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「諦めなかったから、今ここに僕たちがいる」――感謝と決意に溢れた超特急『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2025「EVE」』ライブレポート

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超特急『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2025「EVE」』 (撮影/米山三郎、笹森健一)

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超特急は現況を、そして8号車(超特急ファンの呼称)がいることを、当たり前としていない――春からスタートした超特急のツアー『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2025「EVE」』が8月8日、さいたまスーパーアリーナにてオーラスを迎えた。8月8日といえば、超特急そして8号車にとって、一年で1度の特別な日、8号車の日でもある。だからこそ、彼らのアツい思いが、普段は見せることのない表情が満載だった本公演。その模様を詳細レポートする。

クラシカルな世界観で幕は開ける

もはや恒例となったリョウガによる開演前の影ナレ。時折、笑いを堪えられなくなったり「ハルくん、視界の中で変顔しないで!」とアドリブを効かせると、そのたびに8号車から歓声が上がり、会場はライブ本編に向けて盛り上がりを増していった。

そんな和やかな雰囲気から一変。ステージに映し出されたのは、クラシカルな文様のような映像。

その世界観は、ロールプレイングゲームのような世界観で、このツアーEVEにはアダムとイブのイブもかかっているのではないかと思わされた。さらにそんな幻想的な雰囲気を後押ししたのが、超特急の2人のボーカリスト・タカシとシューヤである。特に曲中後半の2人のユニゾンは耳心地が良く、どこか現実離れした美しさすら感じさせた。

勢いよく火花が噴き上がる中披露されたのは「Steal a Kiss」。アロハ、タクヤ、ユーキによる曲中の胸キュンセリフが今日も炸裂。特に、アドリブを効かせたユーキによる「好きだよ、バーカ」の威力には、会場が揺れるほど反応。その勢いのまま披露されたのは「Re-Booster」。まずはカイ、リョウガ、タクヤ、ユーキ、タカシの1桁号車のメンバーがメインステージでパフォーマンス。2番からはシューヤ、マサヒロ、アロハ、ハル、通称2桁号車のメンバーがセンターステージで、1桁号車のアツさを受け継いだまま魅せる。そして、最終的には9人がセンターステージに集合し、「Kura⭐︎Kura」へと繋ぐ。

コンセプチュアルにさまざまな表情を見せる

クラップ、そして応援団のような振り付けが印象的な「What's up」では、8号車と9人の息がぴったり。これに対し、ボルテージが上がり前向きな表情を見せる9人。間奏では1人1人が挨拶をする一幕も、カイは「今日は最高の日にしましょ!」とハルは客席をとにかく盛り上げ、曲の終わりまで8号車のテンションをキープし続けるのに一役買っていた。

センターステージからメインステージに戻り披露した「Lesson II」では、右目を覆う仕草をし、歌い出すタカシが大人っぽい世界観を作り上げる。そして楽曲の中盤では、9人の姿が曖昧になり、シルエットダンスのように魅せる演出も美しかった。

そこから空気感を一変させたのはフィドルの音色が響くアイリッシュポルカがベースになった楽曲「Cead Mile Failte」。出航前に酒をあおる男たちが浮かぶような歌唱とダンス、麻のような色味の衣装、そして炎が立ち上るステージ演出は力強さがみなぎっていた。9人が光の球体を持って登場した「Fell the light」では、ベース音に合わせて力強く足踏みするマサヒロのインパクトが強い。そして、そこから白い空間の中に座り込むユーキの周りを8人が歩くという幻想的な映像へと移り変わっていった。

映像明け、メンバーは真っ白な衣装を身に纏って登場。「No more cry」では、ステージの真ん中でクルクルとピルエットをし、柔らかな笑顔を見せるユーキが美しく、この幻想的な物語を作り上げているようだった。

