『小出楢󠄀重 新しき油絵』大阪中之島美術館で 裸婦像の名手として知られる画家の代表作が一堂に会する四半世紀ぶりの大回顧展
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小出楢󠄀重 《横たわる裸身》 1930年 石橋財団アーティゾン美術館
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すべて見る大正から昭和初期にかけて活躍した大阪出身の洋画家・小出楢󠄀重(こいで ならしげ/1887~1931)の各時代の代表作をたどるとともに、画家が求めていた独自の表現について再考する展覧会が、9月13日(土)から11月24日(月・休)まで、大阪中之島美術館 4階展示室で開催される。
大阪の裕福な薬種商の家に生まれた小出楢󠄀重は、東京美術学校(現・東京藝術大学)の日本画科に入学し、2年後に志望していた西洋画科に転科した。卒業後は大阪に戻って画業に励み、30代初めに二科展に出品した《Nの家族》が樗牛賞(ちょぎゅうしょう)を受賞して頭角を現す。1921(大正10)年から翌年にかけて欧州に遊学し、帰国後は作品を発表するとともに、画家仲間とともに信濃橋洋画研究所を開設して後進の指導にあたるほか、美術誌『マロニエ』の編集にも携わる。芦屋に転居した後は新築したアトリエで、裸婦像や静物画、ガラス絵に新境地を拓いたが、持病の心臓病の発作で43歳の若さで急逝した。

今回の展覧会は、小出の四半世紀ぶりの本格的な回顧展となる。初期の東京美術学校時代の作品から絶筆まで、各時代の代表作を通じて画業をたどると同時に、油彩画のみならず、小出がその芸術性を高めたと評価されるガラス絵、日本画、挿絵、装幀、随筆など、多彩な分野での活動や教育者としての業績にも目配りした展示構成となっている。
大きな見どころのひとつは、「裸婦の󠄀楢󠄀重」と称されるほど、裸婦像において独自の様式を確立した小出の真骨頂とも呼ぶべき代表作が一堂に並ぶこと。一貫して日本人としての油彩画を追究した小出は、特に画業の後半に取り組んだ裸婦像でも、西洋人とは異なる特徴をもつ日本人ならではの美しさの表現の探求に努めた。裸体を描く時にも「理想的なものを求めたくない」と語っていた小出は、胴長や短足といった日本人の特徴を敢えて強調するようにデフォルメして描くと同時に、日本人の肌の複雑な色合いと滑らかな質感の描写に工夫をこらし、日本女性の裸身を魅力的に表す独自の様式を生み出したのだった。同展では、年を経るごとに洗練されていった裸婦の表現と、その様式確立の過程を目の当たりにできるのが興味深いところだ。

日本人としての「新しき油絵」を追究し、日本近代洋画史上において稀有な才能を発揮した小出楢󠄀重の魅力を、この機会に堪能したい。
<開催情報>
『小出楢󠄀重 新しき油絵』
会期:2025年9月13日(土)〜11月24日(月・休)
会場:大阪中之島美術館 4階展示室
時間:10:00〜17:00、9月13日(土)、14日(日)は19:00まで(入場は閉場30分前まで)
休館日:月曜(9月15日、10月13日、11月3日、11月24日は開館)、10月14日(火)、11月4日(火)
料金:一般1,700円、大高1,200円
公式サイト:
https://nakka-art.jp/exhibition-post/koide-2025/
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