演出を受けられてみて、どうですか?

岡本 直接ご本人にも「頭がおかしいです」とお伝えしました(笑)。「頭の中、どうなってるんだろう?」っていつも不思議です。目に見えないものが本当に存在しているかのようなシーンがあるんですけど、そこで岡本さんは「いま、目の前にこういうものがあると思って」とすごく丁寧に言ってくださるんです。

水湊 たぶん、自分の中で「こうしたい」というものが明確にあるんでしょうね。稽古初日からすごくスムーズで「ここに立ってみよう」とか「こうしてみよう」とおっしゃってくださって、やりやすかったです。一方で、「こうやってみていいですか?」と提案すると「ぜひやってください! ありがとうございます」と言ってくださって、すごく優しいです。みんなでつくり上げていくのを感じます。

――最後にこの作品をどんな人に、どんなところを楽しんでほしいかを伺えたらと思います。

岡本 観てくださる方がどう受け取ってくださるかはわかりませんが、こういう現実がどこかに絶対にあって、こういう人たちがどこかにいるというのを知ってほしいです。こんな現実があるということをギュッと凝縮してポップに――「楽しめる」という言い方が正しいかわかりませんが、物語としてこういう現実を感じられる機会は少ないと思います。これは受け売りの言葉なんですけど(笑)、新宿の歌舞伎町を題材にした物語を新宿(シアタートップス)でやるということで、帰り道の新宿がまた違って見えたりするんじゃないかと思っています。

水湊 過去の作品を観たことある方にももちろん観てほしいですけど、岡本さんの作品を初めて観る方でも絶対楽しめる作品だと自信を持って言えます。重い題材なので、躊躇してしまう方もいらっしゃるかもしれないですが、気負わずに観に来ていただきたいです。岡本さんはすごく若い感性をお持ちの方で、普段、舞台をあまり観ないという若い方も受け取りやすい作品になっていると思います。ひとりひとりが主人公で、ちゃんとキャラクターが立っていて、感情を爆発させるシーンもあるので、ぜひ楽しんでほしいです。

取材・文/黒豆直樹

<公演情報>
舞台『七つ数えて』

日程:2025年8月13日(水)〜17日(日)
会場:新宿シアタートップス

[脚本・演出] 岡本昌也(AOI biotope)
[衣裳] yushokobayashi
[出演] 岡本ゆい / 水湊美緒 / 瀬戸璃子 / つぐみ / 芹澤雛梨 / 高橋璃央 / 森脇康貴 / 相原未来

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/nanatsukazoete/

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