コール曲の連続で会場は一体感を増す

続いて披露されたのは、赤い色の照明が印象的なステージで「Bloody Night」。リョウガがセンターとなり不穏な空気感を漂わせる中、8号車のコールはばっちり。「ずっと。ずっとキミだけを…」と妖艶に呟く様子は、盛り上がり曲で変顔を連発していたリョウガとのギャップを感じさせた。

イントロ部分でメンバーの名前を呼んで始まる「Kiss Me Baby」では、ユーキやマサヒロがサビの締め部分でカメラに抜かれ、誘うような表情を見せる。ラストには、タカシがウィスパーボイスでと囁くと会場からは大きな歓声が上がった。

アロハが「みなさんと一緒に“イッキ”を起こしたいと思います!」と威勢良く煽ると、メンバーが和服風の衣装に素早くチェンジし、スタートしたのは「ikki!!!!!i!!」。ステージが競り上がっていき、扇子を捨て始まったのは「Believe×Believe」リョウガ、アロハの白目が見事な中、普段はあまり変顔をしないカイがお茶目な表情を見せると言う一幕も見られた。

コール曲の連発に会場が温まりきったところで、この日、最初のMCタイム。ここでユーキは、さいたまスーパーアリーナという大きな会場で「夏なので、ウェーブをやりますか!」と声を上げる。しかし、これには8号車が先走ってウェーブをするというハプニングが。この様子にカイはまるで「ちょっと、ユーキの話、ちゃんと聞いて!」とまるで小学生の学級委員長を思わせるような声で盛り上がるメンバーと8号車を宥め、笑いを誘っていた。

また、衣装チェンジのタイミングでステージに残った、カイ、リョウガ、マサヒロ、アロハ、ハルの5人でのMCタイムには、前日の夜中に2つ隣の部屋から歌声が聞こえてきたと一言。これにはハルが「あいつか?」とシューヤを匂わせたのだが、マサヒロは「超特急以外の曲を歌っていた」と一言。続けて「音を外していた」「楽しそうだった」などと特長を1つずつ挙げていき、「あいつか?」「ほなあいつとちゃうか……」とまるでお笑い芸人のミルクボーイのような掛け合いを見せ、会場を笑わせていた。

ユニット曲では、個性あふれる表情を見せるメンバーたち

MCが開けるとユニットでのパフォーマンスへ。

水が水面へ落ちたような音から始まった「霖雨」はタクヤ、ユーキ、タカシ、シューヤの4人でパフォーマンス。まずはセンターにタカシが1人真っ白な衣装で立ち、その周りを同じく白色の衣装のタクヤと黒色の衣装のユーキが踊る。そして、途中からはそこにシューヤも加わるのだが、印象的だったのが空撮したことで映し出されたステージに寝転ぶ4人の姿。そのあまりにも緻密で、対になるようにと計算し尽くされたフォーメーションに思わず息を呑んだものだ。

続いてやってきたのは、カイ、マサヒロ、アロハの3人による「Re-Turn up」。それぞれがラップを歌う中、アロハは「最終日だぞー!」と客席を煽る。そして、メロディーラインが消え、無音の中で歌った3人のアツい思い、DOMEを目指すと高らかに宣言する姿は胸を熱くさせるものがあった。カイが歌った<連れて行くぜDOME>がいつか本当になることを想像した8号車も多いだろう。

そして、やってきたのはリョウガとハル。まずは2人で「STYLE」で元気いっぱいに見せる。そこから雰囲気をガラッと変え「snow break」ハルが歌うと「お前が歌うんかい」とリョウガはつっこむのだが、リョウガも続けて本気モードで歌う。これには8号車からも歓声と拍手が。そして、最終的には2人が気持ちよさそうに歌を披露するも、まさかのタカシが2人の背後に登場。「ボーカルは自分だ」と言わんばかりの無言の圧に2人が「わー!」と言い、2人によるユニットステージは幕を閉じた。

ここから「キャラメルハート」「My Buddy」とポジティブでかわいらしい楽曲が2曲続けて披露。タクヤは「さいアリー!」「8号車」と煽り、ハルは "We are the Buddy”でカメラに向かって両手でハイタッチするようなそぶりを見せ、会場は再び一体に。勢いをそのままに「Jesus」が披露されると、8号車は全力でコール。そのコールが大きくなればなるほど、メンバーのテンションも上がっているようで、センターステージからメインステージまでの移動区間、花道ではいろいろな表情を見せていた。

“イブ”が意味するものとは?

ステージが暗転し、流れた映像では自動車の整備士をしているユーキ、シューヤ、ハル。サラリーマンのタクヤとタカシ、カフェ店員のリョウガ、工事現場でミュージシャンを夢見るカイ、マサヒロ、アロハの姿が。この「もしも超特急じゃなかったら?」を思わせるような映像は果たして、何を意味するのだろうか。SNSでも、ツアータイトル“EVE”と合わせて考察合戦が繰り広げられているようだ。

そんな映像からは想像もできないようなかわいらしい表情満載の「a kind of love」。そして、タカシとシューヤ、通称せぶいれ(2人の号車にちなんだ呼称)の2人による「EBiDAY EBiNAI」。同楽曲では、タカシの伸びやかな声からスタートし、シューヤに引き継ぎ、サビでは2人によるユニゾンが心地よい展開へ。続く「君と、奏で」では、スクリーンに手書き風の歌詞が映し出される演出が印象的だった。

そして、勢いよく特攻が上がり披露されたのはライブの定番曲「超えてアバンチュール」。曲の後半では、メンバーたちはトロッコに乗り「SAY NO」「ジュブナイラー」「Secret Express」を続けて披露。その間、メンバーはできるだけ多くの8号車と目を合わせ、手を振り、この時間をできるだけ特別なものにしようとしていた。

ステージに戻ったハルが「みんな! 今日は8号車の日だから……」と勢いよく言うも、メンバーたちが口々に<Hah>とため息をつき、始まったのは「AwA AwA」。そして、メタルかつポップな歌詞の温度差がクセになる楽曲「メタルなかよし」では、ステージいっぱいに暴れまくるメンバーの姿が見受けられた。

勢いよく走りセンターステージまで移動すると「Draw イッパツ!」で盛り上げ。ハルの「8号車の日ですよ! 盛り上がって!」との一言や、カイの「さいたまスーパーアリーナ! 1つになりましょう」の声がきっかけに8号車も大きなバツを作るようにペンライトを振ったのは「Burn!」。ユーキの掛け声で、8号車、そして1列になり肩を組んだメンバーが特大のシンガロング。その光景はあまりにもエモーショナルであった。

ユーキ「一緒に過ごせる時間って、奇跡なんです」

そして、最後の楽曲を前にユーキが挨拶。「こうやって10何年も一緒にずっと、この活動ができているのって、もちろんメンバーもそうだし、いつも支えてくれているスタッフの皆さんもそうだし、何より、今ここにいる8号車の皆さんがあって、この景色を見られています。本当にいつもありがとうございます」と感謝。

さらに続けて「たぶん今日久しぶりにライブに来てくれた人も、初めて来た人も、もちろんそうだし、いつも超特急を応援している人も、いろんな状況下でこのライブを見に来てくれてると思います。ただ、本当に一生のうち時間を過ごすって、どれだけ奇跡のことなのか、当たり前じゃないことなのか、もちろん今そばにいる家族の皆さんもそうです。友達もそう、大好きな愛犬、愛猫……なんでもいい。そんな近くにいる人と一緒に過ごせる時間って、本当に当たり前じゃないし、ここにいるみんな、こうした時間を過ごしている、この景色が本当に奇跡なんです」と大きな声で話す。

さらに涙声でユーキは「俺らはドームを目指していて、夢を1回も諦めたことはありません。そうしたら、こうやって、この素晴らしい景色が今見えているんです。みんなとここにずっと夢を誓い合ってきたからこそ、見えてくる景色はここにあるんです。本当に諦めなかったら叶うんです。本当にこんな奇跡を見せてくれてありがとう。そしてこの先も終わりじゃない、もっと素晴らしい景色を必ず見せます! それは距離を離れることじゃなくて、ずっと昔から大事にしてきた距離感も大事にしながら、誰1人置いていくことなく、みんなと生涯笑っていたいなと思ってます」とコメント。

そして、そんな思いを込めた楽曲を紹介し「Billion Beats」を披露した。ユーキの涙と共に語ったアツい思いを聞いてか、より一層全身全霊で、各々が思う奇跡を表現したかのような表情でパフォーマンスする姿が印象的。ハルは涙を浮かべ、アロハは力強く踊り、カイは満面の笑みを浮かべていた。

そして曲中でタクヤが挨拶を試みるも「収録あるのに、なんの言葉も出てこない!」と胸一杯の様子を見せる一幕も。こうして、長かった『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2025「EVE」』は無事、幕を閉じた。

心温まる9人からのサプライズに大歓声

アンコールでは、ツアーのTシャツを着た9人が登場。まずは「踊ライナー」で魅せた。ここで、髪を後ろで束ねたシューヤがスクリーンに映し出され、舌を出したイタズラな表情を浮かべると会場からは大きな歓声が上がる。

そして、歌い終わると今度はメンバー1人1人からの挨拶が。ここでカイは「シューヤもマサヒロも、アロハもハルも。入ってくれてありがとう」と改めて感謝。これには会場からも大きな拍手が送られていた。

タカシは「さいたまスーパーアリーナのライブを終えて、1つ思ったことはツアー完走できてよかったです」としみじみ。さらに、タカシは「この景色を見れていることに、僕は感動を覚えています。なんでかというと、超特急っていろんな歴史があって、一時期ね、この人たちは“ドーム立たれへんのちゃうか”とか“超特急、もう終わったんちゃう”みたいなことをすごい言われる時期があって。でも、本当にそういう言葉があったけど、でも諦めたくなかったし、1人でも多くの8号車の素敵な姿を見てたり、歌ってる時に笑顔をみんなで共有し合えるってことが一番幸せやし。この笑顔を見てたら、絶対に諦めることは、俺できんなと思ったんですよ」と強い思いを明かした。

そして「諦めなかったから、今ここに僕たちがいるんですよ。改めて、長年ずっと一緒にいてくれてる1桁号車のみんな、そしていろんな人生の選択肢がある中で超特急になりたいと思ってくれた2桁号車のみんな、本当に心の底から感謝して、みんながいてくれたから僕たちがいるし、僕がいるし、そしてこんなたくさん8号車の人がくれてるなと思います」とタカシは感謝を述べた。

全員の挨拶が終わった後で、いきなりステージが真っ暗に。これにはメンバーが「怖い!」と口々に言いながらも、次に灯が灯ったときには9人が「8号車(ハート)おめでとう」と1文字ずつ持ったパネルを掲げ「MEMORIAる」がスタート。ファンからは歓声が上がっていた。そしてアンコールパートラストに披露されたのは「走れ!!!!超特急」。この楽曲中、とにかくステージの端から端まで練り歩くメンバーの姿を見ていたら、1人1人がこの会場にきてくれている重み。そして、その人たちを満足させたいという思いがひしひしと伝わってきた。

さらに、この日は特別にダブルアンコールも。そこではタカシが「僕たちのはじまりの楽曲です」と紹介し、「gr8est journey」を披露。9人の始まりの楽曲ということもあり、それぞれが感慨深い表情や涙をうっすらと浮かべていた姿が印象的だった。

メンバーが誰1人欠けることなく完走できた『BULLET TRAIN ARENA TOUR 2025「EVE」』。メンバーが誰も欠けないこと、2日間で6万人もの8号車が超特急に会いたいと会場に足を運んだこと、超特急を応援できること、生きていること、私たちが日々当たり前だと思っていることは、何一つ当たり前じゃない。そう思わせてくれたツアーだった。

取材・文/於ありさ、撮影/米山三郎、笹森健一

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